『可愛い』

桃赤 たぶん短めです ご本人様とは一切の関係がございません 苦手な方は閲覧をお控えください

もうすっかり慣れてしまった可愛い服を着てため息を着く

今日はいつもより足取りが重い、大好きな彼と過ごせるはずなのに

いや、日に日に足取りが重くなっている、の方が正しいかもしれない

好きだと思う度に絶対に結ばれないという現実を知ってしまう

ねぇもういいー？

扉の向こうから聞こえる彼の声

体を重ねても抱きしめられても満たされない

それが愛情でないことを分かっているから

いつから自分はこんなに強欲になってしまったんだろうか

はじめはただ、一緒にいられればいいと思ってたのに

そもそもないくんじゃなくて、他の誰かで良かったはずだったのに

一緒にいるとどんどん彼の沼に沈められてぬけだせなくなるみたいで怖くなる

身なりを整えて鏡の前で問いかける

捨てられたくない

一緒にいたい

抱えきれない感情が、ぐちゃぐちゃになってどうしたらいいかわからないんだよ

これ以上考えているとおかしくなりそうで、さっさと彼を呼ぶことにした

そう言いながら抱きついてきた

彼からの『可愛い』はとびきり甘くて、でもりうらの胸を締め付ける麻薬みたいな言葉

抱きしめられると優しく香る彼の匂い、1番安心できて1番不安になる

だめだ、しっかりしなきゃ

そこまで言いかけて、声が出なくなる

ないくんの服をきゅっと握ってしまう

やだよ、ダメだよこんなことしちゃ

離れなきゃ、これ以上ここにいちゃだめだ

ないくんはそう呟いてりうらの頭を優しく撫でてくれる

どうしてそんなに優しくするの？

そんなのわかってる、ただ欲求を満たすだけなんだ 都合のいい関係なんだ

そうだ、そうだった

もう、やめてしまおうか

こうやってずっと埋まらないなにかを探して彼との関係に縋るのは

どうせ一緒にいてもいなくても辛いんだ

きっといつか捨てられるんだから以上辛くなる前にりうらから終わらせよう

まだ、今からならりうらはやり直せる

ないくん以外の幸せを見つければいいんだ

そういうとないくんは手を離して俺と向かい合ってくれる

顔をみると離れたくないって思っちゃいそうだったから下を向いたままで話す

今日で、お別れしよう