声優を辞めてからは
何もやる気が出なくて
クソみたいな生活をしていた
唯一 仲の良かった友達がそんな俺に見るに見かねて
「俺の会社に就かないか」と声をかけてくれたが
俺の気の抜けたような態度に呆れ縁を切られた
それでも何も感じなかった
それほど俺にとって「声優」という存在は大きかった
生きる為には働かなきゃいけない
稼がなきゃいけない
そんな事とうの昔から分かっていた
それでもやる気など出なかった
なんなら
死ぬなら死ぬでいい
もうこんな地獄から解放させてくれ、と
この時の俺は未来に何も期待せず
ただただすぎる毎日を過ごしていた
ある日ゴロゴロとYouTubeを観ていると
「いれいす」という歌い手グループが目に入った
何となく開いてみると
綺麗で力強い音楽が流れてきた
「何十年未来だって」
そんな歌詞から始まった曲は
まだ先のことなんて分からないのに
未来への期待と希望に満ちていた
「歌」
学生時代よく練習させられた
理由は簡単
いつ、歌う場面のある役割を任せられてもすぐに対応出来るように
それでも俺がそんな大役につくことなど一度も無かったけどね
個性豊かで”楽しそうな”メンバーばかりのいれいすさんにハマった俺は
一日で過去動画を見漁った
そこで俺は気づいた
俺が足らなかったものに
彼奴にしかなかったものに
いれいすさんの動画のコメント欄をみていると
歌も日常動画も
「楽しそう」
というコメントが溢れかえっていた
視聴者…リスナーさんは実力以上にメンバーの楽しそうな姿に惹かれてるのだと知った
よくよく考えてみれば俺も「楽しそう!」というただ単純な理由で見始めハマった
俺はドアの向こうの世界を重視するあまり
見始める1歩の「鍵」を用意していなかった
だから入ってきてくれる人がいなかったのだ
真実が分かってからは自分に対しての憎悪に溢れかえった
どうしてそんな簡単な事に気づかなかった
なんでそんな事も考えなかったのだ…と
だけどそれと同時に
「もう一度やり直したい」という強い気持ちが芽生えた
だから後にいれいすさんとすたぽらさんが作る歌い手オーディションに参加したのだ
オーディションに合格してからの活動準備期間はまた、色のある生活に戻った
桜桃 亜蘭
「亜」という感じには2番という意味がある
だから「亜」という漢字を抜かすことで
2番でなくなるように
応援してくれる人の1番になれるようにという想いをこめて
活動名はLANにした
SIXFONIAのLANとして活動していく中で
こさめ、
なっちゃん、
いるま先生
すっちー
みこっちゃんという
大切な仲間に出会えた。
ないこさん、
Coe.さんという
頼れる先輩に恵まれた。
メンバーはみんな
俺がちょっと頑張ったくらいで
優しい言葉をかけてくれた
俺がリーダーとして行う仕事全てを当然と思わず接してくれた
いつしか俺は
「メンバー以上に大切な物など無い」とまで考える様になった
毎日が充実して過ごせるようになったある日、事件が起こった
ないこさんが「活動を始める前に3グループで1回挨拶も兼ねて実際に集まろう」と言い出したのだ
もう想像はついたでしょ…?
彼奴と、岩崎風雅と
直接に会うことになった。
メンバーが和気あいあいと自己紹介をする中俺たちは地獄の様な雰囲気だったよ…
まぁ、ほとけ君が転んだおかげで睨み合いは終わったけどね
彼奴が俺の過去を言わなかったこと
俺が彼奴の過去を言わなかったことで
俺たちの間で過去のことは話さないという暗黙のルールが出来た
俺は元声優というのを肩書きにして活動を始めた
それには彼奴も困惑の表情をみせたけど特に何も言われなかった
大変な事もあったがメンバーやリスナーさんに囲まれて
1周年を迎えることも出来た
そんなある日、
彼奴に個人的に呼ばれた
嫌な胸騒ぎがおきた
なぜ…いきなり…と
だけど呼ばれたからには逃げる訳には行かずに
大人しく着いて行った
🎲I
🎲I
🎼L
🎼L
🎲I
🎲I
🎲I
🎼L
彼奴が言うには
「自分は治らない病気を持っている。」
「だからこれ以上グループ活動を続けることは出来ない」
「だけどメンバーには心配をかけたくない」
「だから俺の事が嫌いなお前が仕向けてくれ」
というものだった。
🎼L
🎼L
🎲I
🎼L
確かにこんなチャンス逃すわけないけど
🎼L
計画は単純。
俺が彼奴にいじめられたと嘘を吐き
いれいすメンバーごと彼奴を嫌いにさせる
それで彼奴が抜けて
俺も彼奴もハッピーエンドって
🎼L
🎼L
🎲I
🎲I
…協力してもお前が不利な方向にはしない
その言葉を信じて俺はその作戦にのった。
もちろん、リスカも虐められたってのも過呼吸も全部嘘。
ただの演技。
なんであんな奴の為に自分自身に傷をつけなきゃって感じだし
だけど彼奴は俺を裏切った
いや、直前になって勇気が出なくなったのだろう
何も知らない
そんな顔をしていた
…本当に何やってるんだか
こんな事メンバーに知られたりしたら一瞬で嫌われるのに
あの頃は「何も」残らなかったけど
今は「後悔」だけ残る
なんて皮肉な話だろうか
でも、そっちがそのつもりなら
俺だって…本気で
タタカウ 演技するよ
太陽もまだ登りきらない早朝
最近はストレスの負担がかかり過ぎた為か寝付きが悪かった。
一応、すちくん以外のメンバーとも話せるようにはなったが
今までのようには出来なかった
大きく高い心の壁が立ちはだかってしまった
元に戻るといいな
なんて夢みたいな事を考えながら
軽く車を走らせる。
適当に歌っていると
知らない海についた
こんな所に海なんてあるんやなぁ
と、車を降りると
信じられない光景が目に写った
🎼M
🎼M
岩礁に躓き足から血が出たが
そんなこと関係ない
大切なメンバーが無事で居ることを信じて
俺は一気にらんらんの方に駆け出した
🎼M
🎼M
何度呼びかけても
氷のような海に首まで浸かっていたらんらんは
目を開けてくれなかった
🎼M
俺が…俺が信じなかったから?
だから傷ついてらんらんが…?
🎼M
そうだ、俺はいつも大切な所で間違える
メンバーから信じて貰えなかった時、どんな惨めな気持ちだったのだろう
何で何でなんッ
よく考えたら分かった筈だ
らんらんが嘘なんてつくわけないと、
🎼M
🎼M
ピクリともしないらんらんをみて最悪の状態を想像してしまった
🎼M
体を触るが生きてる人間とは思えない冷たさ
長時間水の中にいたからか…それとも…ッ
誰かが脈を測れば分かると教えてくれたことがある
だけど…そんな真相を確かめる勇気などでなくて
恐ろしい現実から逃げたくて
🎼M
🎼M
俺も冷たい海に身を投げ捨てた
そう思っていた
だけど…
🎼M
🎼L
🎼L
弱々しくでもしっかりと
大好きなメンバーに手を掴まれた
ごめ…ん
目…覚まして…ッ
遠くから誰かの声が聞こえる
いや、誰かとかじゃない
大切な人の「みこと」の声だ
今にも泣き出しそうな声は
俺が原因
恐らく寝ている間に海にでも落ちたのだろう
すぐに「大丈夫」だよと
頭を撫でようとするが体が動かない
手だけじゃない、声も出ない
このままじゃみことが危ない
何とかしなければ
そう思った瞬間
───さよなら。
1番メンバーから聞きたくなかった声が聞こえた
何よりも大切なメンバーを失う想像をしてしまって
俺は無我夢中で叫んだ
🎼L
🎼L
🎼M
🎼L
目を真っ赤に染めたみことが
俺の名前を弱々しく呼ぶ
🎼L
🎼L
こんなこと、みことからしたらお前が言うなって思うだろう
だけど…別に俺は死のうとしていた訳では無い
勝手に勘違いしてくれるのはありがたいが
それで命を落とされたら堪らない
復讐以上にメンバーの方が大切なのだから
🎼M
🎼M
🎼L
だけどまぁ
昨日の夕方からこの時間までずっと水に浸かっていたのだ
体調が良いはずはない
メンバーを心配させない為にも
俺はみことと共に病院に向かった
コメント
20件
続き待ってます!( *´﹀`* )
天才的すぎます……