妖の世は今日も過ぎる　　 ー立夏編ー

どうしよう

冷や汗はさっきから止まらないし

ぐるぐる視界がぼやけそうだし

メキメキ…と地割れのような嫌な音

足元。地面が割れ、煙が上がり

数十ともなる妖が

一斉に地から這い上がる

ぴ、と指さすボスらしき妖

周りのちっこいやつらから…？

ﾊﾞｷｯ

ぼたぼたと鼻や口から

鉄の匂いが漂う

ぎりぎりと、手に力が込められ

酸素不足になっていく

一体、どれぐらい

耐えれば______

豆知識

妖退治を始めた年齢は それぞれバラバラ。

そのため、経験値にも差がある

背後では

希咲羅の能力である影が

どんどん妖を覆い、老化させ殺してゆく

今日は満月

"月"を元とする私にとっては

かなり有利な晩

まだ、駄目だ

"100％"はきっと今じゃない

もっと上がいる…

その、"上"はきっと

"下っ端に襲わさせ"

私たちの実力を見ようとしている

やっぱり、相当頭がキレるやつだ

希咲羅が遭遇した人型と共通するのか

やっぱり、体を動かすと考え事が捗る

1つ、ずっと気になっていることがあった

希咲羅が言っていた、強力な妖力を

持つ、人型……

桃色の髪に特徴的な右口下の黒子。

そして、まだ幼い容姿

その特徴は、あまりにも

関西の御三家の1つ…

"鈴宮家"の次女

数年前に"失踪"した娘さん

鈴宮 璃子

彼女と一致する

そもそも、妖力というものは

人間、妖、動物…全ての者が持っている

それだけ踏まえれば

みな、同じなのではないかと思う

でも、"妖力の大きさ"が違う

分かりやすくすれば

動物≦人間＜能力者≦妖

という感じで、妖の方が妖力が高い

そうなったのは何故かと言うと

人間の妖力を食ってきて

妖力の受入幅が広がったから

大抵の人間。一般人は

そんな進化は遂げていないから

一定以上の揚力を供給されれば

死んでしまう。

それは、大抵の能力者も同じだ

でも、ごく稀に。

強い能力者であればあるほど

妖力を受け入れてしまい

"妖化"する。

鈴宮家は、古くから御三家として

非常に強い能力を、妖力を保ってきた

だからか、あの子…璃子ちゃんの力も

幼いながらかなり強力で

…真偽は分からない

もしかして、彼女自身が懇願して妖に

なったのかもしれないし

そもそも、妖になんてなっておらず

亡くなったのかもしれない。

分からない…から

無闇に動いたら、どうなるか…

この先どうなる？

"次"、何が起きる？