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それから赤くんは、自然に、私の"日常"に入り込んできた。
朝、昇降口で会えば「おはよう」と笑い、授業中には何気なくプリントを回してくれる。
いつもと同じ日々の中に、ほんの少しの色が混ざったような、そんな感覚。
赤 。
ある日、帰り支度をしている時に、そう声をかけられた。
彼は私のノートを覗き込んで、感心したように頷いている。
橙 。
橙 。
赤 。
赤 。
"君らしい"。
誰にも興味を持たれたことがなかった私にとって、それは初めての「存在を見てもらえた」感覚だった。
それから、放課後に一緒に残って自習することが増えた。
私は黙々とノートをまとめ、赤くんは隣で問題集を解いている。
言葉は少ないけれど、不思議と居心地が悪くなかった。
赤 。
橙 。
赤 。
その一言で、心臓が跳ねた。
どうして? 私なんかに? でも、なんだろう。
赤くんのまっすぐな目を見ていると、断る理由が見つからなかった。
橙 。
私は、そう答えていた。