愛されたかった,いや
それは嘘,愛されたい
誰かに必要とされたくて
苦しくて息が詰まった
そんな時に救ってくれたのは 嘘で出来た先輩だった
頬を優しく撫でる手は冷たくて
余裕のあるような笑顔の裏には 余裕なんてものはなかった
先輩は悪夢に苦しんでいて 寝れないみたいだった
だから私は何時も傍にいた
亮(リョウ)
硝子
亮(リョウ)
薄っぺらい笑い声
部屋中に臭うタバコの匂い
亮(リョウ)
硝子
遠くを見つめながらタバコの煙を 口から大きく吐いた
亮(リョウ)
亮(リョウ)
真っ黒な空を薄暗い部屋から見上げていた
亮(リョウ)
硝子
亮(リョウ)
先輩は笑ってなくて私に断言して 欲しそうな顔をしていた
硝子
硝子
亮(リョウ)
先輩は相変わらず 嘘みたいな笑顔を作っていた
硝子
亮(リョウ)
先輩は目を見開いていた, 意外な反応に少しだけ驚いた
私は そのポカンとしたような 力の抜けた表情を知らなかった
硝子
亮(リョウ)
先輩は また笑った でも何処か切なそうに,
硝子
亮(リョウ)
伏せ目気味に先輩は真っ黒な空に 向かって煙を吐いた
硝子
硝子
硝子
先輩は暫く考え込むと何時もみたいに 微笑む訳でもなく淡々と語り出した
亮(リョウ)
先輩は辛そうな顔をする訳でもなく なんとも言えない顔をしていた
亮(リョウ)
亮(リョウ)
首をコテンッとさせながら 先輩は何時になく楽しそうに笑っていた
亮(リョウ)
硝子
硝子
亮(リョウ)
開いている窓から強い風が吹いた
亮(リョウ)
その時の先輩の顔は よく見えなかった
私は亮が嫌いだった
何もかも偽りで出来ている彼奴が
泣いてる顔も怒ってる顔も見せない 人間味のない亮が大っ嫌いだった
歌姫
だから大好きな硝子が亮の部屋に通っている というのを聞いて許せなかった
亮(リョウ)
歌姫
亮は何も言わずに,ただ黙っていた
歌姫
亮(リョウ)
ピクリとも動かない穏やかな笑みに余計,腹が立った
歌姫
亮は暫く黙り込むと また嘘みたいな笑みを浮かべた
亮(リョウ)
でも一つだけ何時もと違う所があった
私は,それに気づくと目を丸くした
歌姫
亮(リョウ)
本人は気づいてないのか いつも通りな態度だった
歌姫
透明な雫がキラキラと光りながら 澄んだ海のような瞳から溢れ落ちる
亮(リョウ)
亮(リョウ)
こんなに余裕のない亮は見たことがなかった
歌姫
亮(リョウ)
そう言い亮は顔を引きつらせながら微笑んだ
歌姫
何故か私も焦った あんな顔 見た事がないから
亮もハッとしながら私から顔を背けた
どうするべきなのかも分からず 暫く気まずい沈黙が続いた
ガチャッ
最悪のタイミングで誰かが来た , そう思い音のした方へ顔を向ける
悟
五条は何を思ったのか何も言わず亮に近づいた
歌姫
五条は聞き耳を持たず背を向けていた 亮の腕を掴んで強引に顔を覗き込んだ
亮(リョウ)
先程より落ち着いてはいたが, まだ涙は止まっていない
五条は呆然としていた,泣いてる姿を 見たことが無いのだろう
私も無かった,亮は1度も涙を 見せたことが無かったから
悟
五条の顔は見えなかったけど混乱と 怒りが感じ取れた
歌姫
バァンッ
まるで,『こっちを見ろ』とでも言うように 勢いよくドアが開いた
音に驚いた私と五条はドアの方に目を向ける
綾人(アヤト)
綾人(アヤト)
こいつは何時もタイミングよく来る, 亮の何もかもを知っているかのように
悟
綾人(アヤト)
綾人(アヤト)
綾人(アヤト)
綾人は猫被ることなく冷たい言葉を 笑顔で言い放った
悟
綾人(アヤト)
亮のことを軽々しく持ち上げると 目を隠しながらドアの方に向いた身体を 顔だけ,こちらに向けた
綾人(アヤト)
悟
コメント
4件
最高でした。次も楽しみに待ってます。