歌姫のあのこは

そこからはもう、何も感じなかった

強いていえば強い孤独感だけが残った

私は有名な貴族の出であったがために、北条家長男の

北条邦時の許嫁になった。

完全な不良品だった私

ただ、舞だけは美しいと言われた。

同じく歌も美しいと言われた。

自分でも自分が分からなかった。

まるで深い海に落ちていくような、

沈んでいくような。

ここを見た事がある気がした

ずっと前から雷斗が義理の兄だと言われていた

僕は疑っていなかった

でもなにか、大切なものを忘れている気がする

でもなにか、モヤがかかったように思い出せないけど、

忘れている気がする

忘れちゃいけないものを、忘れている気がする