柏木 響
ね、ねぇ、凛くん_
糸師 凛
チッ、もう帰る。
柏木 響
え、何急に。
糸師 凛
うるせぇ。
柏木 響
…。
糸師 凛
あ?何黙ってんだ。
柏木 響
いや、なんか凛くんってさ…
柏木 響
だんだん語彙力幼くなるよね。
糸師 凛
今からお前をサッカーボール代わりにしてやる。
糸師 凛
それで練習だ。
柏木 響
誠に申し訳ございませんでした…。
糸師 凛
チッ…はぁ
そして、凛くんはサッカーボールを地に置き、蹴り始めた。
柏木 響
…練習しないんじゃなかったの?
糸師 凛
黙れ、必要ないとは言ったが、やらないとは言ってない。
糸師 凛
大体、帰ろうとしたらお前が煩いしな。
柏木 響
ごめんて…。
柏木 響
…ねぇ、また見てていい?
糸師 凛
…寝ても今度は起こさずに置いていくからな。
柏木 響
頑張る!
糸師 凛
…はぁ。
トットット…
柏木 響
(…凛くんのボールを蹴る音)
ザッザッザ…
柏木 響
(凛くんが砂の上を走る音)
公園には、まるで凛くんが中心になって演奏を しているかのように、
彼の動作一つ一つからなる副産物だけが響いた。
それが、なんだか心地よくて、
心を落ち着かせてくれる。 安心させてくれる。
柏木 響
(凛くんって、やっぱ凄いなぁ…。)
糸師 凛
…ふぅ
気付けば、辺りは暗闇の中で、
まるで、俺はその暗闇の中に閉じ込められているかのよう、
糸師 凛
(…んなわけねぇだろ。)
練習を終え、静かになった公園を見渡す。
糸師 凛
(あいつは…)
柏木 響
…、
糸師 凛
…やっぱ寝てんじゃねぇか。
まぁ、予想通りだった。 どうでもいい。
糸師 凛
(そう、どうでも…)
柏木 響
すぅ…すぅ…
糸師 凛
…はぁ
糸師 凛
(クソが…。)
1歩、また1歩とそいつに近付く。
糸師 凛
こいつは…何度俺を振り回せば気が済むんだ?
柏木 響
すぅ…すぅ…
糸師 凛
…。
糸師 凛
めんどくせぇな…。
糸師 凛
(ヒョイッ
半ば自分でも、何をしているのか分からなかった。
糸師 凛
暖かいな。
糸師 凛
…暖にはなるか。
もう随分暗くなった道を、荷物を抱えて歩く。
糸師 凛
(…重ぇ。)
糸師 凛
(早く帰りてぇ…。)
柏木 響
すぅ…すぅ…
糸師 凛
(…さっさと起きろよ、アホ。)
何故だか、叩き起こす気にはなれなかった。 マジでめんどくせぇ。
糸師 凛
(起きたら覚えてろカス…。)