TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

非望の悪魔と不望の天使

一覧ページ

「非望の悪魔と不望の天使」のメインビジュアル

非望の悪魔と不望の天使

3 - [2] “白い彼”の正体

♥

120

2023年10月23日

シェアするシェアする
報告する

あの出来事から数日が経った

あれ以来、あのまふまふは見ていない

そらる

(いや、別人に見えるだなんて、今考えると流石におかしいか……)

あいつはあいつなんだから、 俺が知らないことがあっても、 何もおかしくはない

ただ俺が、まふまふっていう人間の 側面を、まだ知らなかっただけだ

そらる

……俺の考えすぎだ

そう割り切って、 もう考えないようにした

なのに……

何となく陽を浴びたくなって、 散歩をしに外に出た帰り

マンションまで戻ってきて、 特に意味もなく建物を見上げた

流石都会のマンション。 近くで見ると、のけぞるほど 地上から最上階までが遠い

そらる

……?

そらる

(なんだ、あれ……)

最上階よりもさらに上。 恐らく屋上の柵の外に、何かがある ……いや、いるのが見えた

米粒ぐらいの大きさだけど、僅かに 動いているような感じがする

そらる

(……もし、あれが……人だったら……)

そらる

っ──!!

反射的に走り出して、 マンションの中に駆け込む

急いでエントランスを抜けて、 エレベーターに乗り込んで 最上階のボタンを押した

俺がさっき見たのが、本当に 人だとしたら、そのまま落ちて、 自殺とかするんじゃ……!

そらる

(もしそうなら、間に合ってくれ……!)

エレベーターが止まって、ドアが開く

ややフライング気味にそこから出て、 屋上に繋がってる階段を駆け上った

その先にある、ドアを開ける

すると、そこには──

そらる

はあっ、はあっ……!

そらる

……って、は……??

まふまふ

……あれ? そらるさん

ドアが開いた音で気がついたのか、 こちらを振り返った人物

そらる

まふまふ……?

下から見えていた人は、 まふまふだった

そらる

ちょっ、お前、何で、そんな所に……

安全対策の柵の外、建物の縁に、 顔面蒼白になっている俺とは打って 変わって、呑気そうに座っている相方

まふまふ

“何で”……。

まふまふ

ん〜、何となく気分を変えたかったからですかね

さらに呑気な答えが返って来た

まふまふ

……あれ、そらるさんが“散歩に行った理由”も“同じ”なんですね

続けて何か言ったようにも 見えたけど、距離が離れていて、 上手く聞き取ることができなかった

そらる

だからって、流石にそこは危ないだろ……!

ここは高層ビルも多くて、 いわゆるビル風がかなり強い

ただでさえ強い風に煽られて 手遅れになる前に、危険な場所に いるまふまふを、どうにかして 柵の内側に連れ戻したかった

まふまふ

意外と気持ちいいですよ。そらるさんも来ます?

俺の注意を無視して、こっちこっちと 笑いながら手招きされる

仕方なく近づくことにして、 一歩一歩、慎重に進んだ

そうして柵のすぐそばまで来て ……気づいたことが一つ

こいつ、裸足だ

屋上だからって、流石に サンダルぐらいは履いて来るはず

そらる

(何で、裸足のままここに……)

まふまふ

今日も“ソラ”は平和ですねぇ……

まふまふに釣られて俺も見上げると、 確かに雲一つない綺麗な青空だった

けど、空が“平和”?

何か言い回しに違和感を感じる

晴れている、というのを、 比喩でまふまふが“平和”と 表現しただけだろうか

そらる

……ってまふまふ、いい加減こっち戻ってこい。ほんとに死ぬぞ

そらる

(そうだ、俺はこいつを連れ戻しに来たんだよ)

自分で言いながら、 本来の目的を思い出す

さらに柵に近づいて、手を伸ばした

まふまふ

ボクなら大丈夫ですよ

そう言って笑ったまふまふ

そらる

……ぇ……?

……心なしかその眼が、 一瞬赤く光ったように見えた

そらる

(何だ、今の……?)

もう一度よく見ると、 ちゃんと普通の黒い目

流石に、俺の見間違い……だよな?

そらる

大丈夫じゃないだろ。落ちたらどうするんだよ

柵から少し身を乗り出して、伸ばした 手でまふまふの腕を掴もうとした

ビュウッ

……直後、一層強い風が、 俺の背後から吹きつけてくる

そらる

なっ……!?

不安定な体勢をしていたせいで、 その風でバランスを崩して、 俺の身体が宙に浮いて……

いつの間にか、柵の外側へ 放り出されていた

遥か下には、アスファルトの硬い地面

そらる

っ……?

今、視界の端に、黒い“誰か”が 映ったような──

そらる

……え、ちょっ……!

そらる

うわあああっ!?

そんなことを考える暇もなく、 一気に地面に叩き落とされ始める

そらる

(まさか俺、このまま死ぬ──!?)

???

ちょっ、バカかお前!!

ドサッ

そんな声がした直後、 背中と脚に衝撃が走る

そして気づくと、 空中で落下が止まっていた

そらる

はっ……!?

そらる

(今、何が起きたんだ……!?)

???

ったく何してんだよ、死ぬ気か!?

すぐ真上で声が聞こえて、 その方を見上げる

どうやら俺は、“ヒト”に空中で キャッチされていたらしい

そして、その“人”は、 白くて大きい翼が生えている──

──赤い眼をした、まふまふだった

そらる

は……? え、何で……?

さっきの恐怖も忘れて、 疑問符が頭を埋め尽くす

まふまふ?

……はぁ……。

まふまふ?

……戻るぞ

そう合図した後、強くその翼を 羽ばたかせて、さっきまでいた 屋上に戻ってきた

地面に降ろされて、 まふまふを振り返る

その姿は、翼は生えていなくても、 眼は赤いままだった

まふまふ?

はぁ……俺は大丈夫だっつってんのに……

首の後ろに右手を当てて、 面倒そうにそう言われる

……いつもと、明らかに態度が違う

それに、さっきの翼とこの眼って……

そらる

……お前……誰だ……?

やっとちゃんとした言葉が出て、 まふまふに問いかける

まふまふ?

……ざっくり言えば、俺は“まふまふ”のキャラの通りってとこか。

まふまふ?

まぁ、流石にあの変なバーコードは無いけどさ

キャラの通り……え、いつも、 天使がどうとかって言ってるやつ?

まふまふ?

質疑応答終わり? 俺もう帰るけど

そらる

帰るって、どこに……

まふまふ?

は? どこって、いつもの家だよ。そこ以外どっかあるとでも?

そらる

い、いや……

話の流れからして、てっきり天界とか 言うと思ったけど、違ったらしい

まふまふ?

それに、可愛い猫達がご主人様を待ってるし

じゃ、と言って、屋上から 飛び降りたまふまふ

そらる

(……は!? 飛び降りた!?)

そらる

ちょっ!?

慌てて柵から身を乗り出して、 遥か下の地面を見下ろす

そらる

(……って、どこにもいない……?)

まるであの路地裏の時と同じように、 まふまふの姿は一切見当たらなかった

さっきの翼と眼…… それに、あの発言……

そらる

な、何だったんだ……?

非望の悪魔と不望の天使

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

120

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚