テラーノベル
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鳥が飛べなくなったら落ちるように、翼を折られた天使も落ちるしかないのだ。 私はそう覚悟して、目を瞑った。
雑に投げた財布が血溜まりの中へ落ちて、びちゃんと音が鳴る。血溜まりから水のように血が飛び散る。
お金がいくらあろうと、私には意味なんてないのに。買える人間もいるけれど、それらは大抵口に合わない。
人肉は独特のクセがあるが、一度食べたらやみつきになってしまい、ほとんどの人が離れることができない食材である。
昔はカニバリズムも禁忌だったが、吸血鬼や妖怪のために禁忌ではなくなった。そういう種族のために、食人は合法になってしまった。
路地裏に立ち込める湿った生ゴミのような臭い。腐ったものの臭いは過半数の人間が好まないだろう。
私は生きるために人肉を食べた。本来私の主食は人肉ではない。
けれど、元の食生活に戻ろうとしても戻れない。一回でも食人をすると戻れなくなる。
そこで、人肉を食べた人は納得するのだ。「大昔カニバリズムは禁忌であった」と。
灰色の霧が奥から押し寄せてくる。
ここ"出雲"は、街中に不定期に霧が蔓延する。有毒なわけではないが、かといって長く晒されていると身体によくない。
そう踵を返そうとしたとき、近くから子供の泣き声のようなものが聞こえた。
少女がゴミ溜めに囲まれて泣いていた。
少女──それは、十にも満たない幼い子供のようだった。
よく見ると、その少女は天使の羽と天使の輪っかがあり、コスプレじゃなければどうやら本物の天使のようだ。
少女は未だに泣いている。泣きわめくこと以外何も知らないかのように、泣くことを止めない。その姿はさながら赤ん坊である。
どうすれば泣き止むのだろう。ああ、うるさい。うるさいなぁ!
少女は泣き止んだ。ただ静寂が訪れる。
少女は舌っ足らずにそう発言する。 やはり子供だ。見た目よりもっと幼い。本当に赤ん坊だというのだろうか。
名前を決めたところで別に問題はない。あったとてどうせ使わないのだから。
少女はまた泣き出しそうになる。
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