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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

莉子

ねえ!

莉子

誰か居ないの!?

頭が痛い。 キンキンとうるさい音が響いて、 視界がぼやけてぐらつく

ここはトンネル?

みんなはどこ?

私…肝試しにみんなと来て… それから…?

莉子

そこから先は…
どうなったっけ……?

視線を落とし、腕時計を見る。 何かの拍子に壊れたのか ガラスは割れ、短針は1時過ぎを指している

草も木も、虫も眠る丑三つの刻。 音ですら死んでいるこの場所にいると 不安と孤独で狂いそうになる

莉子

誰もいない。。。

莉子

まずはここから出なきゃ。

なんでっ…!!

なんで??!!

莉子

出られない…!嫌っ…

トンネルと外界の境界を体が跨いだかと 思うと、次の瞬間には トンネルの真ん中に戻っている

走って、出て、戻される。 走って、出て、戻される。 それを幾度となく繰り返す

莉子

なんで…?こわい…怖いよ…!

何度トンネルの真ん中に来ただろうか。 数えるのも嫌になるほど

莉子

さむい…

壁にもたれかかって、座り込む 気温のせいか、汗も息切れも していなかった

莉子

(走ってたら少しずつ
思い出してきた…)

真夏の盆の日に、私と友達数人で 有名な心霊スポットのトンネルに来たんだ

歩いてたらトンネルの灯りが急に消えて 真っ暗になってみんなの悲鳴が聞こえた それでみんなパニックになって…

思い出そうとすると頭痛が酷くなる…

ここはI県某市の心霊スポット。 昔トンネル建設よりはるか昔、 この峠には大規模な集落が あったとされていた。

だが一夜にして村民全員が自ら峠に 身を投げ、それ以降この地は呪われた場所として知られるようになった。

トンネル建設以降も、その呪いは 健在とされ未だに曰く付きとして 有名な場所となっているのだ

莉子

家に帰りたい…

莉子

こんな所来なきゃ良かった…
無理にでも止めてれば………

莉子がこのトンネルから出られなくなってから、どれほどの時間が経ったろうか。 1日、いや1ヶ月、はたまた半年?

このトンネルには何故か 朝が来ることは無い。 静寂と闇の中、気が狂いそうになるのを 必死で耐えるのも限界に達していた

ガヤガヤ

人の……こ…声……?? 人…!?

トンネルの入口に誰かいる!

莉子

あの…!私!

莉子

ここから出られなくてっ…!

莉子

ずっとここに居たの…!

莉子

助けてッ!

思わず涙があふれだす

遠めから人だかりが見える。 生きている人。 がむしゃらに走った。 助けがようやく来たと、安心して顔をくしゃくしゃにしながら

莉子

あの…わ、わたし
私ずっと1人でここにいて…

莉子

助けっ…
たすけてくださいぃ…!

マサシ

すげえな、雰囲気あるな、ここ

莉子

あの、たすけ…

莉子

ねえなんで無視するの…?

目の前に立っているのに、 何も無いかのように素通りしていく

莉子

ていうか私…

莉子の前を素通りした というよりも、莉子を通り抜けていった 莉子の身体を貫通して

莉子

私の話も聞こえてないし
私を通り抜けた…

ユミ

でさ、このトンネルで

おもいだした

ユミ

昔肝試しに来たグループが全員死んでたんだよ。

ユミ

そのグループの遺体ね、
脳みそが地面に散らばってたらしいんだ。
今もその女の霊が
さまよってるんだって。

トンネルが真っ暗闇になったあと…

私死んだんだ。

暗闇の中から白い顔が見えて

そいつに顔を触られた。

そのせいで頭がクラクラして痛くて 意識が遠のいて

そのままトンネルでみんな死んだんだ。

莉子

私がこのトンネルに未練が
あったから

莉子

私ずっと出られなかった
……の?

莉子

いくら走っても
疲れなかったのも

莉子

全部…

莉子

う…うぅ……

莉子

ずっとここに居なきゃ…
いけないの…?

莉子

なんで私だけ…

莉子

……

コイツラヲ ナカマニシタラ サビシクナイ?

ヒトリハサビシイヨ クルシイヨ

莉子

!?

ユミ

きゃあっ!?

電気が消えた。

あの時と…私が死んだ時とおなじ…

白い顔の幽霊

フフフ…

白い顔の幽霊は不気味な笑みをして、 こちらに手招きしてきた

一緒に呪い殺せって言ってるのかな。

頭にかすみがかかったようになって 何も考えることが出来ない フラフラと、白い幽霊の方に歩いていく

ナカマヲ…フヤス…。

欠けたピースが埋まるように 忘れていたことを思い出す

この記憶は…

私がまだ生きてた時の…?

ゆか

ねえ、莉子が変!

真っ暗闇で何も見えないのに

真っ先に襲われた私を トンネルの外まで出してくれたんだ

みんなはアイツにトンネルの中まで 引きずり込まれて

莉子

私が消えて無くなってないのは
皆が助けてくれたから…

莉子

私が白い幽霊の仲間に
なって無いのは
みんなが助けてくれたから
………?

気付けば白い幽霊に体当たりしていた

私はもう助からない…でも。 それでもこの人達を助けたい!

莉子

誰があんたの
仲間になんか…!
ふざけないで…!

ユミ

電気が消えっ…
ライトも付かない…
どういう事…!?

「早く逃げて!」

真っ暗なトンネルの中に 莉子の声が反響する

ユミ

え…女の子…?

「今すぐにここから逃げて!」

ユミ

はぁっ…!
トンネルの外に来れば…!
平気かな…?

タケル

急に停電して………
なんだったんだ…?

マサシ

多分、暗闇でユミが
手引っ張って
逃げてくれなかったら
俺達やばかったかも…

ユミ

私見たんだ。
白い化け物みたいなのが
私に近付いてきた時

ユミ

女の人が
助けてくれたんだよ。
で、
「逃げて!」…って。

ユミ

多分……あの子は…

肝試しに来た集団が帰っていき 白い悪霊もいつの間にか消えた トンネルには明かりが戻って来ていた

莉子はトンネルの真ん中でへたり込む

莉子

無我夢中で
「消えろ!消えろ!」
って押さえつけてたら

莉子

なんか消せちゃった…

莉子

これであいつ…除霊…?
できたのかなぁ?

莉子

まぁ、いっか…

莉子

あの人達は…救えたし

ありがとう

皆が助けてくれたこと

思い出せなきゃ…そのまま… あの人達を

トンネルの外が明るくなっている

莉子

夜明け…!

今まで目にする事が出来なかった陽の光

悪霊が居なくなったことで、 莉子が囚われの身から開放されたのか、 それは分からないが 何かが、変わった事には間違いない

日に照らされ、明るく染っていく 外の景色に、思わずため息を漏らす

決めた。私まだしばらくここに残ろう。

まだここに来る人を…守りたいし それに…

莉子

もうひとりじゃないって
分かったし…ね

莉子

見えないけど…
何となく…感じるし

彼らをこの目に見ることが出来なくても

胸の内に温かいものを感じる それだけで十分だ

莉子

あ〜…涙脆くてダメだな
私ったら…

莉子

久しぶりの朝だし、
少し散歩でもするか!

莉子はゆっくりと立ち上がり トンネルの外へと飛び出した

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