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はぁ……。

どうして、俺がこんな…

魔王

……はぁ。

魔王

すまん…勇者よ。

魔王

さっきの炎攻撃…熱かった、よな……。

魔王

…本当は君を、傷つけたくなかった、のに……。

いいんです。

魔王様も…さっきの攻撃、痛かったのでしょう?

本当にすみません…

魔王

いや、いいんだ。

魔王

君の想いは、充分伝わっているから…。

勇者こと俺は、戦闘系ゲームの世界に生きている。

隣でのんびりと お茶を啜っているのは、

ラスボスである、魔王様だ。

ああ見えて、彼は 気さくで、情に厚く

優しい心の持ち主だ。

俺が彼を心から 信頼できるのはきっと、

彼が誰よりも慈悲深い お方だからだろう。

彼はラスボスでありながら、 俺に向ける攻撃には

いつも優しさが籠っている。

このお方を滅ぼす事が happy endなのだとしたら、

それは絶対に間違っている。

反感を覚えながらも 管理人に逆らう事ができない

俺は、悔しくて唇を 強く噛んだ。

魔王様、本当にいつもいつもすみません…

魔王

こちらこそだよ……

魔王

はぁ…もうこの世界から抜け出してしまいたい…。

彼の思いがけぬ提案に、 俺はハッと息を呑む。

…っ!!

そ、それだ!!!

魔王

ん?それってどれだい!?

あぁ、すみませんw

魔王様!!!

…共に、この世界から抜け出しませんか?

魔王

…はっ!!!

魔王

なるほど、その手があったか!!

魔王

流石は勇者だ!!!

魔王

…勇者よ、私も抜け出したい。

魔王

共に…闘ってくれるか?

…勿論でございます!!

精一杯、俺も力を尽くします!!!

魔王

よし、そうと決まれば私も出来る限り協力…

ユーザーがアプリを 開きました

魔王と勇者を ステージへ転送します

魔王

くそっ!!!

うわあああぁぁぁぁぁぁ

魔王

す、すまない!!

魔王

また後で______

タッタラ〜ン♪

キランッ

もう何度目なんだ、 この効果音を聞くのは…。

この効果音が聞こえたら、 おのずと口が開いてしまう。

…俺は勇者だ!!

この森に住む魔王を、倒しに来た!!!

自分で勇者を名乗るなんて、 完全にナルシストだろ…

そんなことを考えながら、 ナルシストらしい

長ったらしい台詞を 言い終えた俺は、

森の奥へとずんずん 足を踏み入れた。

…とその時、

俺は進む方向を変え、 大きな崖へと歩み始める。

その瞬間、全てを悟った。

ユーザーの奴、俺を 崖から落とすつもりだ…。

なんでなんだよ…っ!!!

どうして俺は、自由に 生きられないんだ!!!

俺の抵抗も虚しく、数秒後には

俺は真っ逆さまに 何処かへ落ちていった…。

途端に目の前は真っ暗になり、

俺の上には、でかでかと 『ゲームオーバー』の文字が。

はぁ……やっと終わりか…

そう思った矢先、 ユーザーはまたもや

『やり直しますか?』に 『はい』と選択。

…あれから、俺は何度 死んだのだろう。

少なくとも、100回は 死んでいる。

そしてやっと、ユーザーは 『いいえ』を選択した。

魔王

…おかえり、勇者よ。

ただいまです……

魔王

随分とお疲れのようだな。

魔王

今お茶を淹れるから、そのソファーにでも腰掛けていてくれ。

ありがとう…ございます……。

今回は魔王様の出番は なかった。

まぁ、魔王様が 怪我をせずに済んだから、

俺としては良かったと 思っているが…。

出番がなかったということは 即ち、彼はあの場所に

ずっと居たということだ。

それはそれで、辛いだろうな…

勿論、俺の身体はボロボロだ。

魔王

…ところで…あの件なんだが。

魔王

一つだけ、抜け出す方法がある事が…分かった。

…!!

なんと!!!

どのような方法でしょうか?

魔王

…それはだな……

魔王

結論から言ってしまうと、我々は何もできない!!!

…え?

どういう…ことでしょうか?

魔王

答えは単純だった。

魔王

ユーザーの野郎が、このアプリをアンインストールすれば

魔王

いいらしい。

魔王

でもそれは、抜け出す…というよりかは

魔王

我々の存在ごと、この世界から掻き消されるらしいんだ。

魔王

つまりだな…

…つまり?

魔王

本当の意味で死ぬ時、我々の願いは叶う!!!

……それじゃあ意味がないじゃないですか!!!

魔王

だなw

笑っている場合じゃないですよ!!!

魔王

はは、すまんすまん!!

何か…死ぬ以外に方法はないんですか?

魔王

…ええと、だな……。

魔王

魔王

一つだけ、ある。

…二つじゃないですかーーーーー!!!

魔王

そのツッコミが欲しかったーーーーー!!!!

何言ってんですか!ww

勿体ぶらないで、教えてくださいよ!!!

魔王

ははは…っ!!はいはい、わかった。

魔王

…それは、だな。

魔王

魔王

…2次元の壁を越えること、だ。

…!?

2次元の…壁?

魔王

この世界の何処かにあるらしい。

魔王

この世界の壁という壁を登りまくり、登り切った時、

魔王

2次元という名の世界を超えて3次元に行けるらしい。

…なんと!!3次元……!!

行きたい…!!!!

けど、登りまくるとか面倒くさい…!!!

あーもう、どうすれば良いんだぁぁぁぁぁぁ

俺が悲しみを懸命に 嘆いていた時だった。

ガンっ!!!

鈍い音がこの2次元の 世界中に響き渡る。

魔王

……!!

魔王

……ぐ…っ!!

魔王

…っ、はぁ…はぁ…っ、

…魔王様!?

よく見ると、彼の身体には 黒みを帯びた、鮮やかな

赤い液体が、彼の身体を なぞって雫となり落ちてゆく。

俺が唇を噛んだのと同時に、 衝撃波が俺のいる場所まで

強く波打ってきて……

…ぐはぁ……っ!!!

…はぁ…っ、はぁ…っ、

突然、身体中に激痛が走る。

周りを見渡すと、俺と魔王様の 脚や腕、顔などが

全てが、ひび割れた ガラスのように

亀裂が…入っていた。

……!!

画面……が…、割れて…いる……?

魔王

魔王

…ユーザーの…野郎…、スマホ…を…投げや…がった…か……

魔王

くそ…っ、こんな…こと…で……

魔王

死ぬ、わけ…には……いか、ない……。

魔王

魔王

…いや、俺…は……死んで…も…構わない、だか…ら…

魔王

ゆう…しゃ…、お前…だけ、でも…

んなわけ…ない…で…しょう…っ…、

俺…は……、魔王…様…と…共に…闘う…っ、

先程…、そう…約束…し…たで…は…ありま…せん…、か……

魔王

……!!

魔王

魔王

…っ、うぅ……。

魔王

勇者…よ…お前…は…本当に……良い…奴、だな……。

魔王

俺は…、お前…みたい…な…奴…が…大…好き……だ…、

魔王

だ…か……ら…、

魔王

共…に……闘…おう……、

…勿論……です…、

…共…に……!!

息も絶え絶えに、二人して 友情を熱く語り合う。

そんな友情もこの世界では 粉々に砕けてしまう。

ユーザー様が、俺たちの 『死を願った』から。

…画面は真っ暗になった。

周りは、もう…何も見えない。

あぁ、そうか。

もうすぐ、俺たちは……

・・・ 終わるんだ。

本当の、意味で。

…そう思った瞬間、 魔王様との思い出が

走馬燈のように蘇ってくる。

彼と過ごした毎日。

魔王様の優しさ。

さっきまで交わしていた 何気ない会話____

その全てが、終わるんだ。

…死んだらどうなるのか、 とか。

…あの毎日が終わるのか、 とか。

そんなものは今更、何とも 思わなかった。

『悲しい』だとか。

『悔しい』だとか。

そんな感情は、全く無くて。

まるで、最初から死を 受け入れているようだった。

…その代わり、魔王様に 伝えられなかった言葉を

今更ながら、悔やんだ。

もっと、ありがとうって 言いたかった。

あなたに出会えて 良かったって、伝えたかった。

…もっと!!

…もっと…!!!

もっと…!!!!

もっと…!!!!!

共に、生きた かった……。

ゲームの世界ではなく、 現実の世界で……

魔王様と、出会いたかった。

俺は、勇者___

つまり、このゲームの世界での 主人公だった。

にも関わらず…

自由に、生きられなかった。

幸せに、なれなかった。

ユーザーに操られる 毎日なんて散々だった。

でも、今気づいたんだ。

俺は______

それ以上に、もっと この世界で生きたかったんだ。

『この世界から抜け出したい』

そんな願望は、最初から 叶っちゃだめだったんだ。

ゲームの世界は、全てが 『ユーザー様第一』の世界だ。

俺と魔王様は、ユーザー様が いなければ…本当は

ここには存在しない訳で。

そのユーザー様が俺たちの 死を願ったのならば____

…俺たちは逆らえないんだ。

ゲーム機、即ち スマホを壊そうが、

アプリをアンインストール しようが…。

ユーザー様の勝手だから。

所詮俺たちは、

籠の中の鳥でしか なかったんだな……。

もう遅いんだ。

全てが…遅すぎたんだ。

もっと早く、その事に 気づくことができたなら…

もっと、魔王様との時間を 楽しむことができたのかな。

なんて、何の役にも立たない 後悔だけが押し寄せてくる。

…いつか魔王様と、 現実の世界で出会えるように…

そう願いながら、俺は 消えてゆく身体を見下ろして、

全てを受け入れて、 瞳を閉じた______

この作品はいかがでしたか?

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コメント

15件

ユーザー

わわわわわ……!!! ゲームの世界でも主人公や登場人物達は生きてるんだもんね……。必要以上にアプリのアンストはしない方がいいね🙄💭

ユーザー

もう面白かった…… もうアプリをアンインストールできなくなりそう( இ﹏இ )

ユーザー

うわこれからゲーム出来ないわ(( 面白いね

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