あやな
わぁ!お人形さんだぁ!

お母さん
ふふ♪お誕生日おめでとう
あやな!

お父さん
おめでとう!

あやな
ありがとう!お父さんお母さん!

あやな
このお人形さん大切にするね!

あやな

あやな
そう言えば…お人形さんに名前つけてなかったわ…ん〜…

あやな


あやな
白い肌で可愛い…

あやな
シルキー…
うん!シルキー!

あやな
今日からあなたはシルキーだよ!よろしくねっ!

シルキー

あやな
さて、どうするか…
勉強でもするか…

シルキー

あやな
ん?気のせいかな?

シルキー
……………ぇ……

あやな
え…?

シルキー
ね……ぇ………

あやな
ひっ!

シルキー
やっと動ける…

あやな
シ、シルキー…?

シルキー
ありがとう、名前付けてくれて

あやな
いや、別にそれはいいんだけど…どういう事?夢?

シルキー
夢じゃないよ
私はちゃんと動いてる

あやな
で、でもなんで名前付けただけで、動いてるの…?

シルキー
私は普通の人形じゃないの
私は呪いがかけられている…

あやな
呪い…?

シルキー
そう。
名前を付けられると魂が宿る呪い…

あやな
で、でもそれっていい事なんじゃ…?

シルキー
人形にとっては苦痛よ?
人形の役目はそれぞれ違うけれど、私は飾りの人形…
本来人形なんて魂なんか宿ってはいけないのよ

あやな
でも、今シルキーに魂が宿ってるけど、いつになったらシルキーの魂は消えちゃうの?

シルキー
人形の主である人間に今まで思っていた事を話す事かな

あやな
シルキーが私に思っていた事?

シルキー
そうね。私は別に今まで通り人形でいたいから言っちゃうね

あやな
あ、う、うん

シルキー
まずさぁ、あなた中学三年でしょ?いつになったら勉強するわけ?

あやな
うっ…!そ、それはー、いつかやりますよー…はは…

シルキー
あんたいつもいつもお母さんに勉強しろとか言われてるのに勉強するフリしてマンガ読んでんじゃない

あやな
な、なぜそれを…!

シルキー
いっつも見てんだから分かってるに決まってるでしょ

シルキー
それにさ、あんた最近太り過ぎ

あやな
な、なんて…事を…!女の子に向かって…!

シルキー
いや事実だし。

あやな
よ、要件はそれだけ?

シルキー
あぁ、あともう1つ

あやな
う、うん…

シルキー
私を今まで大事にしてくれてありがとね

あやな
え?予想外の返答…

シルキー
私ね、あんたの親に買われる前まで数十年間もあそこに置かれてたの

あやな
数十年!?

シルキー
えぇ、だから買われた時正直嬉しかったわ

シルキー
それに全然名前付けてくれないからお礼が遅くなっちゃったじゃない

あやな
あー…ごめんごめん

シルキー
まぁいいんだけどね、こうして伝えられたし

あやな
うん、私もシルキーと居れて楽しかったよ。いろいろ愚痴言っちゃったけど…

シルキー
あー、確かに愚痴を聞くのはめんどくさかったわ

あやな
あはは!だよね〜
でも最近言ってないや

シルキー
うっ…ゲホッゲホ

あやな
ちょっ!シルキー!?

シルキー
言いたい事言ったから時間が迫ってるのかも…

あやな
そんな…!まだシルキーとお話ししてたいのに…!

シルキー
しょうがないでしょ…ぅ…

シルキー
これでも…たくさん話せたんじゃ…ない…?

あやな
シルキー…途切れ途切れになってる…

シルキー
時間が…ないの…よ…

あやな
やだ…やだよ!待ってよシルキー!まだ行かないで!行かないで…

シルキー
泣かないでよ…人形に戻ってもいつだって愚痴…とか聞く…からさ…

あやな
返答がないとやだよ!寂しいよ…悲しいよ…

シルキー
ゲホッ!

あやな
シルキー!

シルキー
最後に…言って…おく…わ…

あやな
な、何…?

シルキー
これからも…私を大切に…して…よね…

あやな
あ、当たり前じゃない!
バカじゃないの!?

シルキー
ふふ…あんたの…方がバ…カよ…

あやな
シルキー…

シルキー
ちゃんと受験勉強…して、志望校に受かり…なさいよ…

あやな
うん!ちゃんと…ちゃんと勉強する!それでちゃんと志望校に合格する!

シルキー
その…いきよ…
もう…1つ…だけ…

あやな
何…?

シルキー
大好き…だよ…
私の事…忘れない…でよね…

あやな
そっちこそ…!忘れちゃ…ダメだからねっ…!

シルキー
うん…あり…がとう…

あやな
シルキー…?シルキー!!

その後私はいっぱい泣いた。
次の日になると、
目が真っ赤に腫れていた。
その日はさすがに学校に行けないくらい腫れてたから休んだけど、私はずっとシルキーの傍から離れなかった。
今でも私は、
シルキーの言葉も
口調も
あの温もりも
未だに覚えてる。
絶対に忘れるわけがない…
あの日の不思議な出来事を…