一覧ページ

LINE 1124

第1話 - あ

2023年09月12日

#スカッと

田中俊樹

ミコ

マオさん、いつも忙しそうね。

ミコ

今年もPTA役員はご主人にやってもらうんですってね。

ミコ

いいわねぇ、旦那様が自営業で

ミコ

学校のPTAにも協力してくれるなんて、うらやましいわ。

マオ

こんにちは、ミコさん。

マオ

そんなに良い事ばかりでもないですよ。

マオ

何かとPTAに時間を取られる事も多いし、

マオ

町内会の付き合いとかも絡んでくるから、私も結構一緒にやってますよ。

ミコ

でも、お仕事を休むほどじゃあないでしょ。

ミコ

私なんて、PTAのたびに会社を休まなきゃいけないから大変なのよ。

マオ

それはおつかれさまです。

マオ

子供たちの為に頑張って下さってるんですね。

ミコ

そうよぉ！誰かさんと違って、学校にも協力してるのよ。

マオ

ああ、まあそれは…。

ミコ

この間なんて、PTA会議のあとで会社に戻らなきゃいけなかったんだけど、

ミコ

ご主人がわざわざ車で、会社まで送ってくれたのよ。

マオ

そうですか。

マオ

あの人は女性に親切ですからね。

ミコ

あら、平気なんですか。

マオ

え、なにが？

ミコ

ご主人の車に乗ったんですよ、私。

ミコ

車中での会話とか、気にならないんですか？

マオ

ん～。いちいち気にしてたら面倒ですよ。

マオ

主人は美容師だから、女性のお客さんも多いですし。

マオ

普段から女性と話す事も多いですから…。

ミコ

寛大ですねぇ。

ミコ

ご主人、わたしの事をほめてくれたんですよ。

ミコ

ミコさんはキレイだから、こんど僕が似合う髪型にしてあげますよって。

マオ

営業トークですよ。

マオ

主人はそうやって新規顧客を開拓してるんです。

マオ

カン違いしないでくださいね。

ミコ

カン違いだなんて、イジワルな事をいいますよね。

ミコ

まあ、確かにいちいちヤキモチ妬いてたら、身が持たないですよね～。

マオ

はあ。

ミコ

まあ、機会があったらマオさんもPTAに参加したほうが良いですよ。

ミコ

ご主人がいかに人気者か、実感できると思います。

マオ

そうですね。機会があれば。

マオ

それじゃ。

～1週間後～

ミコ

マオさん、こんどの運動会は来られるんですか？

マオ

ええ、もちろん行きますよ。

マオ

息子の運動会ですからね。

ミコ

そうですか！それは良かった。

マオ

どうしてですか。

ミコ

リュウジさんが、マオは来ないかもしれないって言ってたので。

マオ

リュウジさん？？ずいぶんと親しげですね。

マオ

仲良いんですか？

ミコ

はい、仲良くさせてもらってます♪

ミコ

私、夫が単身赴任中なので何かと心細くって…。

マオ

それでウチの主人が頼りになると？

ミコ

そうなんです～。

ミコ

あんなにイケメンで頼もしい人が旦那様で、

ミコ

マオさんがうらやましいわ

マオ

はあ。そうですか。

マオ

いいのは外ヅラだけですけどね。

ミコ

あら、リュウジさんをそんな風に言わないであげてください。

ミコ

PTAでも色んな人に頼りにされてるんですから。

マオ

そんなことより、何の用だったんですか？

ミコ

あ、いけない。

ミコ

忘れるところだったわ。

ミコ

リュウジさんからも言われると思うんですけど、

ミコ

運動会の当日は、警備をお願いしたいんです。

マオ

警備？なんで私が？

ミコ

人手が足りないんですよ。警備の人が。

マオ

そうなんですか。

ミコ

それで、役員の家族にも協力してもらおうって事になったんで。

ミコ

会長の奥様のマオさんにも、警備のお手伝いをお願いしようって事になったの。

マオ

まあ、お手伝いは良いですけど。

マオ

主人から聞けばいい事を、なぜわざわざミコさんが知らせてくるんですか？

ミコ

マオさんとお話ししたかったからですよ！

ミコ

運動会の日、よろしくお願いしますね。

マオ

わかりました。

～運動会後の夜～

マオ

リュウジ、今日はおつかれさま。

マオ

まだ帰ってこられないの？

リュウジ

ああ、ごめんね。

リュウジ

運動会の後だから、お疲れさまって事で

リュウジ

役員同士で飲み会に行く事になったんだよね。

リュウジ

だから夕飯はいらないよ。

マオ

え～。運動会で疲れてるのに、良く行けるわね…。

マオ

わたしなんてクタクタなんだけど。

リュウジ

俺も疲れてるんだけど、誘われちゃったからさ。

リュウジ

これも近所付き合いだと思って、行くことにしたんだ。

マオ

そうなの。大変ね。

マオ

ところで、誰と一緒なの？

リュウジ

え？ああ、副会長のシロタさんと、ミコさんに

リュウジ

書記のツジさんだよ。

マオ

4人？

リュウジ

うん、そうだよ。

マオ

ふーん。そうなの…。

リュウジ

な、なんだよ、その反応は。

リュウジ

べつに悪い事はしてないよな？

マオ

まあ、そうね。

マオ

ところで、ミコさんって旦那さんが単身赴任中よね。

マオ

お子さんも一人っ子だったと思うけど、

マオ

お子さんは誰かに預けてるの？

リュウジ

そうらしいよ。実家に行かせてるって言ってたけど。

リュウジ

それがなにか？

マオ

いえ、ちょっと心配になっただけよ。

リュウジ

なんだ。他人の子を心配してたのかよ。

マオ

まあ、何となく…。

マオ

ところで、何時ごろ帰ってくる？

リュウジ

10時前には帰るよ。

リュウジ

子供と一緒に、先に寝てていいからね。

マオ

分かったわ。気を付けて行って来てね。

～翌日～

ミコ

マオさん、昨日はリュウジさんをお借りしちゃいました♪

マオ

借りたって…モノじゃないんだから。

ミコ

結局、12時過ぎまで付き合わせちゃってごめんなさいね。

マオ

ずいぶん遅くまで盛り上がったようね。

ミコ

実は、2人で2次会に行っちゃったんです！

マオ

え？2人で2次会に？

ミコ

そうなんです。

ミコ

リュウジさんも飲み足りないっていうから。

マオ

リュウジはあんまりお酒は飲めないんですけど。

ミコ

あ、そうなんですか。

ミコ

じゃあ、私に合わせてくれたんですね♪

マオ

え？

ミコ

昨日ね、色々相談しちゃったんです。

ミコ

旦那の事とか、息子の事とかね。

マオ

お子さんのコトって？

ミコ

最近、息子が私とクチをきいてくれないんですよ。

ミコ

もう反抗期かしら。

マオ

お子さんは、ウチの子と同じクラスよね。

マオ

口をきかないって、よほどのストレスが溜まってるんじゃないの？

マオ

お子さん、学校で言ってたそうよ。

ミコ

え、何を？

マオ

お母さんが全然家に帰ってこないって。

マオ

あなた、ゆうべも息子さんを家に置いたまま

マオ

ウチの夫と飲みに行ってたそうね。

ミコ

え、なんでそれを…。

マオ

子供同士のネットワークを甘く見ないほうがいいわよ。

マオ

あなたがネグレクト気味だって事、

マオ

子供たちにはバレてるわよ。

マオ

昨日だけじゃなく、週末になると必ず深夜まで出かけているそうじゃない。

マオ

子供を独りぼっちにして…。

ミコ

ただの、子供のウワサでしょ。

ミコ

あなた、私がリュウジさんと仲良しだからって

ミコ

ヤキモチを妬いているだけでしょう？

マオ

あなたが週末に会っている相手は、リュウジでしょう。

マオ

夫も、よく週末に深夜まで出かけているのよ。車でね。

ミコ

どうしてそう思うの？証拠もないのに。

マオ

妻の直感よ。夫が浮気するのは初めてじゃないからね。

マオ

前にも言ったけど、彼が良い人っぽくみえるのは

マオ

ただの外ヅラだから。

ミコ

そうかしら。

ミコ

私にとっては、いちばんの素敵な人よ。

マオ

そんなにほしいなら上げても良いけど。

マオ

タダではあげないわよ。

ミコ

どういう意味なの。

マオ

まあ、それについては今度お話しましょ。

マオ

あなたが私を挑発するから、本気になったのよ。

ミコ

え、ちょっと。

マオ

それじゃあね。

～翌日～

リュウジ

なあ、マオ。

リュウジ

今度の週末、泊りがけで出かけてくるよ。

リュウジ

美容師の研修で、東京まで行く事になったんだ。

マオ

へえ、そうなの。

リュウジ

新幹線で行くからさ、朝も7時前に出発するよ。

リュウジ

2泊3日の予定だよ。

リュウジ

車は使わないからさ。

マオ

そう。駅まで送って行こうか？

リュウジ

いいよ、朝早いし。

リュウジ

タクシーで駅までいくから大丈夫。

マオ

そう。じゃあ、帰りはお迎えに行ってあげようか？

リュウジ

いや、いいって。

マオ

どうしても私が送迎するのが嫌みたいね。

リュウジ

え。

マオ

家を出る時から一緒に行きたいからでしょ？

マオ

ミコさんと。

リュウジ

へ？

リュウジ

な、何をいってるんだよ。そんなわけないじゃん。

リュウジ

俺、一人で行くんだよ？

リュウジ

なんで、そこでミコさんが出てくるんだよ。

マオ

トボけるのが上手ね。

マオ

最近、ミコさんがやたら私に絡んでくるから、変だなと思って。

マオ

彼女のSNSを見たら、あなたの存在を匂わせる投稿ばっかりだったわ。

リュウジ

え？彼女SNSなんてやってるの。

リュウジ

俺は見たことないよ。

マオ

あら、内緒にされてたのね。

マオ

腕や背中が写り込んでて、ほくろの位置とかで

マオ

すぐ分かったわ。アナタだって事がね。

リュウジ

そ、それは何かの間違いだよ。

リュウジ

俺に似てるやつなんて、いっぱいいるだろ！

マオ

私には、ちゃんとした証人もいるのよ！

マオ

ミコさんの息子さんの、ツバサ君。

リュウジ

え？ツバサ君が？

マオ

あなたが昨夜、ツバサ君とミコの家に遊びに来たって

マオ

ツバサ君本人から聞いたわよ！

リュウジ

え、そんな。ツバサ君がしゃべったのか。

マオ

ええ。私に話してくれたわ。

マオ

もうウチに来ないように言ってほしいって、涙ぐんでいたのよ。

リュウジ

いや、それは誤解だよ。

リュウジ

PTAの事で相談があったから、彼女の家に行っただけだよ…。

マオ

その割には、ツバサ君に2時間も出かけているようにいったそうね？

マオ

10歳の子が、一体どこで時間をつぶせるっていうのよ。

マオ

しかも、平日の夕方6時過ぎに！

マオ

行くところがなくて、しかたなくウチに来たのよ。

リュウジ

し、知らなかった…。

マオ

知らなかったじゃないわよ！

マオ

たった10歳の子供に心細い思いをさせて、自分たちはお家デートなんて

マオ

本当に、妻として情けないわよ…。

マオ

あなたもミコも、なんで子供をこんなにないがしろに出来るの。

リュウジ

いや、てっきりツバサ君は、ミコの実家に行くものだと思ってたよ。

マオ

ミコのお母様は病気で入院しているそうよ。

マオ

だからツバサ君を預かってくれる人なんていないのよ。

マオ

それもツバサ君本人から聞いた事だけどね。

リュウジ

いや、そんなの子供の言ってる事だろう？

リュウジ

俺たちは、大事な話があるから、

リュウジ

おばあさんの家にでも遊びに行っておいでって伝えたんだぜ。

リュウジ

黙って出て行ったから、てっきりそうするものだと思ってたんだけどなぁ。

マオ

言い訳ばっかりね。

マオ

あなたとミコが、不倫中だって事は他にも証拠があるのよ。

リュウジ

い、いや不倫なんてしてないってば。

リュウジ

俺を信じてくれよ。

マオ

じゃあ、これはなに？

マオ

～画像送信～

リュウジ

え！？これは。

リュウジ

なんでこんな画像を持ってるんだよ！

マオ

ビックリしたでしょ？

マオ

これ、ウチのドラレコで撮った画像よ。

マオ

バッチリ、合体してる瞬間が撮れてるわ。

リュウジ

いや、何かの間違いだよ。

リュウジ

だってウチの車はエンジンを切っていたら録画停止するだろ。

マオ

車体が揺れたから、ドラレコが反応したんでしょ？

リュウジ

う。

マオ

車が揺れるほど頑張ってたって事ね？

リュウジ

いや…そんな責めないでくれよ。

リュウジ

2人きりになったら、ついそんな雰囲気になっちゃったからさ。

マオ

ついやっちゃった？つまり不倫を認めるのね。

リュウジ

ごめん、許して。

リュウジ

不倫するなら後クサレのない既婚者が都合が良かったんだよ。

マオ

信じられない。

マオ

あなたが不倫するのは初めてじゃないわよね。

マオ

1度目は子供が小さかったから許したけど、今度は…。

リュウジ

ま、待ってくれよ。離婚するなんて言わないよな？

マオ

もう無理よ。アナタみたいな人とはやっていけない！

マオ

不倫だけでも許せないのに、子供にも可哀そうな思いをさせて…。

マオ

人として尊敬出来ない人とはもう、暮らしていけないわ。

リュウジ

そんな。

マオ

証拠もゲットしたし、あなたとは離婚します。

マオ

慰謝料も養育費も、きちんと払って下さいね。

リュウジ

まってくれ、もう少し話し合おう。

マオ

そうね。ミコさんのご主人とも話し合わないとね。

リュウジ

え、話し合いって、そっちの意味じゃ…。

リュウジ

ミコの旦那にまで告げ口されたら、俺の立場が…。

マオ

そんなの知らない。

マオ

せいぜい、お金を工面しておくことね！

リュウジ

マオ…すまない！許してくれよ…。

～後日談～

マオ

リュウジとはその後、3カ月ほど話し合いを重ねて、離婚しました。

マオ

ミコの旦那さんの連絡先は、ツバサ君から聞きました。

マオ

ツバサ君は、お母さんよりお父さんが良いと言って、

マオ

父親の単身赴任先について行く為、転校していきました。

マオ

ウチの子は寂しがっていましたが、母親があんなんじゃ仕方ないですよね…

マオ

ミコも旦那さんと離婚し、親権はもちろん父親のものとなりました。

マオ

ウチも、子供の親権は当然私のものになり、慰謝料も養育費も

マオ

キチンと払わせるよう、約束を取り付けました。

マオ

夫の浮気癖には悩まされていたので、やっと楽になりました。

マオ

夫は、近所のママと不倫していた事が噂で広がり、

マオ

自分で経営している美容院も、客足が激減したそうです。

マオ

人からの信頼を裏切った代償ですね。

マオ

私は、自分と息子の事を一番に思ってくれる人とだけ

マオ

関わっていきたいと思います。

マオ

最後まで聞いて下さってありがとうございました。

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

田中俊樹

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE 1124

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説
一覧

関連するタグ

LINE 1124

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説一覧

関連するタグ

#スカッとの新着小説
一覧