テラーノベル
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キラキラとネオンが滲んで見えたのは、雪のせいじゃなかった。
ビルの隙間からこぼれる光に照らされながら 俺たちは黙って歩いていた。
年末の街はうるさいくらいに騒がしくて、でも俺たちの間には 不自然なくらい静寂があった。
ころん
ころんが無邪気に指差したのは電飾で飾られたツリーだった。 子どもみたいに目を輝かせる。
でもその横顔は、どこかでずっと寂しそうだった。
ころん
その言葉が思ってたよりも重たくて。 俺は笑うふりして空を見上げた。
ころんは気づいてない。 俺がもうとっくに壊れるくらいお前を愛してることを。
“愛してる”って言葉だけじゃ足りないくらい すべてを奪いたくなるほどに。
さとみ
ころん
さとみ
俺はころんの手を取った。 そのままネオンに照らされたベンチに座る。
人の目も気にしない。いや、気にしてないふりをした。
ころん
さとみ
ころん
ころんは、そんなことをぽつりと口にした。
さとみ
ころん
俺は一瞬、言葉に詰まった。 正直に言えば壊れる。黙っていれば遠ざかる。 そのどちらも嫌だった。
さとみ
俺がそう答えると、ころんは少しだけ笑って でも目をそらした。
嘘をついたときの癖。何度も見てきたやつ。
さとみ
ころん
さとみ
俺はころんの頬に触れて、引き戻すように真正面から見つめた。
さとみ
ころんが黙った。 ネオンが反射して少し頬が赤く見えたのは光のせいじゃない。
ころん
さとみ
俺はそっとその唇に触れた。 軽く、ほんの一瞬。 だけど心の奥まで届くような静かなキスだった。
ころん
ころんの言葉は、もう泣きそうなくらい震えてた。
さとみ
俺たちはその夜、黙って愛を確かめ合った。 髪を撫でて触れて抱きしめて。 名前のない関係でも心があった。
朝が来るのが怖くて、でも逃げなかった。 何度も何度も誓うように言葉の代わりに触れた。
最期のときが来ても忘れないように。 2人で刻んだ秘密のままで。
そして小さく――
さとみ
ころん
ネオンの街の片隅で、 世界で一番綺麗な嘘みたいな“本当”が生まれた夜だった。
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