施設の裏には、**小さな“庭”**のような場所があった
砂利だらけで木もまばら、空は金網で囲まれ、監視員が常に見張っている
けれど、それでも――
わずかに空気を感じられるその場所だけが、“自由”と呼べる唯一の時間だった
柊 朔弥
、、、お空見えるね
奏多
ねぇ
奏多
お空遠いね
柊 朔弥
そうだね
柊 朔弥
空は逃げないけど、届かないなぁ
そう答えながら、空を見上げる
色のない空
灰色で、重く、冷たい
でも
上を向いているだけで涙が出るような、そんな優しい空だった
そうして、少しずつ“日常”はできあがっていった
労働、洗濯、掃除、食事、そしてわずかな休憩
同じ繰り返しでも――
繰り返すことで人は“慣れてしまう”
それが恐ろしかった
柊 朔弥
(ここで暮らすことに、俺は慣れていいのか……?)
奏多の寝顔を見ると、迷いは消える
(、、、生きる。こいつと生きる。それが、今の全てだ)
施設に連れてこられて、二ヶ月が過ぎようとしていた
柊 朔弥
(、、、生きる。こいつと生きる。それが、今の全てだ)
逃げ場のない現実の中で、2人は必死に“普通”を築こうとしていた
それが、いつまで続くかなんて知らないまま――