テラーノベル
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ぬ
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夜になると、月の裏側から手紙が届くという噂があった。
宛名はいつも同じ。
『まだ、大切なものを忘れていない人へ』
僕はそんな話を信じていなかった。
だって、忘れたものなんてないと思っていたから。
ある日、郵便受けの中に一枚の古い封筒が入っていた。
差出人は―― 僕。
震える手で中を見る。
そこには短い文章だけが書かれていた。
『もし未来の僕が、何も感じなくなっていたら思い出して』
『あの日、泣いた理由を』
僕は首を傾げた。
そんな日、あっただろうか。
でも、なぜか涙が出た。
理由は分からない。
ただ、胸の奥のどこかが「やっと届いた」と言っていた。
翌日、僕は昔住んでいた町へ向かった。
そこには小さな公園があった。
そして、一本の大きな木。
木の根元には、子どもの頃の僕が埋めた箱があった。
中には、古い写真。
知らない男の子と写った僕。
裏にはこう書かれていた。
思い出した。
忘れていたんじゃない。
忘れなければ前に進めなかっただけだった。
月は今日も、何も言わずに夜を照らしている。
でもたまに、裏側から誰かの想いを届けてくれる。
コメント
1件
ぬさん、お疲れさまです、あおいです🤍 「忘れていたんじゃない、忘れなければ前に進めなかっただけ」――この一文に、胸を掴まれました。自分宛ての手紙から始まる謎、過去の自分が埋めた箱の伏線の回収がとても綺麗で、そっと涙がこぼれそうになりました。月の裏側から届く想いという設定もロマンチックで、静かな余韻が残る素敵な1話でした。続きがすごく気になります🌙