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はじめに、概要欄にも書きましたが、長いです。

200タップをこえています。

それでもいいよって方は、 読んでいっていただけると嬉しいです。

それでは、どうぞ ↓

えっ…え………?

どういうこと……?

くろ

くろ

(どうしたのかにゃ)

───ご主人は、朝、いつもと同じように“てれび”をみていた。

でも、ちょっと様子がおかしい。

てれびをみていきなり立ち上がったかと思ったら、 今度はあわてて“すまほ”を見てる。

わたしは、なんか心配になってご主人の近くに行く。

くろ

にゃー
(大丈夫?)

…!

ッくろ………

ご主人を見上げる。

そこにいたのは、いつもの笑ってるご主人じゃなかった。

すごく、悲しそうな、顔…。

……ねぇ、くろ…

私たち…

今日死んじゃうんだって……

そんな…地球が滅びるって…

たまたまつけたテレビでやってたニュース。

“隕石落下情報”

ニュースキャスター

ニュースキャスター

い、隕石は今日の午後5時頃落下する模様です

ニュースキャスター

政府は助かる方法はないと────

(…キャスターさんも焦ってる)

(そりゃあ、そうだよね…)

昨日まで、普通だったことが。

やっと手に入れた幸せが。

今日、全部なくなるなんて…。

(今は…午前5時か)

(ってことはあと……12時間くらいで………)

(…朝早いけど、ネットも荒れてる)

くろ

くろ

にゃー

くろが心配そうに私を見つめている。

急に怖く、悲しくなってきて、涙が溢れそうになる。

……ねぇ、くろ…

私たち……今日死んじゃうんだって…

思えば、散々な人生だったと思う。

両親はギャンブル依存症で、おまけに酒癖が悪く 毎日大声で喧嘩ばっかり。

そのせいか、周りからは避けられ、 中学に入るといじめの対象になった。

───それでも諦めずに、なんとか大人になったのに。

就いた会社はブラック企業。

……もう本当に人生を諦めかけてた矢先に出会ったのが、

くろだった。

あるどしゃぶりの雨の夜中、私が残業から帰る途中に

一匹の黒猫が、歩道の隅に置かれた段ボールの中で ぼろぼろになって震えていた。

───私は、気づけばその子に手を伸ばし、抱きかかえていた。

同じだ、と思った。

昔、母に外に放り出された日のことを思い出した。

その日は今日みたいな雨で、

寒くて、

辛くて。

その瞬間、私の心には、

この子を幸せにしてあげたいという強い気持ちが生まれていた。

────その後、私はその猫を家に連れ帰り、

“くろ”と名付けた。

安直な名前だが、一番に頭に浮かんだのだ。

私の生活は、それから一変した。

家族も友達もいないような私だけど、 帰ればくろがいる。

そんな安心感からか、仕事が少しずつ早く終わるようになって、

気づいたら、私は幸せになっていた。

くろも、今の生活に満足しているようで、 だんだん私にもなついてきた。

そう、これが、やっと、手に入れた幸せだった。

それなのに。

…嫌だ

嫌だ嫌だ…!

急に涙がこみ上げてきて、床にぱたぱたとこぼれ落ちる。

どうして…

どうして幸せな人生を送れないの!?

……私、なんか悪いことした…?

くろ

……

くろ

(ご主人、すごい怒ってる)

くろ

(しかも、泣いてる…)

くろ

(なにか大変なことがおきてることはわかるにゃ…)

くろ

(…なんとかしてあげたいのにゃ)

くろ

くろ

(あのときの、お返しに…)

くろ

(……)

くろ

(何も見えない…?)

気づいたら、わたしのまわりはまっくらだった

くろ

くろ

(さむい……)

ザァァァァ…

雨が、降ってる

でも、いつも家の中で聞いていた雨の音より、なぜかよく聞こえた

くろ

(にゃんでだろ…)

身体を起こしてみようとするけど、重たく、言うことを聞かない

それでも何とか顔を上げると、そこは外だった

………そういえば

捨てられたんだった。

いじめられて、ごはんももらえなくなって、捨てられた…

しかもこんなひどい雨の夜に。

……薄い意識の中、いろんなことが、思い出されては消えていく。

くろ

(もう、だめなんだ────

……

くろ

(え)

……知らないひとが、わたしを見てる

…怖い

また、いじめられるの───

…とか思ってたら、そのひとから手が伸びてきて

わたしは抱きかかえられた

くろ

くろ

(…え)

くろ

(なんて、あったかいんだろう)

その人の手の中は、すごくあったかかった。

そして、すごくやさしくわたしをなでてくれた。

そういえば、こんなにあったかいのって、いつぶりだろう…

その人はわたしを抱えたまま歩き出したけど、 それを怖いとは思わなかった。

着いたよ

ここが、この人の家……

それからその人は、私をタオルを敷いたところに寝かせてくれた

ちょっとまっててね

ぱたぱたと家の中をはしりまわってる

……やがて、わたしの前には小さなお皿に入ったなにかが置かれた

……かつお節しか無かったけど、食べれるかな…?

くろ

(……)

くろ

(………食べて、いいの…)

戸惑ったけど、あんまり心配そうにこっちを見てるから、 食べなきゃと思った

くろ

(もぐ……もぐ)

くろ

(!!)

……おいしい。

今まで食べた何よりもおいしい!!

くろ

(ぱくぱくぱくぱく…)

気に入ったのかな?
よかったぁ………!!

食べながら、わたしは

……この人なら、信じてもいいんじゃないかと思った

───それからずっと、わたしはここにいる

ご主人は、わたしのことを一度もいじめたりしなかった

今思えば、この人…ご主人はわたしの命の恩人

恩返しがしたいって、ずっと思ってた

きっと、今がそのときなんだ!

そう思って、張り切った気持ちで窓をみると

………朝なのに、星があった

それも、とても大きな。

くろ

(すごい明るい……お日様みたい)

それは、少し見ているとだんだん大きくなっている

これ…ずっと大きくなったらここつぶれちゃうんじゃ……

とか考えてたら、となりにご主人が来て

……さっきより大きい

うぅ…嘘だと言って………

……あの星のことだよね

………もしかして、ご主人が変なのは、 この星のせい……?

くろ

(いや絶対そうにゃ!!)

わたしはなぜか間違いないと思った

そう思った上で、もうあんまり時間がない、と思う

────私にできること。

さいごに、ご主人を幸せにするために………

…ふと、目に部屋の隅にあるおもちゃが映る

…ご主人、遊んでるときが一番楽しそうだった

そうだ。

わたしはそのおもちゃをくわえて、 ご主人の足元に持っていく

くろ

くろ

……にゃ!
(あそぼ!)

……あ

窓の外には、肉眼でしっかり見えるサイズの、太陽じゃない光が。

見間違いだと思って、ちょっと間をあけて見てみるも…

……さっきより大きい

うぅ…嘘だと言って………

まだ信じられない。信じたくない。

……もう、おかしくなりそうだ────

くろ

……にゃ!

…え

くろがいた。

お気に入りの羽じゃらしをくわえて、 いつになく真っ直ぐ、私を見ていた。

…………あ、そうか。

そういうことか。

…そうだね、時間は有限

もう、会社行かなくていいや。

……泣いてても消えるもんは消えるし!

…………めいっぱいあそぼー!!

くろ

…にゃー!!!

それから私たちは、本当にめいっぱい遊んだ

お互いに、今までの辛かったこと、悲しかったこと

全部、忘れて。

ただ、たくさん笑って、たくさんはしゃいで、

それはそれは楽しい時間を過ごした。

…そして、時刻は

あっという間に5時前になった。

はぁー…楽しかったね、くろ

くろ

にゃ!!
(うん!)

わたしは、喉をゴロゴロ鳴らしてみせる

外の星は、いつの間にか大きな影になっていた

もう、終わりなんだ…

……でも、本当に、楽しかった

今日だけじゃない、ご主人に出会えてからずっと。

そんなご主人と一緒にいれるなら、何も悔いはないかな

…もうすぐだね

くろ

(…あ)

わたしはそういうご主人の手が、わずかに震えているのに気づいた

───ご主人の手に、頬をすり寄せる。

くろ

にゃぁ…
(大丈夫にゃ)

……ふふ、くろには敵わないなあ

…今まで、本当にありがとう

あなたに出会えてなかったら、私今ここにいなかった

くろ

にゃあ!
(わたしも!)

…そのとき、家が揺れ出した。

くろ

にゃぁ
(ねぇ、ご主人)

ねぇ、くろ

大好きだよ────

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