あなたが何を忘れても

精神病棟に来て一週間が経った

変わったことと言えば寝つきが良くなっただけだ

変な声は相変わらず聞こえるし

自己嫌悪は終わらない

見舞いも当分禁止らしい

迷惑かけっぱなしじゃねぇか

リーダーがこんななっちまって

情けねぇ

メンバーにあんなことして

許されようなんて思ってんのか？

お前なんか誰も必要としない

誰もお前を愛さない

木偶の坊みたいな人間め

消えろ

馬鹿はお前や

迷惑やねん

兄貴がいると迷惑なの

みんなにあんなこと言って俺許さないから

あなたのせいでオーメンズにいにくい

もう辞めたいです

般若…

流石に俺でも庇えねぇ…認めろ

そう思ってた

はずなのに

元をと言えば俺のせいだ

何言ってんだよ

悪いのはお前だろ？

じゃあ認めろよ

ここの管理はあっちより厳重で

簡単に外出もできないし

踊るのも禁止

ペンやスマホも没収らしい

見たって、苦しくなるだけ

でも

俺の指は勝手にページを捲る

コンコン

看護師が渡したそれはノートだった

手に持っていたのは大量の手紙だった

看護師退出

般若さん！お大事にしてください！

帰ってくるのずっと待ってます！

今の俺は君らの知る「般若」じゃないよ

般若さんがどんな風になっても私の気持ちは変わりません！

一生かけて推し続けます！復帰待ってます！

その日はずっと手紙を読んでいた

何度も何度も繰り返し見た

でも

メンバーの手紙は怖くて開けられていない

どんなことを言われるかわからない

怖い

今日はよく眠れそうだ

メンバーのやつは後で、覚悟が決まったら読もう

終わりの見えないことなんてやり慣れたはず

また暴れるかもしれないのに？

そこは頑張るしかないじゃん

迷惑かける気か？

そうならないように治すんだよ

期待しない

しなくていい

次の日

俺は手紙を読まなかったことを後悔した

あんなことになっているなんて知らなかった