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良秀が起きたのは、いつもより数時間早い早朝だった。
実際、外を眺めることのできる窓は取り付けられてはいないが、何となくそう感じた。
良秀
良秀は、思っていたよりも長く眠れないことに、苛立っていた。
芸術家は、脳内で多様な芸術を考える必要があるため、休養は特に重要となる。
とは言っても、二度寝しようとしても、中々眠れそうにないので、仕方なくベットから立ち上がる。
いつもの制服に着替え、背中の刀と腰の刀を携え、煙草に火をつける。
準備を終えたのち、扉を開け廊下に出る。
廊下。いつもとは違い、とても静かだ。
良秀
良秀は珍しく感心した。
いつも起きる時間帯は、様々な囚人が起きる、または起きている時間だ。
わざわざ、人とぶつからない様避けてあげたり、ぎゃあぎゃあ喚く瞬間を何もせずこなす事が、かなり鬱陶しかった。
たまには、早く起きるのも悪くない。たまには。
良秀
多分ファウストだろう。まあ、何考えてるか分からない奴だし。
丁度いい場所も見つからないまま、危険な廊下を散策していると、良秀は記憶の片隅にあったある事を思い出した。
良秀
娯楽スペースはないが、ここメフィストフェレスには実用的な空間がいくつか設けられている。
そのひとつが台所。大体囚人は外で何か買って腹を満たしているから、ほとんど使われてない。
良秀も使わないと考えていたが、今が今なので、気分転換がてら使ってみようという訳だ。
記憶を頼りに、道を辿ってみれば……。
良秀
よくある扉だが、その窓を覗けば、そこが台所だと分かる。
良秀
入ってみると、モダン風という中々ここと合わないデザインをしたキッチンだった。
広いだけのキッチンだけではなく、大人数用のテーブルと椅子が用意されていた。
良秀
良秀はそそくさと、台所へ向かう。
良秀
良秀
良秀
メフィストフェレスって改めて不思議な場所だ。どうやって外へ排気してるか、どうやって水道を通してるか分からないな。
最後に問題の冷蔵庫の中身だ。企業が用意してるから、入ってなければと上層部をく、へしてやる。
良秀
驚いた。近づくと、冷蔵庫のモニターが起動し、食品の写真が現れる。
そしてスクロールしてみれば、次々と新鮮そうな食物が現れる。見た感じ、都市全体の全てが詰まってる。(流石に人肉はなかった)
側面を見れば、様々の巣のシンボルが乗せられている。どうやら特異点の詰め合わせでもあるようだ。
良秀
他にも見て回ったが、器具も調味料も揃っている。(ナイフの研ぎ具合は、紙を切って確かめたが、抜群の切れ味だった)
これならいい感じの料理が作れる。
早速だ。エプロンと三角巾を着用して、とりあえず思いついた料理に使う食材を選択してみた。
ピピっと鳴ったので、開けてみたら写真通りの食材が出現した。
何か毒入ってそう、副作用ありそうという疑念も生まれるが、そうなったら後で時計を回してもらう。
良秀
完璧な和食だ。出身地にでも引っ張られただろうな。
ひとまず、必要な食材を用意できたので早速取り掛かろうか。
油が敷かれたフライパンに、切り身が乗り、じゅうじゅうと焼ける音が響く。
色が変わったら、ひっくり返し、再び焼く。
そうしたら、鮭を取り出し、皿に乗せる。
こうして、焼き鮭の出来上がりだ。
もしもの時に備えて、V社製の現状保存容器にしまっておこう。
さて、今煮込んでる煮物はどうなってるか……
鍋に確認しようとした瞬間。
良秀
扉から物音と、人の気配を察知した。
本当に小さな音だったが、良秀だからなせる事だろう。
そんな良秀の呼びかけに、最初に返したのは扉が開く乾いた音だった。
ヴェルギリウス
招かざる客の正体は、ヴェルギリウスとカロンだった。
良秀
良秀は客を確認した後、再び調理に集中しようとしたが。
何かドタバタと走る音が聞こえた。
カロン
良秀
突然近づいては、料理に触ろうとした、カロンに一喝する。
ヴェルギリウス
カロン
暴れるカロンにヴェルギリウスは、抱いて離した。
ヴェルギリウス
良秀
ヴェルギリウス
良秀
ヴェルギリウス
ヴェルギリウス
良秀
良秀
不服だが、良秀は使っているお玉とは別のお玉をヴェルギリウスに渡した。
ヴェルギリウス
良秀
良秀
ヴェルギリウス
良秀
カロン
ヴェルギリウス
ヴェルギリウスが、お玉で味噌汁をひとすくい。そして口に運ぶ。
良秀
ヴェルギリウス
ヴェルギリウス
キッチンペーパーで拭いた後、また掬って今度はカロンの口へ運ばれる。
カロン
その後も、カロンは何度も美味しそうに味わった。
良秀
カロン
ヴェルギリウス
カロン
ヴェルギリウス
カロン
どうやら何としてでも、食べたいみたいだ。
ヴェルギリウス
珍しくヴェルギリウスが良秀に頼んだ。
良秀
ヴェルギリウス
ヴェルギリウスは、最後に言葉を残して、良秀が何か言い出す前に扉から抜け出した。
良秀
とは言ったものの、カロンを追い出す理由もなかった。
とりあえず食材を取り出して、考えてみる。
良秀
効率を求めるため、呑み込みが早いカロンを手伝わせる事にした。
カロン
良秀
カロン
良秀
カロン
カロンは子供っぽいので、飴に釣られて結局雑用する事にした。
その後、カロンはしっかり手伝わせてもらった。
時々不安になるが、これと言ったミスはない。
カロン
良秀
カロン
こうやって無茶振りして任せてしまうが、それでもカロンは不満を晒しながら、台に乗って一生懸命に完璧に対応してくれる。
可愛い。母性が溢れしまう。
カロン
良秀
カロン
カロンは結構繊細な手つきで遂行してくれるし、しかも結構自立しているから、次の仕事をしてくれる。
正直、これほど助手として完璧ではないか?
14人分の料理は、次々と完成し、作るべき料理の数は半分まで切った。
ロージャ
またか。再び、外から声がする。
ロージャ
食べ物にがめついロージャが入ってきた。
あの時の良秀の料理を見たはずのロージャは、シェフが見えていないのか入って早々に呟いた。
カロン
ロージャ
声を聞いて、ロージャは顔を上げ、厨房にいるカロンを見た。
しかし、その隣にいる良秀を見た瞬間、急にロージャの顔が青ざめた。
ロージャ
良秀
ロージャ
良秀
ロージャ
良秀
ロージャ
言ってることはわからないが殺意は伝わる良秀の脅迫に臆して、ロージャは椅子から一歩も動かなくなった。
あの脅迫だが、実際しないだろう。血が料理に飛び散って不味くなるし、外観も悪くなる。
ダンテ
ロージャ
良秀
今度はダンテが訪れに来た。
ダンテ
ダンテ
そうだった。ダンテは唯一良秀の本物の料理を知っている。
ロージャ
ダンテ
そう言って、ダンテは椅子に座る。
良秀
ダンテ
良秀
ダンテ
ダンテもだんだんと良秀の冗談?になれてる気がする。
カロン
良秀
ダンテ
ダンテは慎んで、大人しく座った。
カロン
良秀
意外と思うだろう。カロンに指摘されても、文句を言わないその一面に。良秀が、何かを大切にしてる一面を。
ダンテは、親子でも見ているかのように、それを見て何だか微笑ましくなった。
ロージャ
ダンテ
良秀とカロンが切磋琢磨に料理を作る中、次々と匂いに釣られて囚人が押し寄せてくる。
イシュメール
次に来たのはいつも通りに起きたイシュメールだった。
ロージャ
イシュメール
結局負の信頼が消えたロージャがさあさあと、イシュメールを引っ張って、座らせる。
イシュメール
ロージャ
イシュメール
ダンテ
さっきのロージャの反応と同様、イシュメールも恐怖に近い感情を露わにした。
ロージャ
ダンテ
ロージャが持ち出した提案は、ムルソーを誘う事だ。
イシュメール
ロージャ
ダンテ
ロージャ
ダンテ
了承の返事をした後、早速立ちあがろうとした時。
ムルソー
ダンテ
何とムルソーが来たのだ!何で!?
ムルソーは何も言わず、空いている席に座る。
ロージャ
ムルソー
イシュメール
ダンテ
この人、毎日ここ来てるの?ちょっと怖いわ〜。
てか、強制してないのになんだかんだ行動してるのは、ある意味人間性があるのでは?
考えていると、次は何か切羽詰まった廊下を踏み鳴らす音が聞こえてくる。
ウーティス
イシュメール
全くもってその通りである。
良秀
ウーティス
ダンテ
ロージャ
ウーティス
ウーティスはダンテのなだめにより、落ち着き座った。
ウーティス
イシュメール
ダンテ
その後も、次々と囚人がなだれ込んでくる。
ファウスト
ダンテ
ファウスト
ドンキホーテ
グレゴール
ヒースクリフ
グレゴール
ロージャ
シンクレア
イシュメール
ウーティス
ダンテ
ホンル
グレゴール
ムルソー
ヒースクリフ
ファウスト
何で、どうしてもね。グレゴールが必ず非難の的になるかな。
シンクレア
そういえば、結構集まって来たがイサンだけ見当たらない。
グレゴール
ウーティス
ダンテ
どうするべきか考えていると。
廊下から、トタトタと歩く音が聞こえる。
ドンキホーテ
ムルソー
ウーティス
ムルソーの意味深な発言に、ウーティスが反応し問いかけようとする前に。
イサン
イサンが入ってきた。が、何か様子がおかしい。
イシュメール
イサン
シンクレア
やっぱり変だ。さっきから返答がない。
ホンル
ヒースクリフ
ここでヒースクリフが気がつく。
ダンテ
ヒースクリフ
………
!!!!???!!??!??!
グレゴール
ロージャ
ムルソー
ダンテ
ファウスト
ホンル
ヒースクリフ
ウーティス
ドンキホーテ
なんか一悶着あったが、結構叩き起こした。
食堂で騒ぎが落ち着いた後、厨房から良秀とカロンが料理をサービスワゴンに載せて運んできた。
カロン
良秀
ロージャ
遂に運ばれた料理に一同は喜んだ。
ロージャ
イシュメール
テーブルに次々と、焼き鮭、厚卵焼き、煮物、味噌汁、白米が人数分置かれる。
ホンル
ファウスト
グレゴール
ムルソー
ウーティス
ドンキホーテ
良秀
ヒースクリフ
ヴェルギリウス
突然ヴェルギリウスがやってきた。
ダンテ
ロージャ
ヴェルギリウス
シンクレア
カロン
ヴェルギリウス
そして人数分渡り合った後、良秀とカロンが席につく。
ロージャ
ヒースクリフ
2人が早速箸を持ち、食べ物を掴もうとしたが掴む事は叶わなかった。
良秀
ヒースクリフ
ロージャ
良秀が2人の手の甲を鞘で軽く叩いた。良秀にしては珍しく温情だろう。
良秀
ドンキホーテ
イサン
グレゴール
良秀にそんな一面があるのか……?と何人かの囚人は思った。
イシュメール
ダンテ
カロン
カロンの声の合図に、皆手を合わせる。
手と手を合わせて……
いただきます。
その後、良秀の料理を食べたが、しっかりと美味しかった。