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凜
光希
俺には兄弟が3人いる
大学2年生の姉、中学2年生の妹、そして大学1年生の兄だ
家族は嫌いじゃない。 むしろ、普通だと思ってた ——あの頃までは。
ガラッ(風呂の扉を開ける音)
凜
湿った空気が一気に流れ込んでくる。 曇った鏡、まだ残る湿気
そこに立っていたのは光希だった
凜
自分の声が微かに震える
一瞬、時間が止まったみたいに感じた
光希
光希は黙ったままシャワーの水を止める
光希
低い声が空気の中に溶けていく
光希
言葉は淡々としているのに どこか引っかかる
凜
俺は言葉を探す。 でも、うまく出てこない。
凜
光希がゆっくりと見つめてくる。 その目は、いつもよりずっと静かで、 少しだけ怖いくらいだった。
光希
凜
その問いに、俺は答えられなかった。
ただ、自分の心臓の音だけが 大きく響いていた
光希
そのまま光希は1歩踏み出した
凜
俺は反射的に後ずさる。 でも、すぐに背中が扉にぶつかる
逃げ場がない
光希
さっきよりも低い声。 問いかけているだけなのに、圧がすごい
凜
光希
光希はそのまま俺の手首を掴んでくる
強く。
光希
距離が近い
光希の息がかかるくらい
光希
視線がはずれない
逸らしたら何をされるか分からない 動けない。
凜
光希
そのままぐっと距離を詰めてくる
肩が触れる。 完全に、逃げ道を塞がれた。
光希
耳元で囁いてくる
光希
たったそれだけの質問なのに 責められてるみたいだ
凜
光希
矛盾してる。
でも、そんなこと、 指摘できる空気じゃない。
凜
光希
納得してない声だ
沈黙が続く
何も起きていないのに 何かが起きそうで怖い
光希
光希が少し笑っている
でも、その笑顔は いつもの笑顔とは少し違った
光希
心臓が跳ねる
図星だった
言葉が出ない
凜
言葉を絞り出す
凜
光希
凜
その瞬間、光希の手に、わずかに 力が入るのが分かった
光希
低くて、静かな声が脱衣所に響く
光希
ぐっと引き寄せられる。 距離が、ゼロになる。
逃げ場なんて、もうない
光希
光希と目が合う
近すぎて逸らせない
光希
試すような声
境界線を踏み越えてこようとしている
凜
俺の声は震えていた
怖い
はっきりとそう思った
今までの光希とは違う
何かが決定的におかしい
凜
その一言で空気が変わった
光希の動きがぴたりと止まった
光希
小さな息
光希の瞳が揺れる。 さっきまでの圧が、一瞬で消えた。
凜
俺は思わず目を見開いた
光希の顔色が一気に 悪くなるのが分かった
光希
うまく呼吸ができていない
小刻みに肩が揺れている
さっきまでの姿はもう、どこにも無い
光希
声がかすれている
視線が定まっていない
凜
呼びかけるとビクッと体が跳ねる
光希
完全に、崩れている
俺を掴む手が、 必死に縋るように強くなる。
光希
名前を呼ぶ声がさっきと全然違う
弱くて、壊れそうで、
怖いくらいに依存してくる
俺は一瞬動けなかった。 さっきまでの恐怖が、まだ残っている。 でも、目の前の光希はそれ以上に危険だ
凜
反射的に言葉が出る。
逃げるはずだったのに、 ゆっくりと近づいていく
凜
光希の背中に手を回す
ビクッと体が跳ねた。 でも、拒まれない。
光希
光希がぎゅっとしがみついてくる
さっきとは違う、“縋る力”。
光希
命令じゃない、懇願だった。
凜
怖かったはずなのに
逃げたかったはずなのに
それでも────
凜
ゆっくりと背中を撫でながら、 呼吸を合わせる
光希
少しづつ、光希の呼吸が整ってくる
それでも、俺にしがみつく手は離れない
まるで離したら壊れてしまうかのように
俺はその腕の中で思った
───あぁ、無理だ
俺は逃げられない
こいつは俺がいないと壊れてしまう。
そして俺は──
それを見捨てることができない。
主
主
主
主
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