俺は家に帰ってベッドに飛び込んだ。
ゾム
楽しいって、ええな。
そう呟いて、俺は眠りについた。
朝、俺は寝ていたベッドから起き上がった。
そのまま洗面所へ顔を洗いに向かった。
洗面所の鏡を見て、俺はこう呟いた。
ゾム
なんで泣いてるんや...?
ゾム
泣くことなんな無かった...よな?
夢?
怖い夢か?
俺に怖いもんなんか無い筈や。
...いや、ある。
俺は──
ゾム
「もしもし、エミさん?」
エーミール
「どうしましたか?」
エーミール
「こんな朝っぱらから」
ゾム
「起こしたんやったらごめんな」
ゾム
「ちょっとエミさんの声聞きたかってん」
エーミール
「大丈夫ですよ、丁度本を読んでいて暇でしたし」
ゾム
「ありがとうな」
ゾム
「...あんな」
ゾム
「俺...朝起きたら泣いててん」
エーミール
「ゾムさんが...?」
ゾム
「おん、理由はイマイチ分かってへんけどな」
ゾム
「俺、思うねん」
ゾム
「俺に怖いもんは無い、今までそう思ってた」
ゾム
「でも、こんな俺にも1つだけ怖いもんがあった」
エーミール
「はい...」
ゾム
「俺、現実が怖いんや」
エーミール
「現実が...?」
ゾム
「そ、現実が」
エーミール
「現実が怖いって、どういう事ですか?」
ゾム
「昨日話したやろ?」
ゾム
「人生つまらんって」
エーミール
「はい、話しましたね」
ゾム
「人生ってさ、色んなもん乗り越えて行くやろ?」
ゾム
「俺は、その人生の...」
ゾム
「現実って壁が乗り越えられへんねん」
エーミール
「現実の壁、ですか...」
ゾム
「おん、現実の壁は俺にとってつまらんくて悲しい」
エーミール
「???」
ゾム
「意味分からんよなw」
ゾム
「俺が言うてるんは...」
ゾム
「まぁ、辛いって事やな」
涙を流しながら黒い画面に向かってニカッと笑った。
エーミール
「...ゾムさん」
ゾム
「なんや?」
エーミール
「いつでも言って下さいね」
エーミール
「何でも相談に乗りますから」
エーミール
「だって、私は──」
ゾム
「相棒やからな!」
エーミール
「その通りです」
画面の先やけど、エミさんがちょっと笑ってんのが分かった。
良かったわ、こんな変な話してんのに笑ってくれて。
俺の為に笑ってくれてるんかな。
エーミール
──私は誰かの為に何かをし、その何かで未来へ活かす仕事をしたいと考えています。
昨日、エミさんが言うてた言葉が頭の中を過った。
ゾム
「エミさん、こんな朝っぱらからありがとうな」
エーミール
「いえ、ゾムさんのお役に立てるのなら」
ゾム
「じゃ、また今度」
エーミール
「はい、また今度」
電話を切り、ソファーに座った。
エミさんのあの言葉が、何回も頭を過る。
ゾム
誰かの為、かぁ...。