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森口裕樹

それにしても
本当に久し振りだな!

岸田健太

あぁ、一年振りだっけ?

森口裕樹

そうだよ!
俺達ようやく社会人!

岸田健太

就活キツかったなぁ

森口裕樹

お互い無事に就職
おめでとう!

岸田健太

おめでとう!

森口裕樹

俺達も長い付き合いだよな

岸田健太

小学校からだもんな…
長いなぁ

森口裕樹

最近…同級生に
会ったりした?

岸田健太

いや、会ってないな…

岸田健太

お前は?

森口裕樹

前に林田と飲んだよ

岸田健太

マジかよ!
あいつ元気?

森口裕樹

元気!元気!
相変わらずだった

岸田健太

何だよ!呼べよなぁ

森口裕樹

就活中だったから
忙しいと思って

森口裕樹

あ!そう言えば!
林田に聞いたんだ

岸田健太

何を?

森口裕樹

山口って覚えてる?

岸田健太

…山口?

森口裕樹

小学校の同級生でさ

森口裕樹

何回か同じクラスだった…
ほら、メガネで大人しい

岸田健太

岸田健太

少し変わった奴?

森口裕樹

そうそう!

森口裕樹

いつも寝不足で
授業中に寝てたり!

岸田健太

山口君…か

森口裕樹

自殺したらしい

岸田健太

え?

森口裕樹

山口の実家って
マンションだったろ?

森口裕樹

自分の部屋から
飛び降りたって噂

岸田健太

森口裕樹

そんなに仲良く無いけど
ショックだよなぁ

岸田健太

あのさ…

森口裕樹

ん?

岸田健太

俺、ガキの頃…

岸田健太

一度だけ山口君の家に

岸田健太

泊まりに行った事が
あるんだ…

森口裕樹

へぇ!…初耳!

岸田健太

うん…

岸田健太

誰にも言えなかった…

森口裕樹

…なんで?

岸田健太

岸田健太

…あれは

岸田健太

小学四年生…
だったと思う

山口君はいつも上の空で

授業中も寝ているし

クラスでは浮いた存在だった

そんなある日の放課後…

クラスメイト

山口ぃ
何でいつも寝てるの?

山口進

山口進

だって…夜は
寝るの遅くなる

クラスメイト

何で?

山口進

山口進

綱引き…するから

岸田健太

夜に綱引き?

クラスメイト

変なの!嘘つき!

山口進

先生

こら!皆、やめなさい!

岸田健太

先生…

先生

…そういう病気もあるのよ

クラスメイト

病気?

先生

そう…寝ちゃう病気

先生

皆で山口君を
助けてあげてね?

山口進

先生

岸田君は
保健係りよね?

岸田健太

え?…はい

先生

山口君を家まで
送ってあげてくれる?

岸田健太

…え

先生

いいよね?

岸田健太

岸田健太

…はい

たまたま「保健係り」だった俺は

先生の言いつけで

山口君を家まで 送る事になった

あまり 会話をした事が無い俺達は

最初は終始無言だった…

でも

山口進

…嘘つきだと思う?

岸田健太

え?

山口進

岸田君も僕の事…
嘘つきだと思う?

岸田健太

岸田健太

分からない

山口進

そっか…

山口進

山口進

僕の家…
ゲームが沢山あるんだ

岸田健太

ゲーム?

山口進

最新作の
ドラゴンムーンとか

岸田健太

え!やりたい!

山口進

いいよ!
家に帰ったら
一緒にやろうよ!

岸田健太

やった!

山口君は意外と

普通の奴だった

それから

一旦、家に帰った俺は

山口君の家に行って

一緒にゲームをした

山口君の母

クッキー焼いたから
ほら、食べて?

岸田健太

いただきます!

山口君の母

進が友達を
連れて来るなんて嬉しい

山口進

母さん、恥ずかしいよ

岸田健太

あははっ

山口君の母親は 本当に嬉しそうだった

友達のいない息子の事が 心配だったのだと思う

山口君の母

健太君…
明日は土曜日だし

山口君の母

良かったら…今日は
うちに泊まらない?

岸田健太

え?

山口進

岸田君と
お泊まり会したい!

岸田健太

…うん!

山口君の母

良かった!

山口君の母

一緒に健太君のママに
お電話しましょう?

山口君の母

お泊まり会をする
報告をしなきゃね

岸田健太

はーい!

滅多にない 「お泊まり会」

子供だった俺は ワクワクした

それから風呂に入って

山口君の父親が 仕事から帰ってきたので

一緒にご飯を食べた

山口君の父親

進が友達を
連れて来るなんて…

山口君の母

嬉しいわよね?

山口君の父親

あぁ!嬉しいな!

山口進

もう!
恥ずかしいってば!

山口君の父親

ははは!

山口君の一家は明るくて

幸せを絵に描いたような 家族だった

山口君の母

健太君!美味しい?

岸田健太

うん!

岸田健太

オムライス美味しい!

山口君の母

良かったわぁ!

山口君の母

山口君の母

所で進…

山口進

何?

山口君の母

今日は健太君と
リビングで寝たら?

山口君の母

ここなら広いし

山口進

嫌だよ!
僕の部屋で寝る!

山口君の母

山口君の父親

岸田健太

…っ

山口君の言葉の後…

山口君の母親と父親は

一瞬、俺の顔を見た

その顔は無表情で

背筋がゾクっとしたのを 覚えている

そして

山口君の部屋で

山口君はベッドに… 俺は敷いて貰った布団で寝た

そのうちに…

山口君が急にベッドから 起き上がった

時計を見たら深夜二時

岸田健太

どうしたの?トイレ?

山口進

ううん…

山口進

また来たんだ

岸田健太

来た?

そう言うと山口君は

窓を開けて

何かを引っ張る動作をした

窓の先は

静まり返った夜

そんな闇に向かって

山口君は

何かを引っ張っていた

その顔は

歯を食いしばり

目を見開き眉を寄せた

鬼の形相

山口進

ひぃ…ひぃ…

岸田健太

山口君は 変な息を出しながら

苦しそうに空を引っ張る

そんな異様な姿に

俺は固まって

声を掛ける事が出来なかった

でも…不思議なんだよ

山口君の身体がさ

何かに 引っ張られるみたいに

ズルズルって…

窓の外に 引き寄せられて行くんだ

それを必死に 食い止めるみたいに

山口君の顔が どんどん赤くなって

山口進

ひっ…ひっ…!

呼吸も更に荒くなって…

引っ張る仕草 引っ張られる仕草

本当に綱引きみたいだった

どのくらいの時間が経ったか…

山口君の身体がグッと 引っ張られて

窓から 身体の半分が出たんだ

このままでは落ちる

俺は咄嗟に

岸田健太

山口君っ!!!

山口進

ぁっ…!

山口君の身体を掴んで 部屋の中に引いた

驚いたよ

山口君は確かに 何かに引っ張られていた

そんな力だった

俺が山口君を 部屋に引いた瞬間

その力が抜けて

山口君と俺は尻餅をついた

終わった…

ようやく終わったと 安心した

山口進

今日も勝った

岸田健太

…や、山口君…

岸田健太

さっきの…何?

山口進

だから綱引きだよ

山口進

毎晩、誘われるんだぁ

岸田健太

毎晩?誘われる?

山口進

あれ?
聞こえなかった?

山口進

「綱引きしよう」って
窓の外から

岸田健太

山口進

さぁ、寝よう?

山口進

僕…眠いや

岸田健太

その日は怖くて
眠れなかったよ

岸田健太

山口君はすぐに
寝てたけどね

岸田健太

でも

岸田健太

それから俺は
山口君が怖くなって

岸田健太

話すのを止めたんだ

森口裕樹

おいおい…
その話がマジなら

岸田健太

山口君…

岸田健太

綱引きに負けたのかもな

森口裕樹

その綱引きって
不思議だな…

森口裕樹

山口にしか見えない
綱があったのか…?

岸田健太

実は…

岸田健太

まだ言ってない
事がある…

森口裕樹

え?何だよ

岸田健太

山口君が寝る間際に
呟いた言葉…

岸田健太

岸田健太

「綱引きだけど」

岸田健太

「綱じゃなくて」

岸田健太

「女の人の腕なんだ」

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