大森元貴side
ポクポクポクポク…
木魚の音が葬式会場に静かに鳴り響いている
横を向くと、俯いて震えている涼ちゃんが座っていた
そして前を向くと、大きな額に飾られた若井滉斗の笑顔と目があった
その笑顔がきっかけとなって記憶が引っ張り出されてくる
それは、つい一昨日のこと
大森元貴side
wki.
omr.
wki.
wki.
若井はそう言って大きな時計の下で携帯を見ている人物に声をかけた
声大きいよ、と俺は言った
涼ちゃんは大声をだした若井に気づいて手を振った
若井が俺の方を向いて 「ほら、やっぱり」 と笑った時だった
横にいる若井に何かが飛びついてきた
フード付きの黒いパーカー 黒いズボン 黒いリュック 眼鏡とマスク
そして帽子を目近にかぶっている男の人
男の人は若井に近づいて、そしてゆっくり離れた
男の人の腕は小刻みに震えていて
その男の人は血まみれの包丁を持っていた
咄嗟に若井の方を見る
若井は血まみれのお腹を抑えて唖然としていた
俺のほうを一瞬見た
そして 「いたい」 と呟いてうずくまった
すぐに救急車は呼んだのに
手術は間に合わなくて
若井は出血多量でその日のうちにこの世を去った
泣いて、泣いて、涙が枯れるくらい泣いた
いっそ、涙が枯れた方がいいくらい泣いた
後悔ばかりが残っている
なんで、あの男の人が包丁を持っていることに早く気づけなかったんだろう
なんで若井だけが刺されたんだろう
なんで若井のことを俺は守れなかったんだろう
どうして?
どうして俺たちを残して若井だけが死んでしまったの?
ねえ、誰か答えてよ
涼ちゃんも泣いていた
若井が亡くなった日から二日後の、今日
涼ちゃんは目を真っ赤に腫らしてやってきた
それは俺も同じだったんだけど
涼ちゃんは若井の遺影に縋り付いて 「戻ってきて」 と泣き叫んだ
でも、俺の方が涼ちゃんよりも何倍も悲しかった
だって、俺と若井は、付き合っていたから
告白は俺からだった
緊張しているからか声は少しだけ上ずった
顔はやかんみたいに熱かった
下手くそすぎて笑っちゃうくらいの下手くそな告白だった
馬鹿みたいに正直で、ベタで、真っ直ぐすぎる、そんな告白
wki.
なのに若井は弾けるような笑顔でそう言ってくれた
若井は俺の告白を受け入れてくれたの
それからいろんなところに行って。
一ヶ月も経てば同棲もはじめて。
若井の色んなところも知れたし、俺の色んなところも知ってもらった
そして、約束した。
「ずっと一緒にいる」
そう、暗い部屋の中で若井と小指を絡めあった
そこで毎回回想は終わる
「ずっと一緒にいる」
ねぇ、若井、そう約束したよね
じゃあなんで今俺の隣に若井はいないの?
…若井の嘘つき
そして俺はまたハンカチに顔を埋めた
こんにちは✨
「不器用な君からの最後の言葉」 連載スタートです✨ いいねと感想よろしくお願いします🤲
そしてフォロワー様500人記念 「拝啓、僕の初恋の人へ」 明日出します✨読切ですが読んでくれると嬉しいです👍
それではまた!
コメント
5件
ああ見るの遅くなりすぎた、、 ちょっと待てよこれだけでも泣けるぞ てか涙目なったんだが?!
書き方神じゃ~ん、、、 刺した男の人許せん😡 もーう!!泣かせに来てる みのりサン語彙力ありすぎ!!! 見習いたい‼️‼️ 最高、神作品、語彙力の天才 みのりサンには、この全てが詰まってるわっ!!!!すごい!!!!