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はじめに、概要欄にも書きましたが、長いです。
200タップをこえています。
それでもいいよって方は、 読んでいっていただけると嬉しいです。
それでは、どうぞ ↓
くろ
くろ
───ご主人は、朝、いつもと同じように“てれび”をみていた。
でも、ちょっと様子がおかしい。
てれびをみていきなり立ち上がったかと思ったら、 今度はあわてて“すまほ”を見てる。
わたしは、なんか心配になってご主人の近くに行く。
くろ
ご主人を見上げる。
そこにいたのは、いつもの笑ってるご主人じゃなかった。
すごく、悲しそうな、顔…。
たまたまつけたテレビでやってたニュース。
“隕石落下情報”
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
昨日まで、普通だったことが。
やっと手に入れた幸せが。
今日、全部なくなるなんて…。
くろ
くろ
くろが心配そうに私を見つめている。
急に怖く、悲しくなってきて、涙が溢れそうになる。
思えば、散々な人生だったと思う。
両親はギャンブル依存症で、おまけに酒癖が悪く 毎日大声で喧嘩ばっかり。
そのせいか、周りからは避けられ、 中学に入るといじめの対象になった。
───それでも諦めずに、なんとか大人になったのに。
就いた会社はブラック企業。
……もう本当に人生を諦めかけてた矢先に出会ったのが、
くろだった。
あるどしゃぶりの雨の夜中、私が残業から帰る途中に
一匹の黒猫が、歩道の隅に置かれた段ボールの中で ぼろぼろになって震えていた。
───私は、気づけばその子に手を伸ばし、抱きかかえていた。
同じだ、と思った。
昔、母に外に放り出された日のことを思い出した。
その日は今日みたいな雨で、
寒くて、
辛くて。
その瞬間、私の心には、
この子を幸せにしてあげたいという強い気持ちが生まれていた。
────その後、私はその猫を家に連れ帰り、
“くろ”と名付けた。
安直な名前だが、一番に頭に浮かんだのだ。
私の生活は、それから一変した。
家族も友達もいないような私だけど、 帰ればくろがいる。
そんな安心感からか、仕事が少しずつ早く終わるようになって、
気づいたら、私は幸せになっていた。
くろも、今の生活に満足しているようで、 だんだん私にもなついてきた。
そう、これが、やっと、手に入れた幸せだった。
それなのに。
急に涙がこみ上げてきて、床にぱたぱたとこぼれ落ちる。
くろ
くろ
くろ
くろ
くろ
くろ
くろ
くろ
くろ
気づいたら、わたしのまわりはまっくらだった
くろ
くろ
ザァァァァ…
雨が、降ってる
でも、いつも家の中で聞いていた雨の音より、なぜかよく聞こえた
くろ
身体を起こしてみようとするけど、重たく、言うことを聞かない
それでも何とか顔を上げると、そこは外だった
………そういえば
捨てられたんだった。
いじめられて、ごはんももらえなくなって、捨てられた…
しかもこんなひどい雨の夜に。
……薄い意識の中、いろんなことが、思い出されては消えていく。
くろ
くろ
……知らないひとが、わたしを見てる
…怖い
また、いじめられるの───
…とか思ってたら、そのひとから手が伸びてきて
わたしは抱きかかえられた
くろ
くろ
くろ
その人の手の中は、すごくあったかかった。
そして、すごくやさしくわたしをなでてくれた。
そういえば、こんなにあったかいのって、いつぶりだろう…
その人はわたしを抱えたまま歩き出したけど、 それを怖いとは思わなかった。
ここが、この人の家……
それからその人は、私をタオルを敷いたところに寝かせてくれた
ぱたぱたと家の中をはしりまわってる
……やがて、わたしの前には小さなお皿に入ったなにかが置かれた
くろ
くろ
戸惑ったけど、あんまり心配そうにこっちを見てるから、 食べなきゃと思った
くろ
くろ
……おいしい。
今まで食べた何よりもおいしい!!
くろ
食べながら、わたしは
……この人なら、信じてもいいんじゃないかと思った
───それからずっと、わたしはここにいる
ご主人は、わたしのことを一度もいじめたりしなかった
今思えば、この人…ご主人はわたしの命の恩人
恩返しがしたいって、ずっと思ってた
きっと、今がそのときなんだ!
そう思って、張り切った気持ちで窓をみると
………朝なのに、星があった
それも、とても大きな。
くろ
それは、少し見ているとだんだん大きくなっている
これ…ずっと大きくなったらここつぶれちゃうんじゃ……
とか考えてたら、となりにご主人が来て
……あの星のことだよね
………もしかして、ご主人が変なのは、 この星のせい……?
くろ
わたしはなぜか間違いないと思った
そう思った上で、もうあんまり時間がない、と思う
────私にできること。
さいごに、ご主人を幸せにするために………
…ふと、目に部屋の隅にあるおもちゃが映る
…ご主人、遊んでるときが一番楽しそうだった
そうだ。
わたしはそのおもちゃをくわえて、 ご主人の足元に持っていく
くろ
くろ
窓の外には、肉眼でしっかり見えるサイズの、太陽じゃない光が。
見間違いだと思って、ちょっと間をあけて見てみるも…
まだ信じられない。信じたくない。
……もう、おかしくなりそうだ────
くろ
くろがいた。
お気に入りの羽じゃらしをくわえて、 いつになく真っ直ぐ、私を見ていた。
…………あ、そうか。
そういうことか。
くろ
それから私たちは、本当にめいっぱい遊んだ
お互いに、今までの辛かったこと、悲しかったこと
全部、忘れて。
ただ、たくさん笑って、たくさんはしゃいで、
それはそれは楽しい時間を過ごした。
…そして、時刻は
あっという間に5時前になった。
くろ
わたしは、喉をゴロゴロ鳴らしてみせる
外の星は、いつの間にか大きな影になっていた
もう、終わりなんだ…
……でも、本当に、楽しかった
今日だけじゃない、ご主人に出会えてからずっと。
そんなご主人と一緒にいれるなら、何も悔いはないかな
くろ
わたしはそういうご主人の手が、わずかに震えているのに気づいた
───ご主人の手に、頬をすり寄せる。
くろ
くろ
…そのとき、家が揺れ出した。
くろ
大好きだよ────