今年の夏は

恋は簡単に実らない。

そんなこと恋に落ちた時から

わかってるよ。

それでも

あなたの事をずっと好きでいるのは

ダメですか？

ザザーン...ザザーン─

潮風が気持ちいいこの季節

私はひとりで海岸に来ていた

近頃だんだん涼しくなってきて

制服のワイシャツも

半袖から長袖に変わった。

昼間はまだ暑いけれど

朝や夕方、夜は過ごしやすい。

"今年の夏はなんにもなかった"

この言葉が来年の夏の終わりには

出てきませんように。

"今は"そう思うしかできなかった。

夕日が海にどんどん沈んでいく、

その光景をひとりで見ては

今年の夏を振り返る。

片想いの彼には彼女ができ、

親友は夏休み中に親の転勤で

引越し＿。

"いろんなことがあったなぁ"

この言葉を来年の夏の終わりに

使うなら

悪いほうではなく

いい方で使いたい。

そう願うしかなかった。

背後から聞こえたのは

私の片想いしていた相手

"暖"の声だった。

その"初めての彼女"に

私はなりたかった─。

暖は私が泣き止むまで 隣に居てくれた。

ずっと隣に居たい。

この願いは一生 叶わないんだろうけど。

今だけ隣にいることが出来る

それがこの夏の最後の 思い出になった。

もちろん叫ぶことは決まってる。

幼馴染

それは私の事

誰よりも長い間一緒に居たのに。

毎年夏祭りは一緒に行ってたのに。

ずっと隣に居たのに。

今年の夏で、

この夏のせいで

全てが崩れた。

思いっきり叫ぶんだ。

私の気持ちが貴方に

いや

暖の心に届くように

夕焼けに染まる"幼馴染"の顔。

その表情は少し哀しそうで

嬉しそうに見えた。

走って行く君の背中が

どんどん遠ざかっていく。

恋ってこういうのなのかな。

今年の夏は失恋で終わった。

｢好きでしたー！｣

この君との思い出が

いつか

今年の夏の最高の 思い出になりますように。

そして

私の告白は

誰にも聞かれることなく 終わった─。