テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リリア💙🤍
94
食パン
48
8
#復讐
すっこ
2,432
――春との関係の始まりは、16歳の時だった。
もか
残暑も過ぎ去った10月の半ば。
私室のベッドの上で、私は膝を抱えて沈み込んでいた。
隣には、春が並んで座っている。
学校から帰ってきて早々、自室に引き篭ってしまった私の異変に気づいたのか、すぐに様子を見に来てくれたけれど。
春樹
春樹
もか
涙をこらえながら小さく頷く。
生まれて初めて味わう失恋の痛みは、私の心に深い傷跡を残した。
春と一緒に、地元の高校に進学した。
バレーやバスケ、新体操……屋内スポーツに関しては毎年好成績を残している、いわゆるスポーツ強豪校。
それだけに、練習もかなりハードで。
次々に退部していく子達が多い中、キツい練習にも必死に食らいついた。
そんな苦しい練習の中、仲良くなった人がいた。
――男子バスケ部の副主将。
1つ年上の、明るくて頼りがいのある先輩。
笑うと出来るえくぼが特徴的な、優しくて気さくな男の子。
郁兄とも春とも違うタイプの彼に、私は興味を抱いてしまって。
その好奇心は、徐々に好意へと変化していく。
初めて異性を好きになった――初恋だった。
そんな先輩だけど、女子とは積極的に喋る方ではなくて。
でも私にはよく話しかけてくれたから、勘違いしてしまった。
もしかして、先輩も私のことが――
……なんて、今思えば本当に恥ずかしい。
そう、先輩には好きな人がいた。
私も、誰も知らない、他校の女の子に片想いしていた。
その事実を知った時、胸に鋭い痛みを感じて。
呼吸がうまく出来なくて、心は悲しみの色で染まっていく。
なんて滑稽なんだろう、と。 とんでもない勘違いをしていた自分が、恥ずかしくてたまらなかった。
気を抜いたら泣いてしまいそうで、練習をサボって帰宅してしまう失態。 具合が悪くなった、なんて、ありがちな嘘までついて。
そして帰ってくるなり、部屋に閉じこもっている。
今日、私は失恋した。
もか
もか
もか
春樹
もか
初めての失恋は心が痛くて苦しかったけれど、思う存分泣いたら、少しだけスッキリした。
それに、泣いてる間、春がずっと隣にいてくれたのも心強かった。
初めて好きになった人が先輩でよかった。 今はそう思える。
もか
春樹
もか
春樹
もか
春樹
もか
もか
春樹
もか
春樹
もか
そう茶化せば、春も小さく笑ってくれた。
春樹
もか
真面目で優しい春は、見た目だけじゃなく、中身まで絵に描いたような好青年だ。
彼女が出来たら、ずっと大事にしてくれそうなタイプだと思う。
そんな春の彼女ポジションに立ちたいと、そう切望してる女子は周りにたくさんいるのに。
もか
春樹
もか
もか
そんな助言をしてみた。
春の性格だから、そういう曖昧な関係から始めるのは苦手そうだなあ、なんて思いながら。
――でも。
春樹
春樹
もか
はたり、と瞬きを落とす。
返ってきた返答は、私が予想していたものとは全然違った。
隣に目を向けても、春はずっと俯いたままで視線が合わない。
彼の言葉が、何度も頭の中でループする。
――私がいるから、彼女は要らない。
春はそう言った。
その言葉の意味はわからないけれど、その思考はちょっと、よろしくない気がする。
もか
困惑していると、隣の温もりが離れた。
私の真正面に座り直した春の視線が、私のものと重なる。
言葉もなく、互いに見つめ合う。
どことなく距離が近い気がするし、春の雰囲気もいつもと違う。
もか
もか
気まずい沈黙を先に破ったのは春だった。
彼の身体がかすかに傾き、私の肩口に心地いい重みが加わる。
春の額が、私の衣服の生地をごそりと押し下げた。
もか
もか
心配になって、春の顔を覗き込もうとしたけれど。
春樹
小さな呟きが、耳元で震えて消える。
もか
もか
訊き返そうとして、途中で塞がれた。
もか
思考が停止する。
目の前には、伏せられた瞼と長いまつ毛。
唇には柔らかな感触が押し当てられていて。
それが春の熱だと認識するまで、数秒かかった。
もか
もか
思考が全く追いつかなかった。
唇が離れた後も、私の心臓は激しく打ち続けている。
春の頬がほんのりと赤く染まって、潤んだ瞳が私を捉えていた。
もか
春樹
もか
もか
春樹
もか
もか
だって今、キスするような流れじゃなかった。
それっぽい話もしてなかった。
ていうかキス、初めてだったのに。
まさか失恋した日に、初めてのキスを奪われることになるとは思わなかった。 しかも、いとこ相手に。
もか
なんでキスされたのかわからず、私は春の言葉を待つしかなかった。
再び訪れた沈黙が、部屋の空気を重くする。
春は少し俯いて、それから顔を上げると、私の目を真っ直ぐに見て口を開いた。
春樹
ぼそりと告げられたその言葉は、まるで拗ねた子供みたいで。
もか
もか
春だって年頃の男の子だ。 そういうことに興味が湧いてもおかしくない。
むしろ今まで、そういう素振りを見せなかったのが不思議なくらいだ。
もか
私の言葉に、春は呆気に取られたような顔をした。
そして、大きなため息をひとつ。
春樹
もか
春樹
もか
もか
春樹
もか
そんな質問をするのは恥ずかしかったけれど、それでも、意を決して訊いてみれば。
春樹
もか
迷うことなく頷いた春に戸惑う。
しどろもどろになる私に、今度は春が問い返してきた。
春樹
もか
春樹
もか
もか
そんなこと聞かれてもわからない。
本当のことを言うなら、初めてのキスは好きな人がよかった。当たり前だ。
でも、春とのキスは嫌じゃなかった。
家族同然の存在なのに、どうしてだろう。
わからないけど、なぜか私の心はふわりと舞い上がった。
もか
なぜか笑いが込み上げてくる。
妙な高揚感だった。
胸がドキドキするのに、それが全然不快じゃなくて。むしろ心地いいくらい。
まるで魔法にかけられたみたいに。
春樹
春が不思議そうに首を傾げてる。
もか
春樹
私が笑っているのを見て、春の表情も和らいだ。
もか
春樹
もか
春樹
もか
春樹
もか
そう言われて、私は一瞬固まった。
そこでどうして、もう一度キスする流れになるのかわからない。
わからないけど、気持ちが高ぶっていたせいか、正常な判断がつかなかった。
頭がふわふわとしていて、目の前の春のことしか考えられない。
春樹
春が少しからかうような、それでいて期待するような目で私を見る。
悪戯を仕掛けた子供のような、無邪気な表情にどきっとした。
普段の落ち着いた春からは、想像できないような顔。
そんな顔をされたら、なんだか断れない。
それに――
もか
純粋に、キスという行為に興味が湧いてしまって。
うん、と素直に頷いてしまった。
コメント
1件
「初恋の失恋」と「いとこからの突然のキス」の対比が鮮やかで、心臓がぎゅっとなりました。特に「10年越しの片想い」という春の台詞が、伏線として後半で効いてくるのが憎い演出。もかの鈍感さと春の拗ねたような態度のギャップにやられました。続きが気になります!