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康平は しばらく黙っていた
製菓実習室の空気が さっきまでとは別物のように 張りつめている
康平
ぽつりと落ちた声は, 言い訳というより, 戸惑いに近かった
蓮音は顔を上げない。 上げてしまったら, 表情を見られてしまう。
蓮音
蓮音
蓮音
だからこそ,厄介だった。
康平は困ったように頭を掻く
康平
その問いは, 助けを求める形をしていた。
蓮音は,ぎゅっと唇を噛む。
蓮音
答えを持っているのは,自分だ でも,その答えを口にした瞬間, もう今までの関係には 戻れなくなる。
蓮音
………
康平は,待ってしまう。 踏み込まず,引かず, ただ近いまま。 その距離が,蓮音の神経を じわじわと削っていく。
蓮音
ようやく出た声は, 少し掠れていた。
蓮音
蓮音
康平は即答できなかった。 その一拍が,答えそのものだった。
康平
ゆっくりと言葉を選びながら
康平
悪意はない。 嘘もない。 ただ,無自覚だった。
蓮音の胸の奥で, 何かが静かに崩れた。
蓮音
微笑んだつもりだったが, きっと,うまくできていない
蓮音
蓮音
蓮音
蓮音
蓮音
康平が息をのむのが分かった
康平
止めようとしたのか, 続けさせたくなかったのか。 でも,もう止まらなかった。
蓮音
蓮音
蓮音
声が,少しだけ震える。
蓮音
蓮音
康平は,完全に黙り込んだ。
蓮音は,顔を上げる。
切れ長の目が, まっすぐ康平を捉える。
笑っていない。 逃げてもいない。
蓮音
蓮音
一歩,踏み出す。 ほんのわずか。 でも,決定的な一歩。
蓮音
康平の喉が、動いた。 何かを言おうとして, 言葉が見つからない。
蓮音はそれを見て,悟った。
蓮音
蓮音
でももう, 気づかせてしまった。
蓮音
蓮音はそう言って, 静かに身を引いた。 背を向ける直前, 一瞬だけ、振り返る。
蓮音
康平が,反射的に応じる。
康平
その声が, さっきよりも低く, 近く聞こえた。
蓮音
蓮音
蓮音
そう言い残して, 蓮音は実習室を出た。 康平だけが,取り残される。 胸の奥に残った, 理由の分からない ざわめきとともに。