自分
その夜、風奈が夕食をとっていると、グラグラッと体がゆれた。
風奈
地震!
自分
同時に、ケージからガシャッ、ガシャッと激しい音がした。
自分
見ると、ルルがあちこちぶつかりながら、ケージ内を飛び回っている。
風奈
あぶない、けがしちゃう!
自分
風奈があわてると、キッチンからお母さんが顔を出した。
風奈のお母さん
パニックになってるのよ、風奈、声をかけてあげて
自分
風奈は急いでケージのそばによった。
風奈
すぐにおさまるよ。あたしがそばにいるから、大丈夫だよ
自分
少し安心したのか、ルルはとまり木にとまって、ハッハッと短く息をした。
風奈のお母さん
オカメインコは地震とか、大きな音がしたりすると、パニックを起こしやすいんだって。風奈がそばにいるときにそうなったら、声をかけて安心させてあげてね
自分
風奈はドキドキし続ける胸に手をあて、こくん、とうなずいた。
自分
2週間がたったころ。風奈がいつものようにあわ穂を手にのせてケージの入り口に手を入れると、ルルがちょこんとのってきた。ほわっとあたたかいぬくもりが伝わってくる。風奈はうれしくて飛びあがりたいのをこらえて、心の中でさけんだ。
風奈
(きゃー、ルルが手にのってくれたっ)
自分
ルルが食べ終えてから、風奈は興奮してお母さんに言った。
風奈
もう手のりになったって言えるよね
風奈のお母さん
ううん、まだ。次はケージの外に自分から出てくるようになるのを待つの。ただ、部屋には小鳥にとって危険なものがいろいろあるから、注意しなきゃいけないみたい
自分
お母さんはお店の人からもらったプリントを見せながら、ひとつひとつ、風奈に説明してくれた。
風奈
こんなに注意することがあるんだ!
自分
風奈がびっくりすると、お母さんは深くうなずいた。
風奈のお母さん
もともと人間と小鳥はちがう場所で生きてきたから、いっしょにくらすときは小鳥に合った環境を整えないと、事故が起きたり病気になったりして、へたしたら死んじゃうんだよ
自分
死んじゃう━━という言葉が、ずしんとくる。
風奈
あたしとルルはちがう生きものなんだよね……
自分
ちがう生きものとか、小鳥にあった環境とか、風奈は思いもしなかった。
自分
でも、知れば知るほど、ちがいがわかってくる。室温も風奈が気持ちいい温度がルルにとっていいわけではない。ちょっとしたことでパニックになって、けがしそうになったりもする。
風奈
ルルが安心できる環境にならないと、手のりにはならないんだね
風奈のお母さん
そういうこと!
自分
それから風奈は毎日ケージを開けて、あわ穂を手にのせて待った。
自分
ルルはなかなかケージから出てこようとしなかったが、2ヶ月がたったころ、ちょこっと出て、あわ穂を食べはじめた。てのひらから伝わってくるぬくもりに、ほっとする。
風奈
(命がここにある……)
自分
風奈がそうっと頭をなでると、ルルはうっとりと目を細めた。
風奈
ルル、ゆっくりでいいから、もっともーっと、仲よくなろうね