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少しの休息

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少しの休息

1 - 少しの休息

♥

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2024年01月11日

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んっ...ん〜...

ピピピピッ、と何度も鳴り続ける アラームをなんとか止め、時刻を スマホで確認する。

っ...!

“6:40”

「嘘だろ...」と思わず声を上げる。

なぜなら、俺が最初にかけた アラームは5:30で、 1時間以上鳴り続けていたのに 気づかなかったことになるからだ。

とりあえず先に弁当を作ろうと考え、 勢いよく立ち上がる。

っ...、

その瞬間、一気に視界が歪んだ。

ひどい眩暈と多少の吐き気も感じる。

急に立ち上がったからだろう、と 考えた俺は、少し座って 目を閉じてから、ゆっくりと 立ち上がった。

まだ症状はあったが、先ほどよりは 酷くなかったので、そのまま リビングへと向かった。

あ、兄ちゃんおはよ

紫ーくんおはよ...って

げっ...!

もしかして弁当作ってくれた...?

うん

兄ちゃん疲れてそうだったし

早起きしたから作ったよ

まじでごめん...

いいのいいの

たまには兄ちゃんも休まないと

いや俺は休みなんて...

だめです

そうやってす〜ぐ無理するんだから

はは...笑

そんな会話をしていると 紫ーくんの奥に黄色の髪が揺れた。

桃にい、紫にい、おはようございます

おは...

黄ちゃんおはよー!

起きてきてすぐで悪いんだけど青ちゃん起こしてきてくれる?

はい...

じゃあ俺は橙赤起こしてくる

いやっ...いいよ

俺が行ってくる

だって紫ーくんは...

はい、良いから良いから

そう言って紫ーくんは俺を ソファーへと誘導する。

転がって待ってて

う、うん...

なぜだろう。

全てを見抜かれている気がするのは。

...ま、いっか。

おはよ...

.............

ばななぁ...たべるぅ...

...笑

個性ありすぎだろ、といつもの ことながら突っ込みたくなる。

はい赤くん起きてっ

橙くんはご飯食べて

わかった青ちゃんはバナナでしょ

紫ーくんの忙しく動く姿を見て、 助けようと思うが、体が うまく動かない。

でも...なんとかして...

...ちゃん!

兄ちゃん!

ほぇ...?

「ほぇ...?」じゃないよっ!

風邪引いてんでしょ

ぇ...?

引いてないと思うけど...

兄ちゃん...笑

俺が何年兄ちゃんと一緒に過ごしてきてると思ってる...?笑

兄ちゃんが朝起きてこない時は大抵体調悪いから。

あとぼーっとしてるし

今日は休みね

いやっ...大丈夫だって...

俺が働かないと食べていけないし...

大丈夫だからっ!

俺だってもう大学生だよ?

バイトなんていくらでもできるし

貯金だってある

兄ちゃんが2日3日休んだって大丈夫だから

俺は兄ちゃんの体調の方が心配だよ

俺も

俺も〜

僕もです

ね、青ちゃん

ん?うん

でもなぁ...熱とかなさそうだし...

そういうことじゃないの!

てかまだ熱測ってないしっ!

とにかく!休みっ!

...はい、

俺は紫ーくんの圧に負けてとりあえず 首を縦に振ってしまった。

じゃ、みんな学校の準備して!

今日はとりあえず送るからっ!

赤/橙/黄/青

はーい

それぞれ準備に向かう弟たちを 眺めながら、俺はまた ソファーに倒れ込んだ。

...ん

目を覚ますと、食器を洗う 紫ーくんの姿が目に入った。

...あ、起きた

どんな感じ?

正直、吐き気もするしまだ 体調は優れないが、紫ーくんだけに 任せ続けるわけにもな...

ん〜...さっきよりは良いよ

じゃあ寝よっか

なんで?

兄ちゃんわかりやすすぎ

なんなら顔赤いし笑

そ、そんなことは...

あーりーまーすー

「すぐ無理すんだから...」などと ぶつぶつ呟きながら 体温計を持ってくる紫ーくん。

はい、計って

スマホ...持ってきて

なんで

...なんでも

とりあえず職場に連絡はしないと... なんてことは紫ーくんに 言えるはずもない。

なんで

......

まさかだけど...会社に遅れて行くとか言わないよね...?

、!

正直そう考えていたところもある...

なんでわかるんだ...

い、言わないよ

...ふ〜ん

疑うような冷たい視線を浴びる。

...す、スマホ取ってよっ、

はい

ありがと、

自分の部屋に戻ろうと ソファーから立ち上がる。

っ...、!

この目眩はなんなんだ...

自分の体調に悪態をつきながら 部屋へと戻った。

はぃ...すみません、

自分の体調管理不足です、

......はい、

お昼過ぎからでも...

よろしいですか、!

ありがとうございます...!

失礼します、

......ぁ、

電話を切ろうとすると 突然手に持っていた スマホを奪われた。

すみません、わたくし桃の弟なのですが

...えぇ、

兄の体調を考え、本日はお休みをいただいてもよろしいですか?

えっ

はい...はい、

...いや、体調のすぐれない人に会社に来いと言うのですか?

ちょっと、

あり得ないですよ、

この際言わせていただきますが、

最近の兄は酷くやつれているように感じます

帰りも遅いですし、

......えぇ、詳しい仕事のことはわかりません

ですが、環境が整っている職場なら残業があったとしても手分けをするなどといった配慮があるはずです

それがたとえ兄に与えられた仕事だったとしても

........、

......大変失礼なことは十分承知ですが、本日はお休みをいただきます

明日また何かあればご連絡いたしますので

はい、ありがとうございました

失礼致します

......ふぅ、

何やってんだよ、

それはこっちのセリフ

俺に嘘ついたでしょ

......それは、

はぁ...

兄ちゃん...

最近鏡見てる、?

鏡...

忙しくて見れてないな...

......ひどい隈にやつれた顔、

髪の毛もボサボサのまま出勤するような人を休ませないわけないでしょ、?

...っ、

休んでよ...

頑張りすぎなんだよ...

でも...っ、

俺が働かないと...っ、

みんなのことが...

あのさ、

俺だって大学生だよ、?

バイトもしてる、

いくらでも助けてあげられるんだよ、

...それなのに、っ

それを拒否してるのは兄ちゃんじゃん、

っ...!

稼いだお金を家に入れようとしても返されるし、っ

弁当だって自分で作るって言っても聞いてくれないし、

...協力させてよ、

大学に行かせてもらえてる時点で俺は十分幸せだよ、

もうこれ以上はいらないってくらい...幸せを感じてる、

母さんと父さんがいない分は...とっくに埋まってるよ、

...ありがとう、

っ......ポロポロ

ずっと頑張ってきた。

親がいなくなって、 みんなを育てないといけない、って

俺がその分を埋めなくちゃ、って

ずっとずっと、頑張ってきた。

寂しくないように。

辛くないように。

自分を捨ててでも、みんなを 守るために、必死に生きてきた。

今紫ーくんと話すこの瞬間まで、 もっと自分が頑張るべきだと、 そう思っていた。

でも...言われてみれば確かにそうだ。

気づけば、必死に育ててきた弟は 大学生になっていた。

一番下の青でも、来年は中学生。

少しくらい頼らせてもらっても 良い年齢になっている。

そして、その必死に育ててきた 弟たちは、今の生活に 幸せを感じてくれている。

弟のために生きてきた身として、 これほど嬉しいことはない。

こちらこそありがとう、ポロ

みんながいなかったら...俺生きてこれなかったかも、笑ポロ

え...?

みんなの笑顔に何度救われてきたことか、ポロ

苦しいことも辛いこともみんなのためなら頑張れた、ポロ

だけど...みんなには俺みたいな思いはさせたくなかった、ポロ

誰よりも幸せになってほしいって本気で思ってるから、笑ポロ

.......、

そうやって走り続けてきたからなのかな...笑ポロ

俺...ずっとみんなのこと子どもだと思ってた、笑ポロ

「頼っちゃいけない」って勝手に思ってた、ポロ

「稼いだお金は自分のために使ってもらいたい」

「大学に行ってほしい」

そんなのは...俺のエゴだったのかもね、笑ポロ

......頼りなくてごめん、

俺...みんなの兄でいれて幸せだよ、

兄ちゃん...

これからも...よろしく、

こちらこそ

...大好きだよ、

ふふ......笑

げほっ、!

紫ーくんの一言に安心したのか、 今まで溜め込んでいた咳やら何やらの 数々が止まらなくなった。

ごほっごほっ、!

はぁ、ふっ、げほっ、

ごめんごめん

無理させちゃったね

けほっ、ごほっごほっ、!

一旦横になろっかサスサス

すぐ近くにベッドがあって良かった。

こんな細身の紫ーくんに 俺の体は預けられない。

はぁ、はぁっ、

きもち、わるい...、

気持ち悪いね、

吐けそうだったらここに吐いていいからね

昔は看病する側だったのにな...、笑

それにしても気持ち悪い...

目眩が止まらない...

お”ぇ...

ああ...ダメだ、吐けない...

久しぶりというか あんまり吐かないから怖いんだよ...

吐けない...?

こくっ、

兄ちゃん...ごめん、

紫ーくんはそう言うと俺の胃の辺りに 拳を当て、思い切り押した。

んぐっ、!?

お”ぇぇ...っ、

う”っ...はぁっ、はぁ...

...治った、?

ん...だいぶ、

よかった、

今体温計持ってくるから

少し目瞑ってて?

ん、

大きくなったな...

兄ちゃん...俺こんな数字見たことないよ...、

んぇ、?

本当に今平気、?

無理してない?

まぁ...熱いなぁとは思うけど

寝てれば大丈夫、

俺...めちゃくちゃ心配なんだけど、

下にある解熱剤持ってきて、?

......、

紫ー...くん...?

やっぱり病院行こう、

俺、運転する

え、でも...

うん、母さんと父さんを事故で亡くしてから、免許を取る以外はずっと乗ってこなかったよ

...でも、兄ちゃんのためだから

紫ーくん...

行こう、

肩貸すから、

ごめん、

無事病院に辿り着き、 すぐに診察を受けた俺は、なんと 入院までする羽目になってしまった。

診断は過労で、栄養失調にも なりかけてるから、入院も選べると 言われたらしく、

俺は帰るって言ったのに、紫ーくんが 無理に休ませる環境を、って言って...

入院です...

どうしてこんなことに...

これくらいしないと休まないでしょ、

休むよ...

すーぐ嘘つくんだから、

む......

赤くんたち、もう来るってさ

いいよ来なくて...

と言いかけた瞬間、扉が開いた。

お邪魔しまーす

兄ちゃん大丈夫なん?

...心配したんですから、

“かろう”ってなに?

ふふ笑

まだ青は知らなくてもいいぞ〜笑ワシャワシャ

ふ〜ん

ほら、青ちゃん渡したいものあるんでしょ

あ、うん、!

えっとぉ...ばなな!

バナナ?笑笑

桃にいこれで元気になると思って

ありがとなニコ

へへ.../

てか、心配させないでよね

学校から走ってきたわ

本当ですよ...

家のことは、俺たちで何とかするから!

兄ちゃんは気にせず寝ててください

あと!

ご飯食べてください

はい...

俺は毎日来るし

みんなも代わりばんこで来るから

ありがとう、笑

では、おやすみなさい

おやすみー

じゃあなー

また来ますね

バナナ持ってくるね!

ん、じゃあなー、笑

ちょっくら 入院生活も楽しみますか、笑

弟たちのおかげで、俺は 少しの休息の幸せさえ忘れてたことに ようやく気づけた。

やっぱり俺にはみんなが 必要なんだな、って再確認する きっかけをくれた、

そんなみんなのことが、大好きだよ。

『少しの休息』

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コメント

2

ユーザー

ブクマ失礼します!

ユーザー

紫くんのポジが完全にお母さんで可愛い、w

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