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その日は、朝から空が眩しかった
夜のうちに降った雨がまだ地面に残っていて、湿った土の匂いと草の香りが強く漂っている
パン屋の娘
パン屋の娘
???
???
少女が手渡してくれた、まだ温かいパン
外はカリッと、中はふわふわ
その香りが、目覚めたばかりの青年の鼻腔をくすぐり、そっと広がった
昼には、広場でみんなと一緒に食事をとった
今日は、村の誰かが川で捕まえてきた魚を使ったスープ
パン屋の娘が「塩加減、どう?」と聞いてくる
青年はにっこりと笑って答えた
???
パン屋の娘
その言葉に少女は頬を赤く染めながら、照れたように目を伏せた
午後は、川のほとりで子どもたちと水切り遊びをした
子供
子供
???
???
???
子どもたちの笑い声が響き、青年もその輪の中で笑う
その笑い声が、心地よく響いて、青年にどこか懐かしさを感じさせた
陽が傾くと、家々の煙突からゆらゆらと煙が立ち上る
村は、ゆっくりと夜に向かっていく
???
???
子供
???
青年は手を振り、山へと向かう
見送る村人たちの顔が、夕陽に照らされて金色に輝いて見えた
その光景が、どこか優しく、心に残るように感じられた
陽が沈みかけた頃、青年は山道を下りていた
袋には、新たに掘った鉱石がいくつも詰まっている
クラフトに必要な、あれやこれや
村の皆が喜ぶ顔を思い浮かべ、自然と足取りも軽くなった
――だが、森を抜けた瞬間、足が止まった
???
村の空が、赤い
それは夕焼けではなかった
炎
火柱
黒煙
――焼ける木と肉の、甘い臭い
あの優しかった家々が、遊んだ広場が、すべて業火に呑まれていた
???
足が震える
呼吸が浅くなる
胸が締めつけられ、喉が詰まる
声も出ない
袋をその場に投げ捨て、村へと全力で駆けた
骨組みだけになった家々の間を、村人たちの名前を叫びながら走り回る
――誰か、生きていないか
どこかに、誰か……!
崩れた家の影で、ひとりの老婆を見つけた。
???
???
おばあちゃん
おばあちゃん
老婆の背には、深く矢が刺さっていた
地面に広がる赤は、もう止まらない
血は、止められない
???
おばあちゃん
そこで、老婆の声はかすれて、途切れた
呼びかけても返事はなかった
震える指が、老婆の手を握る
力なく、消えかけたあたたかさが伝わってきた