コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
放課後のチャイム
教室にはまだ絵の具の匂いがした
大森元貴
大森元貴
ニノさん
大森元貴が振り返る
ニノさんは何も言わず筆をさしだした
その指先が触れ合い、一瞬だけ世界が静まる
まだ"付き合ってる"なんて誰にも知られてなかった
昼間はただのクラスメイトで
放課後だけが2人の"時間"だった
ニノさん
大森元貴
冗談みたい言って、ニノさんは笑った
大森元貴も小さく笑い、顔を逸らした
誰かに見られたら終わり
でも、
離れたくなかった
雪が降り出す前の、静かな空気の中でーー
2人だけの秘密が
ゆっくりと始まっていた
大森元貴
大森元貴がそういう
ニノさん
ニノさん
雪、降ったら会お
大森元貴
ニノさん
大森元貴は少し笑って頷いた
その約束が
何気ない"合図"だったことを
あの時の2人は、まだ知らなかった
その日、雪は朝から降っていた
大森元貴
ですからここがここでーーーー
大森元貴
授業中も窓の外を見る度に、白い景色が少しずつ積もっていく
「雪、降ったら会おう」
ニノさんの声が、何度も頭に響く
ニノさん
クラス女子
廊下でクラスの女子とニノさんが喋ってるのを見た
だけど昼間はただのクラスメイト……
クラスメイトなのに…
"嫉妬"よりも先に"寂しさ"がきた
まるで自分の場所がだんだん消えていくような
僕は美術室へと向かう
扉を開け
そこには
誰もいなかった
大森元貴
僕は遅れてるんだろうっと筆を1本片手に持った
ガラガラ
すると立ってたのはニノさんだ
ニノさん
彼は謝る
大森元貴
ニノさん
ニノさん
ニノさん
ニノさん
彼はそう答えた
だけど僕は
大森元貴
良くない
進路について話している
もうすぐニノさんは卒業するんだ
こんな後輩でごめんなさい
そう僕は思いつつニノさんは僕の隣に座ってきた
2人の間に、静かな空気が広がる
雪は、まだ降り続けていた
その白さが、まるで記憶を覆い隠すみたいに
2人の世界を、少しずつ遠ざけていった
僕はスマホの画面を眺める
さみしいっと打ちたかった
だけど僕は"おやすみ"っと書き
そのまま眠りについた
卒業が近づいてきた2月頃
ダンボールの中に入っているキャンパス
ガラガラ
ドアの開く音が響き
入ってきたのはニノさんだった
けれど、
前みたいに名前を呼ばれることなんて
なかった
大森元貴
ニノさん
大森元貴
大森元貴
ニノさん
そうつぶやくあなた
大森元貴
声が震える
大森元貴
ニノさん
ニノさんがなにか言おうとした時
おーい!大森ー!早く持ってこいよ!
その言葉で遮られた
大森元貴は立ち上がり
大森元貴
ニノさん
そのまま扉を開き
背中がゆっくり消えていった
ニノさん
ニノさんはその姿を見つめていた
元貴が書いた絵を見つめ
なぜが涙が溢れていた
卒業し1年が立つ
雪が振り積もっていた
大森元貴
扉が開く
その目の前にはニノさんの姿が見えていた
大森元貴
ニノさん
雪、降ったら会おうって!!笑
冬、君を隠した。
END