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蒸し暑い夏の日だった
そんなことも気づかないくらい
私の目には理解し難い光景が映っていた
マンションの屋上
部屋が暑かったため
少しは涼めるかと屋上まで来たら
目の前には
フェンスを乗り越え少しつま先が 外に出るくらい
自分の体を出し
今にもその身を投げ出しそうだった
その途端
彼はその身を投げ出した。
ユキ
ユキ
ユキ
ユキ
人間というのはそういうもんだろう
私もすぐにフェンスに駆け寄り
そこから半分みを乗り出し下を見た
そこには遠近法であまり見えないが
小さく彼の体とそのまわりに人がいて
1人の男性が電話をしているのがわかった
どうやらまだ生きているらしい
なんの奇跡なんだろうか
...でも...
これで助かったとして
それは彼が望んだことなのだろうか
きっとあのまま死ぬのが彼の望みだろう
気がついたらあたりは夕日がかかりオレンジ色の空が広がっていた
ユキ
母
ユキ
母
ユキ
少し取り乱していた
話そうか、話さないか
話したとてなにになる?
でも話さなかったら少しモヤモヤするし
ユキ
ユキ
母
ユキ
母
ユキ
ユキ
そこには救急車やパトカーがずらりと並び
野次馬に事情聴取してるのがわかった
だけどきっと
これが彼の本望だろう。
気にしないでいよう。
そうは思っているけど
忘れられない
夏の日だった。