また...逢いに来てくれたのね?
嬉しいの
嬉しいんだよ
...
でもね
そろそろいかないと ダメよ?
心配してくれてるのはわかる
私の事を、宝物みたいに
優しく扱ってくれたのも憶えてる
...やっぱり心配だよね?
だって 私ももうおばあちゃんだもの
確か、雨に濡れてたところを
雨みたいな表情をしたあなたに
助けてもらったのよね
それから私の宝物は
あなたで、あなたの温もりで
あなたの腕の中にいる時間で
だから、お願いよ
もうあなたが
私のせいで 此処に留まり続けるのは
絶対に嫌なの、見たくないの
ごめんね、
あなたよりも早く死んじゃって
違うの、そんなこといいの
だって、あなたはずっと 私に温かいものをくれたじゃない
...でも
きっと――
――やっぱり
私の声は届かないのね
あなたは私に宝物をくれた
それはいつだって
あなたとの思い出の中にあるの
だから
あなたがいなくても 私は頑張って生きていけるのよ
あなたにはたくさん
ご飯が欲しい、撫でて欲しい、
抱きしめて欲しい、 近くにいて欲しいって
ワガママを言ってきたけど
最後のワガママ、 聞いてほしいの
ごめんね、ごめんね
最後までお世話出来なくて
ごめんね
いつだって
神様というのは意地悪なのね
私を雨の中 外に放り出して
それを この人が拾ってしまって
私に宝物の在り処を見つけさせて
それを奪って
...その上で この人を、大切な宝物を
留まらせ続けて
――そんな運命を辿らせて
ねえ、1つだけなら
こんな小さな私の願いも 聞いてくれるかしら?
あの日
私とあなたが出逢った時みたいに
あなたはずっと 雨みたいな表情で
それでいて
あなたは休むことなく
私の事を撫で続ける
外も...雨になってしまったわ
いつか あなたの雨が止んで、晴れて
幸せになってほしいと願うのは
...猫の私には おかしいことなのかしら
そうでないのなら
どうか――
Fin
コメント
3件
猫だったΣ(゜Д゜) いや、あの、主人公は人間じゃないと言うことは予想出来ましたけど猫だとは思わなかったです。ずっと柴犬だと思ってました😳← 宝物は「あなた」であり「あなた」と過ごした日々だったんですね😌。そしてまた新しい宝物が増えるのですね😌。人と犬の優しさが滲み出た素敵なお話でした✨。
習い事の帰りの電車(特急)の中で、思いついたものを衝動的に書いたものです ......大丈夫かこれ