TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

__それが彼女との出会いでした。

なんてよくある序章の結びだけど、

ロマンチックに語れる程のもの

僕らにはない。

************************

「好き…」

「愛してる…」

「へ?」

「…とか言えば良かった?ピークの前」

「いや、どういう感じで言うのそれ」

「いやー、

うちサービス精神とか持ち合わせてないけど

そうゆうのがいいんでしょ?男って。」

「んー…

ちょっと言ってみようか」

「いや、好きでもないのに言わない」

「おー言わないのかい」

「言えばいい?」

「いや…

好きな子に言われるそれとは違うから…」

「そうか」

そう言いながら、

下着に躰をフィットさせるため

前屈みになる時には必ず

僕は彼女から目をそらす。

前に言われたからだ、

ちょっとあっち向いててよ、って。

小さくも大きくもない躰を下着に寄せ入れる

その姿は、

恥ずべきことは一切ない

美しい背中だ。

でも彼女にはそれが恥ずかしいことらしい。

さっきまであんなに醜態を晒しておいて

何を今更…

と思うが彼女が嫌なことはしない。

いつも僕は彼女が嫌なことはしないだけだ。

そんな僕と彼女だからか続いてきた。

僕は思うし、

だからこそ始まりもなければ終わりも…

どうしたら終わるんだろ?

******************

七緒

こんにちは!俺は26歳の松与賀市住みの独身です。暇なのでもしよければ喋りませんか?

休日は午後起きる。

解除し忘れたアラームを

何度か止めて寝尽くす。

たまった洗濯物を回したが、

洗濯機の中で生臭くなるのを待っている。

起きてからなんとなく開いたアプリで、

好みの女の子のアイコンをクリックしては

テンプレをコピペする。

今日は20通は送れる。

男の26歳なんて焦る歳でもないし、

現に僕は焦ってはない。

彼女は欲しい。

でも出会いなんてない。

数少ない友人との飲みの席で

焦るよなー焦る焦る!

のとりあえず話に乗って

友人(彼女持ち)紹介のアプリを

インストールしただけ。

インストールを勧めた友人に言われて

写りがそこそこの写真を探し、

プロフィールに設定してもらっただけ。

男は月額会員で980円くらい取られるが、

無料期間のサービスを受けて

お試しでならと

メッセージを送ってただけ。

ようするに暇なのだ。

けいこ

こんにちは(*´`*)猫ちゃん可愛いですね。猫お好きなんですか?私はアメショを2匹と熱帯魚を5匹とハムスターを飼ってます♪ミラ(♂)、ソルト(♀……(続きを読む)

みゃお(*бωб)

こんにちはー。今日は友達と映画見に来てます。夜は暇ですが末永市で友達と一緒で良ければご飯とか行きません?笑

ヒマならうち来る?

リク

こんにちは。私は23歳の戸崎坂の保育士です。お仕事は何をされてる方ですか?

15、16送ってまぁまぁ返ってきたほうか。

メッセージ送ってゲームして

ウトウトしていたら夕方だから…

4時間くらい経ってこの収穫。

実家の老婆猫がいい釣具になるらしい。

顔がほぼ老婆猫で隠れたそこそこの写真は、

見る人が見ると

「喋りやすそう」

「いい人そう」

となるらしいのだ。

「えっと…続きを読むには…

課金しなきゃいけないのか…」

「飯…は…うん2人奢れと。」

「…………」

「いきなり家って」

七緒

家ですか?笑

いきなり家とはけしからん…とは言わない。

ただ、

この子がアイコンとは別に

プロフィールに設定している写真…

猫は好きだ。

老婆猫だって、

拾ってくださいとヨタヨタ寄ってきたのを

まだ学生の僕が何の考えもなしに連れ帰り

綺麗にしてやった。

この子の写真には、

老婆猫とよく似た種類の猫を抱きしめ眠る

裸体の少女がいる。

___彼女がいたことはある。

短大卒業だったその人。

その学歴には似つかわしくない

大手メーカーの受付嬢という

その肩書きを持ってして、

どこかで引っ掛けてきた(恐らく)既婚者と

夢を追いかけて落ちていったのが

数年前の話。

都会の学生の通過儀礼のごとく、

引っ張られて参加した合コンで

彼女はそこそこ可愛い人として

目に付いた。

互いに地方出身とあってか

人の良さが全面に出るその人と、

変にチャラついてはいない僕とでは

安心感があった。

3年以上は一緒にいたはずだが

家族付き合いはなく、

ただただ彼氏彼女として

最低限の時間を重ねた。

最低の別れ…ということもなく

男と腕を組むそれを見掛けた後から

連絡を取っていない。

唯一の修羅場は、

卒論発表前日の夜に彼女の語る

"夢"を聞きながら寝落ちた後のこと。

うっかりアラームをかけ忘れ、

発表時間ギリギリに会場にたどり着いた為に

教授らからの責めを受けながら

「今日誕生日なんだけどな…」と。

それを修羅場と呼べるのだから、

いつまでも平和な僕ちゃんなのだ。

だめ?

どういうつもりなのだろう。

優良会員につけられるマークのあるアイコン

プロフィールの写真の少女は

一糸まとわぬとわかるのに

いやらしさはない。

抱きしめた毛玉とかなり光量強めの加工で

美しい絵画のようではある。

いきなり家とは…。

七緒

だめではないんですか?

疑問文に疑問文で返すのは、

こなれた感も

童貞感も出さない

丁度いいチョイスだと思ってる。

どうゆうつもりなの!とか、

欲情している男をもろに出したところで、

きっと返事はなくなると

なんとなくわかるのだ。

しかし

ヒマなんでしょ?話そうか。

何を?である。

僕は、会話が苦手だ。

あーとかうんとか相づちを打つにも、

興味を持っています、

と示す言葉を探すのにも疲れる。

返事に悩む。

こう返したら相手はどう感じるか、

次はどうゆう流れがくるかと考えながら

打っては消す時間が疲れる。

猫ってかわいいよ

知ってる。

あの老婆猫に名前を付けたのは

僕なのだから。

猫ってね、寂しがり。だけど恥ずかしがりだからくっ付いて寝ても

寝ても…?

居心地悪そうに動くの。かわいいよ

(画像を開く)

無料期間の会員にも

1日の制限数超えてからは

課金でのメッセージが認められている。

しかしそのメッセージも、

5を超えてくると

[有料会員になりませんか?有料会員なら月々…(続きを読む)]

とメッセージがくるようになる。

それから画像。

続きを読むよりも

倍近くはかかるそのシステムに

ケチケチするわけじゃないが、

僕は画像を開かなかった。

七緒

会って話したいです

休日が終わるのにはまだ

1日と数時間もある。

その間の暇を潰すのには、

相手がどんなであろうが

手っ取り早くて疲れないのが1番なのだ。

ヒマはつかれる。いいよ、お茶しよう。

この場合のお茶とは、

そこのお姉さんちょっとお茶しませんか?

という事ではないのだが

僕はこの絵画の人から来るメッセージに

返信するため、

期待を込めて課金をした。

___人生リセマラは出来ない。

(続きを読む?)

この作品はいかがでしたか?

9

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚