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燃え尽きた村を歩く
焼けた梁
黒く折れた影
横たわる人々
パン屋の娘がつけていた、赤いリボン
朝日に照らされ――
ただ煤けた布切れとして、風に揺れていた
???
無意識に追って、手を伸ばす
だが、届く直前で風がさらい、赤はひらりと逃げていった
胸の奥が、ひきちぎられるように痛む
その場に膝を、つけてしまった
泣き叫びたいのに、喉が焼けて、声が出ない
目の前にあるのは、もう、終わった世界だ
かつて笑顔が咲いていた場所
あたたかい匂いが漂っていた日々
思い出せるのに、もう二度と手に入らない
???
口に出した問いが、虚空に吸い込まれていく
足元に、焦げたぬいぐるみが転がっていた
誰かが愛したものだった
誰かに愛されたものだった
今、その“誰か”すら、もう、どこにもいない
涙が止まらなかった
何を言っても、もう届かないと知っているのに
心の奥で、何度も願った
???
でも、祈っても、誰も戻らない
わかってる
誰よりも、わかってる
それでも、この場所にとどまるわけにはいかなかった
???
背後から、羽音が迫ってきた
心が凍る
骨が鳴く
本能が叫ぶ
逃げろ
逃げろ
逃げろ逃げろ
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ
止まりかけた足が、また動き出す
焼けた大地を叩く足音が、いやに大きく響く
心臓が、獣のように暴れている
目の前は、煙と灰に満ち、また喉が焼ける
でも、走れ
止まるな
逃げなければ――
次は、自分だ
???
足元に、瓦礫
身体をひねって避けた
その瞬間、羽音が耳元で鳴った
息が止まる
全身が震え、視界がにじむ
でも、止まるな
今はただ――生きるんだ
前へ
前へ
前へ前へ
前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ前へ
ただ、それだけが
破壊された世界で、自分に残された、唯一の使命だった