テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

余命一日

一覧ページ

「余命一日」のメインビジュアル

余命一日

1 - 余命一日

♥

111

2019年04月04日

シェアするシェアする
報告する

あさひ

私、明日死ぬの

ゆうき

え?どうしたの急に

あさひ

ずっと、誰にも言えなかった

あさひ

でも、幼馴染の君なら打ち明けてもいいかなって

あさひ

思って…

ゆうき

ゆうき

うん?

あさひは深刻な顔で僕の左目を見ていた

幼馴染の僕だけがわかるあさひの癖

本気の話をする時

人の左目をじっと見つめてくるんだ

あさひ

生まれた時医者に言われたんだって

あさひ

18の誕生日は迎えられないって

あさひ

迎える前に、死んでしまうって

あさひ

原因ははっきりしてなくて…

ゆうき

待って待って

ゆうき

あさひが本気の話をしてるのはわかる

ゆうき

でも、急すぎて追いつけないよ

あさひ

ごめん…

あさひ

でも事実なの…

ゆうき

そんな…

あさひ

だからね、お願いがあって

あさひ

今日、うちに泊まりにきてよ

ゆうき

え?

ゆうき

どうして?

あさひ

ゲームがしたい

あさひ

お風呂上がりに一緒にアイスが食べたい

あさひ

あさひ家とゆうき家総出で鍋がしたい

あさひ

昔みたいに…

ゆうき

最後の夜が、そんなんでいいの?

あさひ

そんなんて何さ(笑)

ゆうき

ごめんごめん…

ゆうき

でも普通すぎて…

あさひ

普通でいいの!

あさひ

普通がいいんだよ!

ゆうき

そっか

ゆうき

わかったよ、泊まりに行くね

あさひ

待ってるね!

あさひママ

ゆうきくん、いっぱい食べてね!

ゆうき

いただきます!

ゆうきママ

手伝うよあさひママ

あさひママ

あら!ありがとう!

あさひ

あ、ゆうき肉ばっか!

ゆうき

いいじゃんか〜

あさひ

野菜食べなきゃだめだよ!!

ゆうき

あ!俺の嫌いなしいたけ!

ゆうき

このやろっ!!

ゆうきママ

こらゆうき!ちゃんと食べなさい!

あさひ

そーだそーだ!

ゆうき

くぅ…何も言えん…

親にも話した

あさひが話していいと言うから

母はいつも通りあさひに接した

食べ終えて一旦家に帰った時

母は泣いていた

ゆうきママ

信じられないわ…

ゆうきママ

あんなにいい子なのに…

ゆうき

俺だって、信じられないよ

ゆうき

でも

ゆうき

どうにもできないから…

俺は再びあさひの家に戻った

あさひママ

お風呂、入っちゃってね!

あさひ

アイスが待ってるよ〜!

ゆうき

はーい

お風呂に入って一息をつく

今までのあさひを思い出した

ゆうき

(ずっと一人で抱えてたんだな…)

ゆうき

(いつも、笑顔いっぱいで)

ゆうき

(なんで俺、気がつかなかったんだろう…)

気がつくと涙が溢れていた

手に水を溜めて顔にかけた

お風呂に入っててよかった…

あさひ

はい、ゆうきの分!

ゆうき

お!ぶどうか!

ゆうき

俺の好みわかってるなぁ

あさひ

12年も一緒にいたんだよー?

あさひ

わからないわけがないじゃん!

ゆうき

そーだよなぁ

あさひママ

ゲームやるんでしょ?

あさひ

そーだそーだ!

あさひ

準備してくる!

そう言って、あさひは自分の部屋へ入った

あさひママ

ゆうきくん、ごめんね

ゆうき

何がですか

あさひママ

急にこんな…びっくりしたよね

ゆうき

はい…

ゆうき

あさひママ、泣かないんですね

あさひママ

そうね、今まで散々泣いてきたもの

あさひママ

それに

あさひママ

あの子が泣かないのに私が泣くわけにもいかないわ

ゆうき

そうですね…

あさひママ

最後まで、あさひのことをよろしくね

ゆうき

すいません…普通は家族で過ごすべきなのに…

あさひママ

いいのよ、あの子がゆうきくんといることを望んだんだもの

あさひママ

拒む理由はないわ

あさひは強い

それはきっと、お母さんの遺伝なんだろうな

そう思った

ゆうき

ありがとうございます

あさひ

ゆうきー!

あさひ

準備できたよ!

ゆうき

今いくよ!!

あさひママ

ありがとう、ゆうきくん

少し涙目でそう言われた

俺は泣きそうになるのをこらえてあさひの部屋へ向かった

あさひ

やっぱり王道のバイトハザードでしょ

ゆうき

え、なんでグロゲー?

あさひ

ゆうきが眠れなくなって

あさひ

トイレ付いてきてって言うから

ゆうき

いつの話してるんだよー!

笑いながらカセットをセットする

1ゲーム目

あさひ

あ、ゆうき死んだ

ゆうき

ごめん!

あさひ

弱すぎだよー!!

あさひ

次やろ次!

あさひ

マルオブラザーズ

ゆうき

お、これなら勝てる!

あさひ

勝負だ!

2ゲーム目

俺の完敗…

あさひ

つ、ぎ、は…

それからたくさんのゲームを少しづつやった。

時間は、午後10時を回っていた

あさひ

あと1つやったら寝よ!

あさひ

眠くなってきちゃった!

ゆうき

ねぇ、あさひ

ゆうき

眠らなければいいんじゃないか?

あさひ

んー?何言ってるの?

あさひ

眠らなきゃ明日起きれないじゃーん

ゆうき

あさひ…

そうだ、あさひはいつもと同じ日常送りたいのだ…

昔を思い出してゲームしようと言い出したのも

あさひの部屋に置いてあるアルバムを見たからで

別に意味はないのだ…

ゆうき

アルバム、見せてよ

あさひ

えー?それはだめだなぁ

ゆうき

なんでさぁ

あさひ

だって恥ずかしいじゃんかー

ゆうき

そんなのいまさー、らっ!

ゆうき

よし!取ったリー!

あさひ

あ、もう!ゆうきのバカー!

アルバムを開いた瞬間

何も言えなかった

写真はどこもかしこも

全てが滲んでいた

ゆうき

あっ…あさ…ひ

あさひ

ほんとはさ

あさひ

アイスも鍋もゲームも

あさひ

どうでもよかったんだ

あさひ

ゆうきと、いたかった

あさひ

それだけなんだ

あさひは俯いてしまった

流石の俺でもその意味がわからないはずがない

なのにどうしてか

何も言えなくて…

ゆうき

あ、あさひっ

ゆうき

俺っ…

ゆうき

俺はっ…

あさひは泣いてない

でも俺は我慢ができなかった

なんで俺、気づかなかったんだろう

あんなにもそばにいて

誰よりも話していたあさひなのに

今更

今更俺は何を言えばいいのだろう

あさひ

言うつもりはなかったの

あさひ

ゆうきは何も知らないまま

あさひ

私だけが黙ってれば誰も気づかない

あさひ

それで、よかったはずなのに

あさひ

でも私、やっぱり死にたくなくて

あさひ

少しでもいい、ゆうきの中に

あさひ

私が残っててくれたら嬉しいって

あさひ

欲が出ちゃった

僕の左目を見てあさひが笑う

ようやく

あさひに何を伝えるべきかわかった気がした

ゆうき

泣いてくれ

ゆうき

泣いてくれあさひ

あさひ

何言ってるの(笑)

ゆうき

本当は泣きたくて仕方がないんだ

ゆうき

でもあさひは

ゆうき

誰も悲しませないように全てを

ゆうき

一人で抱えてきたんでしょ?

ゆうき

泣いていいよ

あさひ

ちょ、大げさだよ

ゆうき

大げさでもいい

あさひは再び俯く

床に零れた涙が

弾けて消えた

同時に僕は、あさひを抱きしめた

ゆうき

ごめんあさひ

ゆうき

俺、こんくらいしかできない

あさひ

い、いいよ

あさひ

こんくらいでも、嬉しいから

あさひ

ありがとう…

ようやく、お互いが泣くことができた

ゆうき

あさひ、お母さんのところに行ってきな

あさひ

え?

あさひ

どうして?

ゆうき

お母さん、泣いてないんだ

ゆうき

あさひが泣かないからって

あさひ

そう、なんだ

あさひ

わかった

そう言ってあさひは部屋を出た

俺はもう一度アルバムを見返す

ほとんどが涙で滲んでしまっていたが

俺と二人で写ってる唯一の写真は

綺麗に原形をとどめていた

あさひ

お母さん、泣いてた

あさひ

ちゃんとバイバイ言えた

ゆうき

そっか…

ゆうき

じゃあそろそろ寝るか

あさひ

そうだね!

あさひはベッド

俺は床に布団を敷いて寝る

あさひ

電気、点いてても眠れる?

ゆうき

なに?

ゆうき

バイトハザードが怖かったの?

あさひ

違うよ!!

きっと暗闇が、怖いのだろう

俺はあえて茶化す

あさひ

ゆうき

あさひ

おやすみ

ゆうき

うん

ゆうき

おやすみ

こんなにも意味を成すおやすみはない

今まで当たり前に使うおやすみと

全く意味が違うのだ

そう考えたらまた涙が溢れた

あさひ

ふふふ

ゆうき

どうしたの?

あさひ

また明日ね

あさひは泣かせにかかってる

俺は声を殺して泣いた

ここで大声で泣いてあさひを不安にしてはいけない

できる限り、声が震えないように

ゆうき

うん、また明日ね

その言葉を最後に

あさひは眠りについた

午後11時58分

あさひの寝息を聞いていた

午後11時59分

あさひの寝顔を目に焼き付けた

午前0時

あさひが生まれた日

あさひの寝息は、止まった

ゆうき

眠ったんだね

ゆうき

おやすみ、あさひ…

電気が点いていたことをありがたいと思った

眠るように息を引き取ったあさひの顔は

とても美しかった

あさひの顔を眺めながら

眠ってしまったらしい

あさひの部屋の窓から光が差していた

ゆうき

おはよう、朝日

この作品はいかがでしたか?

111

コメント

1

ユーザー

とてもいいお話でした✨😭 今後も楽しみにしています!!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚