魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
勇者こと俺は、戦闘系ゲームの世界に生きている。
隣でのんびりと お茶を啜っているのは、
ラスボスである、魔王様だ。
ああ見えて、彼は 気さくで、情に厚く
優しい心の持ち主だ。
俺が彼を心から 信頼できるのはきっと、
彼が誰よりも慈悲深い お方だからだろう。
彼はラスボスでありながら、 俺に向ける攻撃には
いつも優しさが籠っている。
このお方を滅ぼす事が happy endなのだとしたら、
それは絶対に間違っている。
反感を覚えながらも 管理人に逆らう事ができない
俺は、悔しくて唇を 強く噛んだ。
魔王
魔王
彼の思いがけぬ提案に、 俺はハッと息を呑む。
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
ユーザーがアプリを 開きました
魔王と勇者を ステージへ転送します
魔王
魔王
魔王
タッタラ〜ン♪
キランッ
もう何度目なんだ、 この効果音を聞くのは…。
この効果音が聞こえたら、 おのずと口が開いてしまう。
自分で勇者を名乗るなんて、 完全にナルシストだろ…
そんなことを考えながら、 ナルシストらしい
長ったらしい台詞を 言い終えた俺は、
森の奥へとずんずん 足を踏み入れた。
…とその時、
俺は進む方向を変え、 大きな崖へと歩み始める。
その瞬間、全てを悟った。
ユーザーの奴、俺を 崖から落とすつもりだ…。
なんでなんだよ…っ!!!
どうして俺は、自由に 生きられないんだ!!!
俺の抵抗も虚しく、数秒後には
俺は真っ逆さまに 何処かへ落ちていった…。
途端に目の前は真っ暗になり、
俺の上には、でかでかと 『ゲームオーバー』の文字が。
はぁ……やっと終わりか…
そう思った矢先、 ユーザーはまたもや
『やり直しますか?』に 『はい』と選択。
…あれから、俺は何度 死んだのだろう。
少なくとも、100回は 死んでいる。
そしてやっと、ユーザーは 『いいえ』を選択した。
魔王
魔王
魔王
今回は魔王様の出番は なかった。
まぁ、魔王様が 怪我をせずに済んだから、
俺としては良かったと 思っているが…。
出番がなかったということは 即ち、彼はあの場所に
ずっと居たということだ。
それはそれで、辛いだろうな…
勿論、俺の身体はボロボロだ。
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
俺が悲しみを懸命に 嘆いていた時だった。
ガンっ!!!
鈍い音がこの2次元の 世界中に響き渡る。
魔王
魔王
魔王
よく見ると、彼の身体には 黒みを帯びた、鮮やかな
赤い液体が、彼の身体を なぞって雫となり落ちてゆく。
俺が唇を噛んだのと同時に、 衝撃波が俺のいる場所まで
強く波打ってきて……
突然、身体中に激痛が走る。
周りを見渡すと、俺と魔王様の 脚や腕、顔などが
全てが、ひび割れた ガラスのように
亀裂が…入っていた。
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
魔王
息も絶え絶えに、二人して 友情を熱く語り合う。
そんな友情もこの世界では 粉々に砕けてしまう。
ユーザー様が、俺たちの 『死を願った』から。
…画面は真っ暗になった。
周りは、もう…何も見えない。
あぁ、そうか。
もうすぐ、俺たちは……
・・・ 終わるんだ。
本当の、意味で。
…そう思った瞬間、 魔王様との思い出が
走馬燈のように蘇ってくる。
彼と過ごした毎日。
魔王様の優しさ。
さっきまで交わしていた 何気ない会話____
その全てが、終わるんだ。
…死んだらどうなるのか、 とか。
…あの毎日が終わるのか、 とか。
そんなものは今更、何とも 思わなかった。
『悲しい』だとか。
『悔しい』だとか。
そんな感情は、全く無くて。
まるで、最初から死を 受け入れているようだった。
…その代わり、魔王様に 伝えられなかった言葉を
今更ながら、悔やんだ。
もっと、ありがとうって 言いたかった。
あなたに出会えて 良かったって、伝えたかった。
…もっと!!
…もっと…!!!
もっと…!!!!
もっと…!!!!!
共に、生きた かった……。
ゲームの世界ではなく、 現実の世界で……
魔王様と、出会いたかった。
俺は、勇者___
つまり、このゲームの世界での 主人公だった。
にも関わらず…
自由に、生きられなかった。
幸せに、なれなかった。
ユーザーに操られる 毎日なんて散々だった。
でも、今気づいたんだ。
俺は______
それ以上に、もっと この世界で生きたかったんだ。
『この世界から抜け出したい』
そんな願望は、最初から 叶っちゃだめだったんだ。
ゲームの世界は、全てが 『ユーザー様第一』の世界だ。
俺と魔王様は、ユーザー様が いなければ…本当は
ここには存在しない訳で。
そのユーザー様が俺たちの 死を願ったのならば____
…俺たちは逆らえないんだ。
ゲーム機、即ち スマホを壊そうが、
アプリをアンインストール しようが…。
ユーザー様の勝手だから。
所詮俺たちは、
籠の中の鳥でしか なかったんだな……。
もう遅いんだ。
全てが…遅すぎたんだ。
もっと早く、その事に 気づくことができたなら…
もっと、魔王様との時間を 楽しむことができたのかな。
なんて、何の役にも立たない 後悔だけが押し寄せてくる。
…いつか魔王様と、 現実の世界で出会えるように…
そう願いながら、俺は 消えてゆく身体を見下ろして、
全てを受け入れて、 瞳を閉じた______
コメント
15件
わわわわわ……!!! ゲームの世界でも主人公や登場人物達は生きてるんだもんね……。必要以上にアプリのアンストはしない方がいいね🙄💭
もう面白かった…… もうアプリをアンインストールできなくなりそう( இ﹏இ )
うわこれからゲーム出来ないわ(( 面白いね