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第二十八話 たった一人で戦い続けた水
Nakamuは焼き尽くされた森を彷徨い
先生を追うかきんときを追うかの 二択を迫られていた
Nakamu
Nakamu
Nakamu
Nakamu
Nakamu
Nakamuは拠点を移動させず 森を中心にきんときを捜索した
森が焼けつくされた事で 近くの町にも行きやすくなり
Nakamuはそこで情報を収集した
しかしきんときらしき人物は いつまで経っても見つけられなかった
Nakamu
Nakamu
Nakamu
Nakamuは不安に駆られて ぶんぶんと頭を振る
Nakamu
Nakamu
Nakamu
きんときを探し続けて数日後――
Nakamuはようやく 一人で旅立つ決意を固めた
先生の移動速度はとてつもなく早い
それもそのはず 彼は魔法を使って移動している
なんなら瞬間移動までできるのだ
後手にまわればまず追いつける事はない
Nakamuは魔力が多い地方を 目指して旅を続けた
魔力がある場所に必ず先生は訪れる
毎日一人で夜を明かし
毎日最低限の食事を一人で貪り
毎日一人で歩き続けた
辿り着いた先はもうすでに魔力もなく
先生が一度訪れて 立ち去った事を表していた
落胆して
Nakamuはまた次の土地を 目指して歩き出した
そうして何日、何週間 何ヵ月経っただろうか――
Nakamuはぼさぼさの頭で
何もない草原が広がる地面に 寝転がっていた
Nakamu
Nakamu
Nakamu
Nakamu
本来なら今頃きんときと二人で 先生を見つけ出して
一発殴ってやっていたはずだった
今からでも遅くないから 魔力を戻せと説得して
みんなで魔法学校に帰れるはずだった
大好きな両親がいる家にも 戻れるはずだった
また学校でみんなと学んで 遊べるはずだった
Nakamu
Nakamuは地面を 力いっぱい殴った
痛いのは自分の拳だけだ
ぼろぼろと涙が零れる
鼻を鳴らしながら Nakamuはゆるゆると体を起こす
Nakamu
Nakamu
なんでいないの
なんでいなくなったの、きんとき――
Nakamuはその場に蹲って 泣き喚いた
傍には誰もいない
彼を慰めるものも
何もない
それはどこまでもどこまでも――
孤独だった
涙が枯れ―― Nakamuはゆるく立ち上がった
Nakamu
Nakamu
ふらふらと歩きだす
もう目的も宛ても何もなかった
ただもう 先生に会えればなんでもよかった
Nakamu
Nakamu
子供のように呟きながら Nakamuは彷徨った
気付いたとき―― Nakamuは地下に幽閉されていた
Nakamu
両腕は頭上で縛られ じゃらりと鎖につながれていた
ぼんやりとした虚ろな目で 状況を把握しようにも、頭が回らない
Nakamu
枯れた声でよく聞き取れない音を鳴らす
Nakamuはそこから抜け出すこともできず ただただ時間が過ぎるのを待っていた
ギィィ――……
耳に新しい音が入ってきて Nakamuはゆっくりと顔を上げた
そこには人間が何人かいたが Nakamuにはよくわからなかった
Nakamu
枯れた声で先生を呼び続ける
もうどうして 先生を求めているのかもわからない
どうしてこうなってしまったのかも 何もわからない
Nakamuは鎖から解放され よくわからない場所へ運ばれた
綺麗な黒い台座に寝かされ、囲まれた
霞む視界に誰か―― 恐らく人間が何人かいるのがわかる
でもそんな事はもうどうでもよかった
Nakamu
魔法はなんでも願いを叶えてくれる 奇跡の存在だ
両親がそれを使っているのが
とても誇らしくて とても羨ましかった
いつか自分もそんな魔法使いになって
誰かの願いを叶えられる存在になるのだ と夢を持った
魔法学校に入ったNakamuは その頂点に立つ存在に強く憧れた
在学中は一度も話なんて できなかったけれど
戦争のせいで ようやく繋がりを持てた時にはもう
彼に落胆していた
そんな彼を殴ってやろうと 息巻いて出た旅で
Nakamuは倒れ伏していた
願いを叶えてくれる魔法使い――
そんな存在は、結局いなかったのだ
Nakamu
Nakamu
こんなににも苦しんでいるのに
こんなににも求めているのに
こんなににも――願っているのに
Nakamu
Nakamu
あの紫の目をした魔法使いが――
願いを叶えてくれない 魔法使いなんて――――
Nakamuは悪魔を 召喚するための生贄として
その身を捧げられた
彼の命が失われた瞬間 その魔法は奇跡を起こす――
Nakamuによって考案され
スマイルによってかけられたその魔法は
きりやんによって守られた魂を その場にあった器へと定着させた
その結果――
Nakamuの命によって 召喚された悪魔は
Nakamuとして目覚めた
――Broooockと出会うまで 何の目的もなく生きていた
悪魔として召喚されて 生前の記憶を失ったNakamuは
よくわからない奴らに 何かしてほしいとお願いはされたものの
その願いを叶えてやる義理はなかった為
彼らは放置して この世界を見るために飛び回った
何をすればいいのか
何がしたいのか
何のためにそこにいるのか
Nakamuは何もわからないまま 世界を漂い続けていた
人間に扮して町を歩きまわり
おいしいものを食べて たまに人間と賭博なんかしたりして
楽しかったけれど
この心にぽっかりと空いた穴が 埋まる事はなかった
そんな時に訪れたのが
Broooockがいる占いの館だった
狐の面をした店主が Nakamuを出迎える
占いの館らしくテーブルには 水晶が置いてあって、雰囲気が出ていた
Nakamu
店主
店主
店主
店主
店主
Nakamu
Nakamu
だが店主の言う通り Nakamuは彼と話すのが楽しかった
だから毎日のように占いの館に通った
彼が人間ではないことは知っていた
同族かもしれない―― 程度の感覚だった
ある日――町に雨が降った
Nakamu
Nakamu
傘も雨着も用意するのが 面倒だったNakamuは
宿に引きこもった
室内でごろごろと過ごしながら
Nakamu
なんて呟いて窓の外を見やる
その時に、はじめて雨音に耳を傾けた
脳裏に過る様々な音と色
それは悲しくも美しいものを Nakamuに魅せた
翌日、雨が止んでBroooockの元に 訪れたNakamuは
雨が嫌いだけど 雨音が聞きたいと話をした
Broooock
Nakamu
Nakamu
Broooock
Nakamu
Broooock
Nakamu
ざわっ――
心が波立った
Nakamuの心に何故か不快感が募る
初めて聞く単語なのに
どうしてこんなにも 不快になるのだろうか――?
Broooock
Broooock
Broooock
Nakamuは顔を上げると 目を輝かせた
Nakamu
Broooock
Nakamu
願いを叶えてくれる、魔法使い
何故だろうか―― Nakamuはそれに、強く憧れた
Nakamu
Broooockは笑顔で頷くと すぐに雨を降らせてくれた
館の外から鳴り響いてくる雨音に Nakamuは耳を傾ける
Nakamu
それは確かに 願いを叶えてくれたのに
どうしてこんなににも酷く苦しく 切なくなるのだろうか
コメント
2件
なんとなーく想像はついてたけど…それよりもっと壮大で悲しくて好き…