この作品はいかがでしたか?
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僕の愛しい
"ベアドール"
幼い頃から人形が好きだった
初めて買ってもらったのは 確か、産まれて3ヶ月の頃
小さな猫のぬいぐるみ
僕はお人形の遊び方も分からずに 口に含んでは 猫を涎まみれにした
母に「ダメよ」と
父に「コラコラ」と
注意をされても分かりゃしなかった
散々噛み散らかして 2ヶ月くらいで猫のぬいぐるみを ダメにした
あんなにも汚した猫を 「捨てる」 と言われて僕は大泣きをしたそうだ
困った両親は 僕をおもちゃ屋へ連れて行き 新しいおもちゃを選ばせた
もちろん 好き嫌いがまだハッキリしていないから 結局選ぶのは両親なんだけれど
おもちゃ屋の人形コーナー
熊や犬、猫に猿
動物のぬいぐるみの棚の前で 大人しかった僕は急に笑った
キャッキャと 満面の笑みではしゃぐ僕を見て
"この子はぬいぐるみが好きなんだ" と両親は思ったらしい
「クマさんかなー?」 「またネコさんにする?」 「どの子が好きかしら?」
両親は1つずつ手に取り 僕に見せては質問した
僕の反応が1番良かった物
そのぬいぐるみを買おうと 考えたみたいだ
「キャッキャ!」
買う前から 僕が手を伸ばして望んだぬいぐるみ
それは赤い服を着た 熊のぬいぐるみ
「そう、 は クマのぬいぐるみが好きなのね」
母は喜んで言った
「もしかしたら、 赤色も好きなんじゃないかな」
父も嬉しそうに言った
両親は 赤い服を着た熊のぬいぐるみを 迷わず会計場へと持って行く
結局
買ってもらった熊のぬいぐるみも 噛んで、投げて すぐにボロボロにしたんだけどね
ただ1つ
猫のぬいぐるみの時とは違って
熊のぬいぐるみは服を着ていた
だから僕は ぬいぐるみの服を着せて、 脱がせて 着せて、脱がせて
そんな新しい遊びも覚えていた
手先が器用になってきて 少しの自我が芽生えてきて
"お人形遊び" が出来るようになった僕の お気に入りの人形は
着せ替えドールの "ニコちゃん"だった
ニコちゃんの髪をといてあげたり その日の気分で服を着せ替えたり
他のぬいぐるみや人形を持ってきて 家族ごっこなんかもした
「 は、 将来良いお父さんになるわ」
母は自慢の様に口にした
「 は、 将来優しいパパになるな」
父は誇らしげに口にした
「うん!」
僕はその意味も分からずに 喜ぶ2人の顔が見たくて 元気に返事をして頷いた
中学生の時
僕は初めて"恋人"が出来た
2つ結びの大人しい女の子
学校一ではなかったけれど とても可愛い子だった
年頃の子達と変わらず、 僕も初めての事に 沢山ドキドキした
初めて2人きりで下校して 初めて手を繋いで 初めてキスをして
そして初めて恋仲の異性を家に呼んだ
意識していなかった
と言えば嘘になるけど 両親が家に居なかったのは 本当に偶然だった
「 君の部屋、凄く綺麗だね!」
彼女は照れ隠しなのか そんな片付いてもいない部屋に そう感想を述べた
「あれ?これって...ニコちゃん?」
彼女の目線の先に居たのは ずっとお気に入りのニコちゃん人形
「あぁ、ニコちゃんだよ。 小さい頃に買ってもらって それからずっとお気に入りなんだ」
好きな物を共有できるんだと 僕は嬉しさで声が少し弾んでしまった
彼女は驚いた表情を浮かべ 笑って僕に言った
「男の子なのに お人形さんが大好きなんて」
「変なの」
あははっ、と無邪気に彼女は笑う
だけど 僕は笑えなかった
わざわざ、人形が好きですと 周りに言った事が無かったから 僕は知らなかったんだ
男が人形好きだと"オカシイ"事を
だから僕は彼女の言葉を疑った
"変?" "僕が人形を大事にしていたら変?" "彼女の笑いは何なんだ?"
"僕をバカにしているのか?"
僕も彼女も まだ中学生、子供だ
僕を好いてくれてる彼女の言葉に 悪意がある訳ないのに
僕は彼女を信じる事が出来なかった
そこから思考はストップした
彼女を押し倒して
髪を引っ張って
脱がせて 脱がせて、脱がせて
泣き叫ぶ彼女を動けない様にして
彼女を暴いて 暴いて、暴いて
初めての事だったし 感情任せだったし 彼女はとても痛かったと思う
僕がハッと我に返った時は 既に"行為"は終わっていた
彼女は眠っていて動かなかった
裸で横たわる彼女にそっと服を着せて
僕はふぅっと息を吐いた
とても酷い事をした 彼女の姿は見るに堪えない
だけど
だけど
暴かれた彼女は とても、とても
綺麗だった
その後
彼女とはもちろんお別れした
何も無かった様に 2人で歩く事なんて出来るはずも無い
僕はあれから大人になって
今ではもう 社会人と呼ばれる人種になっている
大人になった今でも
僕はお人形遊びが好きだ
今ではニコちゃん以外にも 沢山の人形が増えた
僕の趣味は 一般的には恥ずかしいものだと 理解もした
だから 周りの人は僕の趣味を知らない
1人目の彼女に 痛い思いをさせてしまったから 僕は沢山、勉強をした
大切に出来る様に 痛くしない様に 美しいままで居られる様に
そのおかげでは無いと思うけれど
その後も彼女は何人もできた
彼女達には嘘を付けないから 僕の趣味をきちんと話した
嫌な顔をした人も居たけど 僕が遊び方を教えてあげた
今では皆、理解してくれている
僕と一緒に遊んでくれる
美しく、優しい人達に囲まれて 僕は幸せ者だ
僕はきっとこの先も ずっとお人形遊びが大好きだ
僕の愛しい
"ベアドール達"
ベアドール
bare doll
【bare】
意味:裸の、むき出しの
〜fin〜
コメント
4件
「ベアドール」を一般的なクマのぬいぐるみのことだと思って読んでいましたが、最後まで読んで「ベアドール」の「bare」の意味でゾッとさせられました🥶
無理矢理迫られた恋人の部屋で眠ってしまうのも不自然だし、1人目の彼女も寝入ってしまったのではなくて…?
歪んで見えますが真っ直ぐですね