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ゆっくりと瞳を開くと、そこには数名の職員と樹奈と咲がいた。
樹奈は自分の胸元を触った。 血の跡もない。 黒ずくめの集団の姿もなく、 これは死んだ後なのかでさえも わからなかった。
ゆっくりと誰かが動いた。咲だった。
樹奈
咲
咲
咲は床に倒れている人達を見て
咲
樹奈
咲は目の前で死んでいく人を見ていた 何故か最後は咲だった。だから、このホールにいる人達を見た咲はすぐにわかった。
次々と起き上がる職員
三浦
長瀬
山岸
安岡
北島
中野
能戸
佐々木
杉山
各々、周囲を見渡した後、
えええええ?!
一斉に驚きの声で溢れかえった。 それは当然だろう。撃たれた人達が皆目の前に居るのだから。
三浦
佐々木
他の全員が自分もと名乗り出る。
北島
北島が大きく首を傾げる。 他の全員も顔を見合せた。
三浦
三浦が咲の姿を見つけると、慌てた様子で問いかける。しかし、咲は 首を横に振った。
咲
長瀬
長瀬が周りの物を触りながら呟いたが
能戸
能戸の言葉に"確かに"と頷いた。
山岸
山岸の言葉に全員が視線を向ける。
山岸
安岡
山岸
佐々木
山岸
中野
中野の不安そうな表情に 山岸は優しく
山岸
しかし、そんな現実味のない話をされたところで、信じる事も理解もできない。
死んだのが事実であり、過去に戻れるそんな都合の良い話は二次元にしか存在しないものだと思っていた。 そう…皆は思っていたのだが…
長瀬
腕を組んだままの長瀬が目線だけ山岸に向ける。
山岸
周りが、ザワザワとし始めた。
三浦
三浦がハッとした表情で思い出した。
山岸
山岸
提出しなければならない書類があり、他の職員に伝えた後、提出した序に 一度物を取りに行くため、 自家用車でこの日は動いていた。
いつもの道のりを走行中、前の車が不自然な場所に停まっており、 よく見ると、女性が窓を外側から強めに叩いている。
すぐに安全な場所に車を停め降りては
山岸
よく見ると、前方(運転席側)が、電柱に衝突し凹んでいた。
女性
山岸
女性を歩道へと連れ、110番したのを確認した。しかし、女性は
女性
女性が車の下を指差すと、黒い液体が流れていた。
私はその液体がガソリンであるとわかった。 何か少しでの静電気にも触れれば、車は爆発する。
待っている時間はないとみて、二人で運転席のドアを引っ張った。
しかし、凹んだのが原因でビクとも動かない。それでも私は諦めずに全力でドアを引っ張り続けた。 時間が無い。
山岸
女性
女性が私の車に駆け走り、すぐにハンマーを持ってきた。 一応何かあった時にすぐ使えるように 車の窓ガラスを割る専用のハンマーを トランクに積んでいた。
山岸
私は全身の力を込め、窓ガラスを粉砕し、中にいる男性をひきずりだす。
尖る破片が腕に掠り血が滲むが、なんとか一気に引っ張り、 女性に引き渡そうとした瞬間
漏れたガソリンに火が引火し車が爆発。
私は男性を庇う形で、数メートル先まで吹っ飛び地面に頭部を強く強打し、意識が真っ暗になった。
山岸
目を覚ますと、自分の車内にいた。 まだ、施設の駐車場で、書類の入った封筒を手に持っていた。
変だ。私は死んだはず…
携帯の時間を見ると
山岸
思わず私は車内で大きな声をあげた。 先程女性と男性を見つけたのは、 正午を過ぎていて、 "十二時五分"だった。
なのに、時間が戻っている。 一体…私は夢でも見てるに違いない。 そう思い、もう一度車を走らせた。
すると、目の前に車が不自然な形で停まっているのが見えたと同時に 女性が外側の窓を強く叩いている。
明らかについ先程起きた爆発と同じ事が起こっている。 時計は午後十二時五分だ。
一応安全な場所に車を停め、女性の元へ走ると
女性
その時に確信した─── 同じことが起きている。 そして、後に判明したのだが これがα線だった。
北島
北島が携帯でニュースを見ていた。
佐々木
隣にいる佐々木が携帯を覗く。 北島は目を懲らす。
北島
佐々木
その声に他の職員が顔を上げた。
三浦
化粧直しをすぐに中断し、北島に問いかける三浦。
北島
三浦
三浦は郵便局に行く山岸を見送っていた。すぐに電話をかけた。
三浦
通話
00:00
山岸
応答なし
佐々木
三浦
佐々木と三浦は顔を青ざめた。
三浦はすぐに車を走らせ、郵便局の手前に行くと燃えている車。そして、 パトカーや救急車も。
毛布をかけられ話を聞かれている女性。その周囲を見渡すと、山岸と同じナンバーの車が歩道側に停められていた。
三浦の中に嫌な予感が走った
道路側に車を停め、現場に走ると、担架の上に毛布をかけられた状態で、救急車へと運ばれていくのをみた 三浦は人集りを抜け、大きな声で叫びとめた
三浦
救急隊員
三浦
三浦は毛布を勢いよく捲ると そこには血塗れの山岸だった───
三浦
救急隊員の目を他所に、目の前の光景に口が開いたまま震えた。 震えた声で
三浦
救急隊員
三浦は静かにその場から離れて、走っていく救急車を呆然と眺めながら膝から崩れ落ちた。 そのまま呆然と眺めていると、 肩を叩かれた。
安岡
心配して後を追ってきてくれていた安岡に三浦は涙目で小さく頷いた。
そうなると、この車は爆発して 私は死ぬ。
早く男性を助けなければ。しかし… これは一体何なのか全く理解も出来ていない。
ただ、時間は待ってくれない。先程を振り返った時に、ドアを引っ張るよりも先にハンマーで窓ガラスを割ろうと決めた。
すぐにハンマーをトランクから持ち出し、窓ガラスを割って先程と同じく男性を引っ張り出した。 やはり腕は血塗れになってしまったが 男性を救い出すことが出来た。
そして、爆発することも知っていたのですぐに遠くへ避難して正解だった。 案の定車は爆発。
私は力が抜けてその場に座り込んだ。
男性はその後、女性と一緒に病院へと搬送され、私の命も助かった。 だが…深い謎は残った。 何故、タイムスリップの様なものをしたのか。
とりあえず車内に戻って大きく息を吐いた。背もたれに寄りかかって目を閉じた。
季世
突然の声に悲鳴混じりに目を開けると、助手席に女性が座っていた。
山岸
半分パニック状態の私に、静かに女性は首を横に振り笑うと口を開いた。
季世
山岸
そこで、季世という女性はβ線とα線について事細かく説明してくれたが、にわかに信じ難い話だった。
季世
山岸
言われた通り、自宅へと車を走らせた。
季世が説明してくれた事が本当ならば…。β線とα線の時空は並行していてどちらにも自分は存在する。
ただ、意識がβ線かα線どちらかにあるだけ。唯一違うのは、α線はβ線よりも時の流れが遅く、タイムスリップ現象が起こる。
しかしまた大きく違うこともある。 その理由は定かになってないらしい。
山岸
季世
言われた通り、自宅へと入った途端 聞き覚えのあるピアノの演奏が耳を通り抜けた。
山岸
心臓の鼓動が段々と速まっていく中、ピアノがある部屋を開けた。
そこには、ピアノを弾いている加奈子の姿に私は目を見開いた。
加奈子
加奈子は振り向いて私を見つめる。 確りと動いていて… 声もきちんと聞こえて。 私は駆け寄り加奈子の手を握ると 温もりがあった。
涙が止まらなかった。
加奈子
山岸
加奈子
この時に、季世の言葉を信じた。 その定かになっていない理由。それは…
α線には死んだ人物が生きている──
山岸が搬送された病院に三浦と安岡は来ていた。 集中治療室の前の椅子に二人は座っていた。
安岡
三浦
安岡
安岡が三浦の背中を撫でた。 治療室の中に有る心拍数のメーターが上がった。
しかし、突然赤く点滅し始め、心拍数が下がっていく。 他の職員も駆けつけてきた。
三浦
安岡
能戸
中野
三浦は目を閉じ強めに両手を握った。
三浦
山岸
季世
加奈子
山岸
その場から離れ、季世に問い詰めた。
山岸
季世
山岸
季世
山岸
季世
私の心は大きく揺らいだ。 仮にα線に残るとしたなら娘と一緒にいれるが、β線の私は消え、 皆の記憶からも消え去る。
でも、娘の以内β線は寂しくて。 辛くて。 それなら、もう寂しい思いを しなくても済むなら、
皆の記憶から消えても…
加奈子
山岸
突然、加奈子に声をかけられ、何事もないように笑って見せた。
加奈子
加奈子の言葉に大きく目を見開いた。
加奈子
笑顔で喋る加奈子に動揺してしまった。 でも、私にとっては加奈子はかけざえのない存在で…
加奈子
自然と頬を伝う涙に、加奈子は不思議そうに見詰めた。 私は大きく息を吸って吐いた。 そうだった…私は…
施設のサービス管理者。娘が誇りに思っていることだ。それを手放すのは…
死んだ娘を突き放すようなものだった。
山岸
加奈子
背中を向け、家に戻る加奈子に
山岸
加奈子
半笑いして目を細める加奈子に静かに目蓋を閉じた。
山岸
後ろで見ていた季世が
季世
山岸
季世
季世はそれだけ言い残すと姿を消した。 私はもう一度自宅を見上げた。
山岸
戻る途中、車の中でいつも加奈子が弾く"thankyou with all thanks please be well forever " を聞きながら 車を走らせた。
意味は…
加奈子
三浦
赤い点滅が消え、三浦は目を見開くと ピッ、ピッ、と一定の安定した 音に戻り、九十…百二十…と戻ってきた心拍数に一同全身の力が抜けた。
安岡
中野
能戸
北島
佐々木
長瀬
待合室でハイタッチし合った。