刑務所物語

雨栗さんの腕に乗る鳩は クルッポーと鳴いて足にくくりつけた手紙を差し出す

ネコおじは地図の右上を指す ここは刑務所から比較的近い位置だ

コンコンコン

コンコンコン

そんな小さな声がした

返事が聞こえて僕はすぐにドアを開けた 妹が、いるかもしれないから

開けると1人の綺麗な女性がいた

おらこに似ている人だった

その後ろには色々な年齢の子供から大人までたくさん

女性は、みんなを守るかのように手を広げながら小さく問いかけてきた

その女性がおらこ、と呼ばれているのを聞いて僕はいてもたってもいられなかった

涙が溢れるのを何とか堪えながら僕は駆け寄った

おらこに、自分の名前を呼んでもらえて 耐えきれなくなって涙が溢れた

能力という言葉を出すと とたんにみんな震え出した

攫われた時のことが、記憶を消されてもトラウマとして残ってしまっているのかも…

おらこは震えていたけど 芯のある綺麗な目をしていた

地面に崩れ込むようにして座り込むみんな

記憶が昔のものだから、もっと辛いのかもしれない

ネコおじさんは嬉しそうだった

そこから長く話をした

おんりーの今のこと

おんりーの思い

そして、おらこ達の状況

話せる範囲、全てを話した

おらこは手で口を覆って目を見開いていた

おらこがサーチを使うと 何かが、水が波を作るように広がっていく気配がした

一方その頃

ベイルは怪訝な顔をする

そうだよ その顔が見たかったんだ

意味がわからないと言っているかのような真っ青な顔…

可能であればすべて殺してしまいたかった

だけど、あの子が言ってくれた言葉が人殺しになることを止めてくれている

俺の目的のためには 万能とアブソルは使えない

あっちからかかってこないと ダメだなぁ

逃げずにわざと当たる

何回も、何回も

ほら、これなら"仕掛けたカメラに"ベイルが無抵抗の人間に殴りかかっているように見えるだろう

これはウソ 正直痛い 苦しみながら死ぬことにはなりたくないなぁ

でも、今頃ネコおじが "あの子達"を保護してるだろう

みんなの笑顔が、家族が守られるなら俺はいいや

おらふくんに、ごめんねって あやまり…たかったな…

あぁ、みんなに

さいごくら、い

ありがとう、っていいたかった

ベイル、君の

まけだよ

朦朧とする意識の中で 俺はみんなに謝った

みんな、ごめんね

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