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今回の話は第二話です。

そして本編です。

〇〇

寒がりな推しっていいですよね。

〇〇

特にマフラーに顔埋めてる推しってもうあの、あれです

〇〇

すみません、語彙力が感情に追いつけない現象が…

〇〇

〇〇

耳掻いてたら血ぃ出てきた…

〇〇

血ってあんま匂いないんですね。

〇〇

もっとしょっぱいかと思ってた。

〇〇

まず。

三途

さっむ…

竜胆

ふぁふい(寒い)

三途

あ゛?

三途

竜胆、お前口マフラーに入れて喋っちゃ何言ってるかわかんねぇよ。

竜胆

ふぁっふぇ、(だって、)

竜胆

ふぁふいんらもん(寒いんだもん)

三途

ははっ

三途

竜胆赤ちゃんみたい。

竜胆

ふぁあ⁈(はぁあ⁈)

竜胆ががばりとマフラーを取る。

竜胆

あぁ゛?

竜胆

赤ちゃんじゃねーし

三途

いーじゃん

三途

可愛いいし

竜胆

・・・

黙って俯いた竜胆の耳は、寒さのせいか、それとも何か他の要因があるのか

真っ赤に染まっていた。

しんしんと降り積もる真っ白な雪を踏みしめ、歩く。

深雪もいいところである。

そろそろ佳境に入ってきた降雪は

街路樹を染め上げ、

民家を染め上げ、

街を染め上げてゆく。

竜胆

うぅーーー

竜胆

三途、寒い。

三途

最初に外行こうっつったの誰だっけ。

竜胆

三途。

三途

バカタレ。

竜胆

ふふ、

竜胆

雪、綺麗だね。

三途

あぁ、

三途

去年は東京、降らなかったもんなぁ…

真っ白な世界の中で染まることなく揺れる桃色と紫の春色が一種異様な美しさを紡ぎ出す。

誰もいない歩道を、二人くっつきあって寄り添いながら歩く。

竜胆がポケットから手を出し、分厚いマフラーの上からちょっぴり口元を開けて

手に白い息をふーふーと吹きかけ擦っている。

三途

ん?

三途

お前手袋持ってこなかったの?

竜胆

ん、

竜胆

忘れた。

三途

指先真っ青になってんじゃん

三途

大丈夫か?

竜胆

大丈夫…

竜胆

たぶん…

そういう三途は手袋どころかマフラーもしていない。

なんならいつものスーツにコートを羽織ってきただけである。

竜胆

ね、三途。

竜胆

あの…

竜胆の言葉が止まる。

逡巡するように瞳を彷徨わせ、視線を落とす。

三途

なんだ?

竜胆

やっぱ

竜胆

なんでもない。

既に指先に血の気がなくなってしまった指先を

少し寂しそうに一瞥すると、直ぐにまたポケットへと仕舞ってしまった。

三途

・・・

三途

竜胆。

三途

手、貸して。

竜胆

え?

三途

いいから。

竜胆

あ…

三途はそっと竜胆の腕をとるとポケットから引き出し青ざめた指に自分の真っ白な手を絡めた。

竜胆

・・・

竜胆

あったかい。

三途

だろ?

いつのまにか、三途の耳も真っ赤になっていた。

やはり雪の降る日は寒い。

頬まで赤くなってしまう。

三途

うわ、なんかもっと雪酷くなってきてないか?

竜胆

わ、ほんとだ…

三途

はは、

三途

俺らこのまま凍死しちゃうかもな。

竜胆

んー。

竜胆

三途となら、いーよ。

三途

へ?

竜胆

ふふっ、

竜胆

マヌケな声出すなよな。

竜胆

いーよ、俺。

竜胆

こんな日に三途と二人で死ねるなんてさ、

竜胆

俺さ、もし誰かの側で死ねるなら。

竜胆

兄貴かお前の側で死にたい。

鼻歌でも歌うかのように。

天気の話でもするかのように。

そう曰う竜胆の横顔は本当に、消えてしまいそうなほどに綺麗で。

春千夜にも竜胆にも約束された明日などない。

いつその身体に鉛玉が叩き込まれるかわからない。

それでも三途は、竜胆に明日を契ってやりたいと思ってしまった。

三途

・・・だめだ。

竜胆

なんで?

三途

まだ、だめだ。

竜胆

三途は俺と死ぬの嫌?

三途

そうじゃない。

三途

俺も叶うなら…

三途

けど。

三途

まだまだ竜胆には、伝えたいことが沢山あるから…

三途

・・・

三途はその長く濃ゆい睫毛を少し伏せる。

三途

好きだよ

三途

竜胆。

一瞬。

ほんの一瞬。

雪が、吹き止まった気がした。

竜胆の瞳に、やけに鮮明に三途が映る。

雪に溶け出してしまいそうな薄桃色の髪。

翡翠のように煌めく瞳は強い光りを宿して竜胆を惹きつける。

雪女では到底及ばない雪のような肌に赤みがさし、

綺麗な薄い唇は柔らかく弧を描いている。

三途

ずっと、

三途

好きだったんだ。

竜胆

っ、

竜胆

俺も!

竜胆

俺も…好き。

竜胆

三途のこと、ずっと…

春の花々が綻び始めるように、三途の顔が喜色に満たされていく。

三途

竜胆、俺と

付き合ってくれませんか。

竜胆

・・・

竜胆

三十路になっていう告白のセリフがそれかよぉ

三途

お、おい

三途

どうした⁈

竜胆の頬にいくつもの涙の跡ができる。

心の底から嬉しそうに笑いながら、

頬を伝う涙を拭おうともせず、ただひたすらに。

三途

いや、だったか…?

不安に歪んだ三途の顔を、竜胆の節くれだった大きな手が包み込む。

竜胆

違う、

竜胆

違うよ。

竜胆

俺は嬉しくて泣いてんの。

竜胆

三途、これから宜しくお願いします。

三途

竜胆…

三途

宜しく、お願いします。

三途

そろそろ帰るか?

竜胆

えー。

三途

えーってお前、

三途

若干震えてんじゃねぇか。

竜胆

震えてねぇし。

三途

震えてる。

三途

手から振動が伝わってくる。

竜胆

はぁ⁈

竜胆

じゃぁもう手ぇ繋がない!!

三途

…いいのか?

竜胆

…ヤダ。

三途と二人並んで歩いていられるこの時間が余りにも幸せで、

もう二度とこんな日は来ないのではないか、

帰ったらシンデレラの魔法のように何もかも消えてしまうのではないか、不安になる。

三途

あ、

三途

じゃああれ飲んでこーぜ。

竜胆

ん?

そう言って三途が指し示したのは自動販売機だった。

三途

おしるこ缶。

竜胆

・・・なんか自動販売機のおしるこってハズレのイメージがあるんだけど。

三途

ロングセラー舐めんな。

三途

意外と美味いんだよ、

三途

買ってやるから、飲んでみろよ。

竜胆

んー、まぁ三途の奢りなら…

手際良く三途が自動販売機を操作していく、

ゴトリ

自動販売機の下の方で、おしるこ缶が落ちてきた音がなった。

三途

ん。

竜胆

ありがと。

ピッ ゴトリ

三途も自分の分を手に取る。

竜胆

さっきのベンチで飲も。

三途

あぁ。

少し道を戻り、二人仲良く腰掛ける。

竜胆の膝に雪の結晶が降り立った。

カシュッ

竜胆

あ、

竜胆

美味しい…

三途

だろ⁈

竜胆

うん、

竜胆

意外。

三途

冬のおしるこ缶は別格だからなー。

カシュッ

三途の喉をお汁粉にしてはさらりとした感触の温かさが通り抜けていく。

三途

((あれ、おしるこ缶ってこんなに甘かったか…?

今まで毎年欠かさず飲んできたしるこ缶だが、今年は少し改良が加わったのだろうかなどと考えながらお汁粉を流し込む。

実際はしるこ缶に改良など加わっていないのだが。

三途

ぷはぁー。

竜胆

三途一気に飲み過ぎ、

三途

竜胆が遅いだけー。

竜胆

俺はこの温かさを楽しんでんの!

竜胆は時折おしるこ缶をほっぺにあてたり、手で握りながらちびちびとお汁粉を啜っている。

三途

((可愛い…

三途

なぁ、竜胆…

竜胆

何…んっ!

竜胆の口の端についたお汁粉を、そっと三途の舌が舐めとる。

竜胆

っあ、

そのまま竜胆の唇が三途によって塞がれ、竜胆を喰むように口づけがされる。

竜胆

ふ、っんん

クチュ チュグチュグッ

竜胆

っはぁ、ん

三途の舌が竜胆の口内を余すことなく舐めきって、舌が溶けてしまうのではないかという錯覚に陥る。

竜胆

っはっ、

三途

あっま。

竜胆

ふぅーーーふぅーーーー

三途

あ、ごめん

三途

つい。

竜胆の目は酸欠による生理的な涙で潤んでいた。

真っ赤になった顔でキッと三途を睨みつける。

三途のバカーーーー!!

しんしんと降り積もる真っ白な雪を踏みしめ、歩く。

深雪もいいところである。

もう既に佳境を迎えた降雪は

街路樹を染め上げ

民家を染め上げ

街を染め上げてゆく。

しかし、真っ白な世界のなかで染まることなく揺れる薄桃色と紫の春色が、幸せな未来を紡ぎ出す。

帰ったら九井にブチギレられるのも、

やいのやいのいいつつも皆んなが二人を祝福してくれることも、

三途がいつまで経っても竜胆が名前で呼んでくれないことに悩むことも、

また、別のお話…

おわり

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