ミク
出産祝い金、ください。
ナツメ
えっ?出産?妊娠してたの?
ミク
そうなんです。一カ月前に。
ナツメ
どういうこと?
ナツメ
妊娠したことも教えてくれなかったのに、
ナツメ
出産のお祝い?
ナツメ
私のことを馬鹿にしているの?
ミク
そんなことありません。
ナツメ
これまでずっと知らん顔して、
ナツメ
急に多額の祝い金が欲しいだなんて・・・
ナツメ
結婚してから、まったく連絡してこなかったでしょ?
ナツメ
欲しいものがある時だけ連絡してくるなんて、
ナツメ
失礼にもほどがあるわ!
ミク
連絡しなくてすいません。
ミク
ストレスを感じたくなかったので、ご連絡遅れました。
ナツメ
あなたは結婚の挨拶と、
ナツメ
式を盛大にしたいからと、2年前にお金を無心にきた時しか
ナツメ
会ってないわね。
ナツメ
私と会ったらストレスを感じるって、どういうこと?
ナツメ
姑は嫁いびりをするものだと決めつけているそうね?
ミク
そんなことありません。
ミク
それはお義母さんの誤解です。
ナツメ
あなたと結婚してから、あんなにマメに連絡していた
ナツメ
ヒロシまでまったく音信不通だわ。
ナツメ
あなたの悪影響ね。
ミク
ごめんなさい。夫のことは知らなかったです。
ナツメ
あなたは夫の実家をお財布ぐらいにしか思ってないの?
ナツメ
お金を無心する時だけ連絡してくるなんて、
ナツメ
呆れて物も言えないわ・・・
ナツメ
それに体調不良で会えないから、口座にお金を振り込めですって?
ナツメ
あなた、ふざけてるの?
ミク
けっして、そんなつもりはありません。
ミク
本当に体調不良で、出かけることもできないんです。
ナツメ
それなら、ヒロシに頼めばいいでしょ?
ナツメ
それもできないの?
ミク
夫は仕事で忙しいらしくて・・・
ナツメ
ヒロシが私やタカシと連絡を取ると、
ナツメ
あなた、不機嫌になるそうね?
ミク
そんな、嘘です。そんなこと・・・
ナツメ
うちにはよりつかなくても、
ナツメ
自分の実家にはしょっちゅう顔を出してるそうね?
ナツメ
私はあなたが思うように、あなたをいびったりなんてしてないでしょ?
ミク
そんな、お義母さんがわたしをいびるだなんて思ってもいません。
ナツメ
うちとは疎遠でいたいけど、お金は欲しいだなんて、
ナツメ
何てガメついんでしょうね!
ミク
酷いわ、お義母さん。誤解です・・・
ナツメ
つい最近次男が結婚したの。
ミク
それは、おめでとうございます。
ナツメ
授かり婚なので、式はあげずに入籍だけだったわ。
ナツメ
次男と次男嫁は、私とマメに交流してくれているの。
ナツメ
それで3年後に、次男夫婦に二人目の子供が産まれたわ。
ミク
おめでとうございます。
ナツメ
次男夫婦はマメに交流してくれてるのに、
ナツメ
あなたみたいにお金をせびったりしないわ。
ナツメ
結婚祝いだの、出産祝いだの、自分達からは言ってこないわ。
ミク
私はお金をせびるだなんてこと、考えてもいません。
ナツメ
長男夫婦と次男夫婦を比べたくないけど、比べてしまうわ。
ナツメ
音信不通の夫婦と、連絡をマメにくれる夫婦とどっちが好ましいと思う?
ナツメ
私だって人間だから、好ましい方に傾くわ。
ミク
そんな、お義母さん・・・
ナツメ
都合のいい時だけお義母さんと呼ばないで欲しいわね。
ナツメ
出産費用については、考えておくわ。
ミク
はい。よろしくお願いします。
~一カ月後~
ミク
お義母さん、お願い事があるんですが?
ナツメ
あなたが連絡してくるのは、お金を無心する時ね。
ナツメ
今度は何?
ミク
お義母さんがタカシさんに、家を譲ると聞きましたので・・・
ナツメ
それは二人目の子供が産まれて、家が手狭になるっていうから、
ナツメ
私の持ち家を譲ることにしたの。
ミク
でも、夫のヒロシが長男だから、家をもらう権利は
ミク
私達にあるんじゃないですか?
ナツメ
何を言ってるの?
ナツメ
音信不通の息子に、どうして家をあげなくちゃいけないの?
ナツメ
そっちのほうが不思議な話だわ。
ナツメ
もう、次男夫婦に家を譲ると決めているの!
ミク
私は納得いきません。家を譲っていただけないなら、
ミク
それ相応のものが欲しいんです。
ナツメ
何のことよ?
ミク
マイホームが欲しいので、資金提供してください。
ナツメ
随分と厚かましいお願いね。
ナツメ
そんなお願い、聞けるものじゃないわね。
ナツメ
ヒロシに連絡してくるように、言いなさい!
~翌日~
ヒロシ
ごめん。母さん。
ヒロシ
ミクが連絡したそうだね。
ナツメ
久しぶりね。一体どうしていたのかと思ったわ。
ナツメ
ミクさんと結婚してから、あなたは変わったわね。
ナツメ
あれだけマメに連絡をくれていたのに、
ナツメ
まったく連絡をくれなくなったわね。
ヒロシ
ごめん。母さん。
ヒロシ
ミクが母さんやタカシに連絡してると、いい顔をしないんだ。
ナツメ
あなたすっかりミクさんのいいなりね。
ナツメ
先日、私達に孫が産まれたから、
ナツメ
お宮参りに一緒に行きたいとお願いしたわよね?
ナツメ
あなた、それを断ったわね。
ヒロシ
ごめん。仕事が忙しくて。
ナツメ
私、見たのよ。
ナツメ
あなたがミクさんの家族とお宮参りしていたのを。
ナツメ
私、悔しくて涙が出たわ。
ヒロシ
ごめん。母さん。
ヒロシ
母さんの言うとおりにしたかったけど、
ヒロシ
ミクの家族に頼まれて、嫌だと言えなかったんだ。
ナツメ
はっきり言って、裏切られたという気持ちでいっぱいだったわ。
ナツメ
お父さんに、その話をしたら、
ナツメ
随分、怒っていたわ。
ナツメ
私もだけど、ショックをうけてたわよ。
ヒロシ
本当にごめん・・・
ナツメ
ところで、
ナツメ
また、ミクさんがお金の無心をしてきたわ。
ナツメ
マイホームを購入したいから、資金が欲しいだなんて、
ナツメ
そんなにミクさんの実家が大事なら、
ナツメ
そちらに頼んだほうがいいんじゃない?
ヒロシ
知らなかったんだ。ミクがそんなこと頼んでいたなんて。
ヒロシ
話を聞いて、驚いたよ。
ナツメ
ミクさんのせいだけじゃないでしょ。
ナツメ
ミクさんの夫はあなたなんだから、責任はあなたにあるわ!
ヒロシ
ごめん。母さん。ミクにはきちんと言っとくよ。
~一週間後~
ミク
お義母さん、お家を訪ねていってもいいですか?
ナツメ
どうしたの?急に?
ミク
私達の子が大きくなったところを、
ミク
是非お義母さんに見ていただこうかと思いまして・・・
ナツメ
何を今さら。
ナツメ
まったく音信不通だったから、
ナツメ
長男の子供はいないと思うことにしていたのよ。
ミク
そんな。ちゃんと見てください。
ミク
もう、大きくなってきて、
ミク
インターナショナルスクールに通わそうと思っています。
ナツメ
あら、そうなの。
ミク
それに、子供に自分の住む家を見てもらいたくて・・・
ナツメ
そのことなら、先日断ったわよね?
ナツメ
それとも、理解できなかったのかしら?
ナツメ
はっきり、次男に家を譲ると言ったわよね?
ナツメ
ヒロシとは話をしなかったの?
ミク
話はしましたわ。
ミク
それで、やっぱり家は長男が継ぐものだという話になりました。
ナツメ
私はそんな決まりはないと思うの。
ナツメ
それに、ヒロシはもう、生前贈与を受けているのよ。
ミク
へっ?
ミク
それはどういうことですか?
ナツメ
ヒロシが大学3年の時に、起業するから資金を貸して欲しいというので、
ナツメ
生前贈与として、家と同じくらいの額を渡したの。
ナツメ
弁護士を介した贈与契約書もあるわ。
ナツメ
既に渡してるのに盛大な結婚式やら、
ナツメ
多額の出産祝い金までヒロシにだけ渡せと言うのは、姑いびりなの?
ミク
えっ、そんな・・・
ミク
夫はそんな事、一言も言ってませんでしたわ・・・
ナツメ
タカシは挙式も挙げてないし、出産祝いも安価なベビーカーだけ。
ナツメ
お金は母さんの今後の人生に使ってほしいと言ってくれたの。
ナツメ
親といえど人間なので、心は動くわ。
ナツメ
そんなに家が欲しいなら、ご実家のご両親に頼んだら良いのでは?
ミク
うちの両親はあてにならないんです。
ナツメ
だからといって、音信不通の息子夫婦が家が欲しいなんて、
ナツメ
虫が良すぎるし、厚かましいのじゃなくて?
ミク
そんなことおっしゃらずに、困っている私たちを助けてください。
ミク
お義母さんの家を譲っていただけないなら、
ミク
資金援助をお願いします。
ミク
どうしても、マイホームが欲しいんです。
ナツメ
それなら、親のお金をあてにせずに、
ナツメ
ローンを掛けてでも買ったらどう?
ミク
そんな意地悪を言わないで下さい。
ミク
私たちはマイホームが欲しいので、資金提供してください。
ナツメ
まったく話にならないわね。
ナツメ
ヒロシとよく話し合いなさい!
ナツメ
ヒロシの起業は2回失敗していて、
ナツメ
今は、多額の借金を抱えているはずよ。
ナツメ
ヒロシから話は聞いていないの?
ミク
そんなこと、まったく知りませんでした。
ミク
夫は自分に借金があることなんて、
ミク
一言も言っていませんでした。
ナツメ
今聞いたんだから、資金提供はできないって、
ナツメ
分かったわよね。
ミク
そんな、冷たいこと言わないでください。
ミク
夫は昨年から工場勤めをしているんです。
ミク
仕事が上手くいってないみたいで、
ミク
年下の上司に怒鳴られているって、よく言ってるんです。
ミク
それを聞いているから、可哀そうになってきます。
ナツメ
だからどうだというの、
ナツメ
仕事なんだから、仕方ないでしょ。
ナツメ
それと資金提供は、まったく別の話じゃないの?
ミク
うちは賃貸ですから、マイホームがあれば生活は安定するし、
ミク
働く張り合いができると思うんです。
ナツメ
ところで、聞きたいことがあるんだけど、
ナツメ
あなたの実家は派手な生活で借金を抱えていて、
ナツメ
自宅も抵当に入っているそうね?
ミク
えっ?夫がそんなことを話したんですか?
ナツメ
ヒロシも焦っているようね。
ナツメ
あなたの実家はあてにならないからと、
ナツメ
泣きついてきたわよ。
ナツメ
資金提供は無理でも、まとまったお金を貸してほしい、
ナツメ
何年かかっても返すからですって。
ミク
夫はそんなことを言っていたんですね・・・
ナツメ
何年もかかって返済だなんて、
ナツメ
私たちももう年だから、間に合わずに死んでしまうわ・・・
ナツメ
それに、お金のことで煩わされるのは、
ナツメ
もう、嫌なのよ。
ナツメ
お父さんと相談したんだけど、絶縁させてもらうわ。
ミク
そんな・・・
ナツメ
私達は老後は静かに暮らしたいの。
ナツメ
あなた達の借金は、とてもじゃないけど
ナツメ
背負えないわ。
ナツメ
自分達のことは、自分達で解決してね。
~後日談~
ナツメ
ミクは子どもを良い学校に入れるには、まずは親の身なりからと、
ナツメ
ブランド品を買い漁っていた。
ナツメ
外見だけを装ったところで、息子をインターナショナルスクール
ナツメ
に通わすのは上手くいかなかったそうだ。
ナツメ
そうして、借金がふくらんで、
ナツメ
借金返済のために、夫婦共々朝から晩まで働いた。
ナツメ
ミクの両親の実家は、借金が払えず、
ナツメ
持ち家を手放すことになった。
ナツメ
ご両親はまるで夜逃げをするように、出て行ったそうで、
ナツメ
持ち家を売っても、まだ借金は残っているらしい。
ナツメ
派手な生活を悔いて、今では地味に生活しているようだ。
ナツメ
長男夫婦と同じで、朝から晩まで働いてるとのことだ。
ナツメ
5年後、長男夫婦の子どもは万引きの常習犯になっていた。
ナツメ
教育方針について毎日、ケンカが絶えない長男夫婦
ナツメ
次男夫婦との同居が決まったナツメは、孫2人と楽しく忙しい日々で、
ナツメ
孫2人と楽しく忙しい毎日だ。
ナツメ
長男夫婦のことは気になるが、お金の苦労をすることがなくなって、
ナツメ
スッキリとした生活過ごしている。。