蘇枋
蘇枋
桜
洒落た店内。ゆったりとしたクラッシックのような曲が、ただ静かに流れているこの場所で、俺たちは期限を設けた。
今までの思い出も全て投げ捨てようと、 そう決心を固めて。
蘇枋
蘇枋
蘇枋が、嫌という程晴れた真っ青の空を見上げながら、独り言のようにぽつりと言葉をはいた。
その言葉の意味は、一体どんな意味なのだろうか。自分たちの関係?学へ進むか就職するか?どんな悩みを込めて、この言葉を発したのだろうか。うんたら悩むより、さっさと話を聞こうと、桜は蘇枋の方へ顔を向けた。
桜
蘇枋
蘇枋
懐かしむように、蘇枋が目を細める。 ああ。そうだなと、桜も昔を思い出す。 風鈴に来る前は、耳を塞ぎたくなるような暴言、目にうつしたくないような、机に書かれた酷い文字。それが当たり前の毎日が、あの日、この場所に来てから全てが覆された。
てっぺん目指してここへ来て、思っていた場所とは違って、でもそれが心地よくて、何も分からず突っ走ってたのに、いつしか沢山の人間に支えられて、総代という大きな業を背負った。本当に、色々あった。
蘇枋の赤黒い髪が、風に揺れて綺麗にまう。 タッセルのピアスも耳に揺れ、 その美しい光景に目が離せなくなりそうだった。少しだけ頬が赤くなって、隠すように、蘇枋から顔を逸らした。
蘇枋
桜
昔からなんも変わらない関係。 級長と副級長。友人、相棒、 総代と四天王。 そんな関係も、学校の卒業と共に終わる。
蘇枋
桜
蘇枋
階段をかけのぼってくるような足音。 楡井の2人を呼ぶ声に、この会話は終わった。
風鈴を卒業して、社会人となった今でも、蘇枋や楡井、元風鈴メンバーとの交流はあった。成人になってからは酒を飲み交わし、近状報告や昔の思い出を話す。
そんな何気ない日々を送り続け、 急に蘇枋から個人メッセージが送られてきた。個人的にメッセージを送りあったのなんて、いつぶりだろうか。 卒業してすぐは、よく連絡を取り合って二人であったりしていた。でも仕事が忙しくなってからは、連絡する数も減っていた。
今月、空いてる日ってある?一緒にお茶でも飲もう 何か話したいことでもあるのかと、 とりあえず了承のメッセージを送った。
最近何かあったか。元気だったか。 そんな何気ない会話から入って、 少し緊張がほぐれたところで、 本題と言わんばかりに蘇枋が雰囲気を変えた。
蘇枋
桜
突然だった。蘇枋から出た言葉は、予想していた斜め上のことで、 もちろん桜からは抗議するような、困惑するような声が上がる。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
冗談だろ。そう言いたかったが、蘇枋の真剣な赤い隻眼をみて、言うのを辞めた。この顔は、冗談じゃないって、誰でもない、桜はよくわかっていたから。3年も一緒にいたんだ。隣になってたんだ。それくらい、嫌でも分かるようになる
桜
蘇枋
桜くんの拳はすごく重いから。 なんてこの場の空気を茶化すものだから、ほんとに1発殴ろうかと思った。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
コーヒーが置いてある机に、両腕の肘を置き、自身の手を組んだような状態で顎をおき、蘇枋は桜の確認も取らず、サクサクと話を進めた。蘇枋の心の中では、これが決定事項のようだった。きっとなにを言っても曲げないだろう。蘇枋も案外頑固だから。
蘇枋
桜
はぁ、と1つ、相手に聞こえるように大きなため息をつき、どうせ飲み会などではいやでも顔を合わせるだろう。そう踏んで、桜もしぶしぶ、蘇枋の提案を受け入れた。
蘇枋は更に前へ進もうとしている。自分の隣をあゆむのではなく、誰かほかの人の手を取ろうと歩み出している。そんな友人を、桜は笑顔で見送れるだろうか。
こんなアンナチュラルな感情と、決別できるだろうか。
蘇枋
蘇枋
最後。その言葉を形作るのは、紛れもない蘇枋の唇で、あの日、あの時、俺たちと一緒にいたいと言ったとの、この妬ましいほどよく回る口で、一体何が蘇枋の本心なのだろう。
桜
だらだら未練か続くよりかはずっとそれがいい。さっさと切り離してさっさと次へ行けばいいのに。自分には出来ないくせに、そう思ってしまった。
蘇枋
桜
本当に自分勝手なやつだ。桜はいつも、蘇枋に振り回されてばかりいる。1度落ち着こうと、自身のコーヒーに口をつけた。話し込んでいて少しぬるくなったコーヒーは、そんなに美味しくなかったかもしれない。
蘇枋
蘇枋
桜
軽々しく口にされただいすきに、反応しすぎではないかと思われるくらいに顔が暑く火照った。1年の時に比べたら、多少にましになったかと聞かれればそうでもなかった。 未だ褒められると照れるし、ムカつくと怒るしで、感情が顔に出やすいのは何年経っても直らなかったのだ。
ただ友人としてすきだと言われただけだと理解していても、好きだという単語だけで照れてしまうのだ。
蘇枋
桜
自分の左手で、顔をパタパタ仰いでみたが、一向に顔の熱が下がる気がしなかった。 少しからかうような声が上から降ってきて、睨みあげるが、動じることなく、あははごめんごめん。という軽い謝罪が帰ってきた。
蘇枋
蘇枋から手が差し出される。握手をしたい、ということだろう。この1ヶ月が終われば、この手は、いつも支えてくれた大きくて優しいこの手は、他の誰かのものになってしまうのだろう。
でもそれで良かった。それがいいと思った。こいつが将来、幸せに笑ってくれるなら。 自分の好きな人が、好きな人と笑いあっていてくれれば、それでいい。俺は喜んで隣を譲る。
上手く笑えたかは分からないが、自身の手より一回り大きな蘇枋の手を握った。
アンナチュラルな感情におさらばを
コメント
3件
新連載ありがとうございます✨ 今回は恋愛描写が一切なく、今までにはなかった感じのお話でとても面白そうです! これからどんなふうに進んでいくのか楽しみにしてます😊 話が変わりますが、『廻る世界で君と愛を育めたなら。』の考察があまり進んでおらず…😔 またこのことも話せたらなと思います! 寒い日が続きますが、どうぞ体にはお気をつけてお過ごしください🙂↕️ これからも応援してます💕

友人のすおさくがそろそろ前に進もうと、お互いに決別する話です。 長くなってしまうかもしれませんが、どうか温かく見守ってやってください🙇🏻♀️