TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

瓦礫を踏みしめ 屋根伝いに王城へ向かう

風が耳元でざわめき、髪を揺らす

焦げた匂いと 湿った土の匂いが混じり

胸の奥で熱を帯びた鼓動が 早鐘のように鳴った

 

お願いです……!
どうか…………王様を……ッ!!

 

王妃様と王子様を……助けて下さい……ッ

────声が…… 風に乗り、か細くも力強く、耳に届いた

それは… 絶望の縁で、希望を託すような──

───────『祈りの声』

震える声が 胸の奥を熱く突き動かし

荒い呼吸が、焦燥に追い立てられる

 

(……必ず、間に合わせる)

瓦礫に 足を取られそうになりながらも

一歩一歩、前へ──────

屋根を蹴るたび

古びた瓦が 微かに軋む音が耳に刺さる

────乾いた木の軋む音音

遠くで崩れた家屋の残骸に揺れる 微かな炎と、煙────

人々の声は 風にかき消されながらも

背中を押す希望と絶望の混ざった 切迫感として、全身に広がっていく

王城の輪郭が、視界に入る

瓦礫や崩れた城壁の隙間を 縫うように駆け上がる

黒煙を帯びた風が頬を掠めた

屋根を駆け下り 王城内の薄暗い廊下に差し掛かると

足元の床板が ガタン、と音を立てた

前方には 倒れ伏したリンゴ王国の兵士たち

そして

何が起きたのか理解できず 戸惑うバナナ王国の兵士たちの姿

俺は言葉を交わす間もなく その間を縫うように駆け抜ける

壁の隙間から金属の衝突音が 遠のく戦場の余韻のように、耳を打つ

扉は頑丈に施錠され

暗黒魔道士ラマンダーのものであろう 呪文が施されている

鞘から剣を抜き力を込め 真っ直ぐ、垂直に振り下ろした

バキィンッッ─!!

頑丈な扉が軋み 木材が避ける音と共に、粉塵が舞う

その瞬間

その場に居た全員の視線が 俺に注がれた

王弟リン・ゴメスは 鋭く睨みつけ、歯を食いしばる

 

バナナ王国側の者たちは 傷だらけの身体を支えながらも

目に安堵を浮かべ、息を漏らす

 

暗黒魔道士ラマンダーは 眉間に皺を寄せながら

何かを計算するように、目を細めた

空気を裂く、金属の匂い 舞う埃────

 

……一瞬 時が止まったかのように 静寂が訪れる

全員の視線が、俺を見つめる

その視線の“重さ”に きゅっと胸を締め付けられる

…だが、むしろ その視線が俺を奮い立たせた

『皆を守らなければ』 『最悪を阻止しなければ』

────と

俺は剣を握り直し 一歩、また一歩と歩を進めるごとに

頭の中の雑念を削ぎ落としていく

“恐怖”も“後悔”も 未来への“願い”すらも────

今の一振には、不要なもの

残るのは────敵と俺

斬るか 斬られるかという、一点のみ

歩を進める度に心は澄み渡り

刃先と視線だけが 研ぎ澄まされていく

次の一歩 次の一振りに

“全てを賭ける為に”

この作品はいかがでしたか?

65

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚