レイ
さて、二限目は道徳の授業だよ、ユウトくん
ユウト
……は?
レイ
善悪を学ぶ時間。
でも、君は人の気持ちを教室で学ばなかった。だから……体で学ぼうか
でも、君は人の気持ちを教室で学ばなかった。だから……体で学ぼうか
ゴウン…と重たい音がして レイが部屋の隅から引っ張り出してきたのは
錆びたバケツ。 中には、茶色く濁った液体。 その表面には、髪の毛、ちぎれた紙、カビのような塊が浮かんでいた。
ユウト
……おい、それ……
レイ
覚えてるよね?
あの掃除道具入れの隣のトイレで、君が僕の頭を押さえつけて飲ませた水だよ
あの掃除道具入れの隣のトイレで、君が僕の頭を押さえつけて飲ませた水だよ
ユウト
……っ
レイ
トイレの水に君が唾を入れて、おいレイ飲み干せよ!ってバカみたいに笑ってたよね
レイはニコリと笑った
レイ
じゃあ、今回は君の番だよ
バシャ!!!
ユウトの頭が容赦なく水の中に沈められた
ユウト
んぐぼッ!!……っぶ、ぶぶぶ……!!!
暴れる。もがく。だが、首は後ろからしっかりと押さえつけられていた。 水の中には、ツルツルしたものが触れる。 ぬるい。臭い。目にしみる。
レイ
ねえ、これがどんな味か教えてよ
ユウト
(吐く……吐きそう……)
喉の奥まで水が入ってくる。鼻からも、涙と水が逆流してくる。
ようやく頭を引き上げられた時には、 ユウトの顔はどろどろで、咳と涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
ユウト
ゲホッ…ゴホッ……クソ……ッ!!!
レイ
言葉遣いが悪いな。反省の色が見えない
レイは、またユウトの髪を掴んだ。
ユウト
やめろッ!!もうやめてくれ!!!
ズドン!!!
もう一度、水の中へ。 今度は、より深く、より長く
ユウト
(助けて……誰か……誰でもいいから……)
でも、助けてくれる人なんて、いない。 この教室にいるのは、レイとユウトだけ。
数秒後 ユウトの頭はようやく引き上げられる。 がくん、と身体がぐったりして、涎を垂らしていた。
レイ
ねえ、君は僕がやめてくれって言った時、やめてくれた?
レイ
泣かれても、怯えられても、君は笑ってたよね?
ユウト
……ごめ……ん……なさい……
レイ
そう。それが“道徳”
レイ
じゃあ、次は体育だ。元気出していこうか