テラーノベル
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教室の端っこ。窓側の席。
私は、今日もそこにいた。
特に目立つわけでもなく、誰かと話すわけでもなく、ただ授業を聞いて、ノートをとって、チャイムが鳴るのを待っている。
誰にも注目されずにいるのが、心地よかった。
いや_苦しくなかった、だけかもしれない。
赤 。
放課後、教室に一人で残っていた私に、声をかけてきたのは赤くんだった。
成績は常に上位。生徒会副会長。
女子にも男子にも好かれる、いわゆる"完璧な人"
そんな彼が、私の名前を知っているはずがなかった。
橙 。
赤 。
赤くんはにこりと笑った。その笑顔が、なんだか柔らかくて、胸がちくりとした。
私なんかに声をかける人なんていない。
誰かと話すこと自体、久しぶりだった。
赤 。
赤 。
橙 。
赤 。
一瞬、空気が止まった気がした。
だけど赤くんは、何食わぬ顔で続ける。
赤 。
赤 。
その言葉が胸に落ちた瞬間、私は赤くんのことを「優しい人」だと思った。
それが、すべての始まりだった。
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