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悠也

久しぶり

悠也

今、何してる?

悠也

俺は今仕事が終わってこれから家に帰るところ

悠也

悠也

今日は自分でカレーでも作るか

悠也

たまには自炊しないと桂子に怒られそうだしな笑

1時間後

悠也

悠也

悠也

できた!

悠也

悠也

あ、うまい

悠也

やっぱり桂子に教えてもらった、隠し味の味噌が効いてるわ

悠也

桂子にも食べさせてやりたいな

悠也

あの頃より腕が上がった、俺の料理の味を

悠也

悠也

戻りたいな……

悠也

あの日の

悠也

悠也

あの場所に

1年前

桂子

悠也

桂子

これから会える?

悠也

悠也

ごめん🙏
今日はこれから人と会う約束してるんだ

悠也

16時には終わると思うからその後なら空いてるんだけど

桂子

そっか
じゃあ16:30に海浜公園で会える?

悠也

うん、いいよ

桂子

ありがとう🙂
じゃあ、またあとで

悠也

はーい、あとでね

桂子

数時間後

悠也

あ、桂子!
お待たせ!

悠也

待った?

桂子

ううん
今来たところ

桂子

……急に呼び出してごめんね

夕陽に赤く照らされた 桂子の横顔はどこか儚げで

いつもと違う彼女の様子に 何だか胸騒ぎがした

悠也

いや、別に構わないけど

悠也

どうした?
何かあった?

桂子

うん……
今日は悠也に大事な話があって

悠也

何だよ笑
急に改まっちゃって

そう声を掛けると

桂子は、 何か迷いを断ち切るように

そっと瞳を閉じた

桂子

実はね

悠也

うん

桂子

私……悠也と会うのは、これで最後にしようと思うの

悠也

……え?

悠也

は?ちょっと待てよ

悠也

どういうこと?

桂子の言葉の意味が理解できず 俺は混乱していた

その間、桂子は黙ったまま

悠也

……別れる、ってこと?

口になんて 出したくなかった言葉を 絞り出す

でも、このときは

たとえ今の関係の肩書きが 崩れたとしても

友達として 彼女と接することはできると

そんな甘いことを考えていた

桂子

それもそうなんだけど、もう悠也とは会えないの

桂子

連絡も、とれない

悠也

なんで……

悠也

俺、気づかないうちに桂子を傷つけるようなこと何かした?

桂子

ちがうの!
悠也は悪くない

桂子

私が、悪いの

そう言って、彼女は俯く

悠也

何があったの?
教えてくれなきゃわからないよ

悠也

悩んでるなら話して?

悠也

一緒に考えれば解決できるかもしれないし、何か他の方法があるかもしれない

桂子

……詳しくは、話せない

悠也

どうして

桂子

……だめなの

桂子

もう、遅いの

じっと耳をすませていなければ 海風にさらわれて 消えてしまうほど

弱々しい小さな声で 桂子はそう言った

悠也

……もしかして、最近後をつけられてる男のこと?

桂子の肩が小さく跳ねたのを 俺は見逃さなかった

悠也

(図星、か)

悠也

俺が気づいてないとでも思った?

桂子

……

悠也

ストーカーなら警察に

桂子

ストーカーじゃないよ

悠也

どうしてそう言いきれるんだよ?
違うなら、どうして後をつけられてんの?

悠也

なぁ、教えてくれよ
桂子……

桂子

……ごめん

桂子

あなたを巻き込むわけにはいかない

桂子

だから、私のことは諦めて

まっすぐ俺を見据える 鋭い桂子の視線に 俺は一瞬怯んだ

桂子

最後に悠也に会えてよかった

桂子

……さようなら

悠也

桂子っ!待っ……

背を向けて歩き出す彼女に 手を伸ばしたが

その手が届くことはなかった

夕焼けに赤く包まれた街並みと だんだん遠くなってゆく 桂子の姿を

ただただ見送ることしか そのときの俺にはできなかった

その日の夜

悠也

(眠れない……)

とりあえずベッドに 入ってみたものの

桂子のことが気になって 一向に眠れない

悠也

やっぱりこのままじゃだめだよな

悠也

会ってくれるか分からないけど

悠也

桂子ともう一度話をしよう

また改めて話し合うことを 心に決め、 ひとまず考えることをやめて 眠りについた

数時間後

けたたましいサイレンの音と 鳴り止まないコール音で 目が覚めた

不在着信

不在着信

悠也

何時だ?

悠也

……まだ4時すぎたばっかじゃん

悠也

誰だよ、こんな時間に……って、陽斗からだ

陽斗は桂子の幼馴染みで 俺に桂子を紹介してくれた 親友だ

陽斗

通話終了

通話
00:00

悠也

ふぁ〜あ、もしもし〜

陽斗

出るのおせーよ!!

悠也

何なんだよ、朝早くから

陽斗

急いでこっち来い!

悠也

はい?
こっちってどっちだよ

陽斗

桂子ん家!
今、桂子の家が火事になってんだよ!

悠也

は?まじで?

陽斗

外見てみろよ
悠也の家からだと南の方か?

言われるがままカーテンを開けて外を見ると

悠也

……赤い

朝焼けとともに 真っ赤に燃え上がる炎と 立ちのぼる真っ黒な煙が 遠くに見えた

それが見えるのは たしかに桂子の家の方角だ

悠也

桂子は?
桂子は無事なのか?!

陽斗

陽斗

それが、さっきから連絡してるのに反応がないんだ

悠也

そんな……

陽斗

とりあえずお前も早く来い

悠也

わかった

悠也

通話終了

通話
04:09

スマホを片手に 部屋着のまま靴をつっかけて 俺は家を飛び出した

悠也

桂子!
お願いだ……
無事でいてくれ!

現場に向かう途中、 そう祈りながら 桂子に電話をかける

悠也

応答なし

応答なし

悠也

応答なし

応答なし

悠也

応答なし

応答なし

悠也

なんで……

悠也

なんで出ないんだっ……

悠也

応答なし

応答なし

悠也

応答なし

応答なし

悠也

やっぱり、出ない

気づけば 桂子の家の前まで来ていて

辺りは燃え盛る炎と煙、 消防士と多くの野次馬で 溢れ返っていた

悠也

桂子の家が……

悠也

燃えてる……

陽斗

おい、悠也!

悠也

陽斗

陽斗

桂子と連絡とれた?

悠也

……いや

陽斗

そうか

陽斗

俺も、桂子とおじさん、おばさんにも連絡してはいるんだけど

陽斗

……返事はない

悠也

……

陽斗

悠也、しっかりしろ
まだ桂子が家の中にいるかどうかわからないだろ

陽斗

スマホは置いたまま逃げたのかもしれない

悠也

そう、だよな

悠也

まだわからないよな

陽斗

とりあえず、今は無事を信じて待とう

悠也

あぁ

数時間後

火は消し止められ、 焼け跡から中年の男女 二人の遺体が発見された

陽斗

おじさん、
おばさんっ……

小さい頃から家同士で 仲の良かった陽斗は ショックを隠せない様子だった

警察も入り、調査が続いたが 桂子は見つからなかった

悠也

桂子は……生きているのか?

陽斗

まだ何ともいえないけど……そう願いたいな

日が昇り、野次馬たちはそれぞれの生活へと戻っていく

俺たちも一旦 その場を後にした

火事から数日が経った

桂子は見つからなかった

ただ、ニュースで 桂子の家が 多額の借金を抱えていたことが 明かされていた

警察は借金返済を苦とした 自殺と考えているようだ

悠也

(じゃあ、桂子の後をつけていたのはもしかして借金の取り立て屋だったのか……?)

悠也

(それにしても結局、桂子はどこに行ったんだ?)

いつの日からか、 やるせない気持ちを 既読のつかないトーク画面に 綴るようになっていた

悠也

どうして、俺に相談してくようれなかった?

悠也

なぁ、今どこで何してるんだよ

悠也

早く戻ってこいよ……

悠也

桂子

悠也

悠也

いつの間にか

悠也

桂子のトーク画面に独り言呟くようになってたな……

悠也

もう、あの日からちょうど1年か

あれからずっと

あの日の 夕焼けの街並みに消えた

桂子の姿を探している

巷では

あの火事で灰になったとか

借金取りに誘拐されたとか

神隠しじゃないかなんて

いろんな憶測が 飛び交っているけれど

悠也

明日も仕事がんばらなきゃな

悠也

桂子も体に気をつけてがんばれよ

今日も俺は

既読のつかない 桂子のトーク画面に

話しかける

悠也

おやすみ、桂子

いつかひょっこりと

桂子が戻ってきてくれるような 気がするから

がトークに参加しました。

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が退出しました。

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