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第1話 - あ

2023年03月10日

#恋愛

結城真矢

ダン

ナ〜ナちゃ〜ん！

ダン

今日も仕事お疲れ様〜！

ナナ

お疲れ様です

ナナ

既に何回かお願いしてると思うんですけど、対面でも

ナナ

このLINEチャットでも私の事をちゃん付けで呼ぶの

ナナ

やめてくれませんか？

ダン

どうして？

ナナ

どうしてって、いくら先輩後輩の関係とはいえ、

ナナ

今年25歳になる女が男の人からちゃん呼びされるって

ナナ

気持ち悪くありません？

ダン

そんなこと言っちゃって〜

ダン

本当は俺から呼ばれる度に照れてるだけで、

ダン

それを隠したいだけなんじゃないの？

ナナ

違いますよ！

ナナ

それに、ダン先輩が私の事をちゃん付けで呼んでくるせいで

ナナ

社内の他の人たちから変な目で見られるようになって

ナナ

気持ち悪くて嫌なんです！

ダン

またまたー

ダン

話は変わるんだけどさ、昨日のお昼休みに経理部のハチと

ダン

ランチ食べに行ってたじゃん？

ナナ

そうですね

ダン

なんで俺以外の男とメシ食ってんの？

ナナ

同期と一緒にご飯食べたらダメなんてルールありましたっけ？

ダン

ないけど、俺に何も言わずに？

ナナ

ダン先輩の言いたい事はさっぱりわかりませんけど

ナナ

同期の人達とはよくあんな風にランチに行くことがあるんですよ

ナナ

それに、月に1回程度ではありますけど

ナナ

親睦会を兼ねて飲み会もしていたりしますよ

ダン

今までどれにも俺が許可を出した覚えはないんだけど？

ナナ

私が誰と一緒にいて何をしようが、私の勝手だと思うんですけど？

ダン

ナナちゃんが良くても、君の本命である俺としては納得できないなぁ

ダン

だから、そんな俺の為にも他の男との予定は断って欲しいなぁ

ナナ

なんでダン先輩が私に対してそんな態度をしてくるのかが

ナナ

よく分からないんですけど…

ダン

社内に俺という名の彼氏がいるのに、俺の許可なしに

ダン

他の男達とランチや飲み会に行くってありえないんじゃないか？

ナナ

え？

ダン

遠回しに、俺は本命の相手じゃないって言ってるようなもんだろ？

ダン

もし俺が本命で、これ以上俺に勘違いされたくなかったら

ダン

そういった事は今後控えるように！

ナナ

なんの話ですか…？

ダン

じゃ！そういうことだから！

翌日

ダン

ナーナーちゃん！

ダン

あーそーぼ！

ナナ

すみません、ダン先輩

ナナ

今夜と明日明後日の土日は用事があるので無理です。

ダン

また俺の許可無く社内の他の男とかと泊まりで遊びに行くのか？

ナナ

この会社の中には彼氏はいないですし、

ナナ

別件での用事なので違いますね

ダン

じゃあ、なんの用か俺に言えるだろ！

ダン

本命の彼氏である俺には言えないようなことなのか？

ナナ

色んな意味で違うんですが…

ナナ

経理部のハチと2人で同窓会の準備をしないといけないんです

ダン

同窓会の準備をハチと？

ナナ

そうなんです

ナナ

実はハチと私、同郷なんです

ダン

そうなの？

ナナ

えぇ

ナナ

ダン先輩は聞いた事ありませんか？

ナナ

ハチの生年月日と出身地

ダン

他の部署の後輩とは接点がないから知らないなぁ

ナナ

実はハチと私、中学の時同級生だったんですよ

ダン

え？

ダン

あいつもナナちゃんと同じで25歳なの？

ナナ

そうなんです

ダン

だからあの時仲良さそうに見えたのかぁ

ナナ

それでですね

ナナ

ハチと私、来月開催予定の中学校の同窓会の幹事を任されてるんですよ

ナナ

なので、先日のランチはその打ち合わせも兼ねていたんですよね

ダン

そういう事だったのなら、今回は事後承認だけど許可する！

ダン

ただし！

ダン

今後、今回みたいに勘違いが起きそうな場合には

ダン

事前に俺に相談すること！

ナナ

なんでプライベートの事まで逐一

ナナ

ダン先輩に相談して許可貰わないといけないんですか！

ダン

ナナちゃんは怒ってもかわいいなぁ〜

ナナ

ダン先輩、聞いてます？

ダン

そんなに恥ずかしいんだったらさ！

ダン

いっそのこと、みんなの前で言っちゃう？

ダン

『俺たち付き合ってます！』って

ナナ

はい？

ダン

そうすれば、今みたいに隠れてLINEのやり取りする必要無くなるし

ナナ

呆れて言葉も出ませんね…

ナナ

ダン先輩と私は付き合ってません！

ナナ

さっきも私社内に彼氏いないって言いましたよね！

ダン

言っていたね

ダン

でもさ、社内恋愛が恥ずかしいからでしょ？

ナナ

何度も言わせないでください！

ナナ

違います！

ダン

あ、また怒った

ナナ

もう、いつ管理職にダン先輩の事を訴えようかと思っていましたけど、

ナナ

もう我慢できません！

ダン

は？

ダン

どういう事だよ！

ナナ

手が離せなくなるんで今日はこれで！

ダン

彼氏の質問には答えてから離れろよ！

月曜日

ダン

ナーナーちゃん！

ダン

今日もお仕事お疲れ様！

ナナ

お疲れ様です

ダン

早速昨日の続きだけど、

ダン

誰がナナちゃんに対して、そんな嫌な思いをさせているんだい？

ナナ

ダン先輩、あなたですよ！

ナナ

私に対して嫌な思いをさせてきているのは！

ダン

えっ？

ナナ

どうしてそんな風に、相手のことを考えずに

ナナ

自分にとって都合がいい様にしか物事を考えられないんですか！

ダン

俺が自分勝手でナナちゃんにとっては迷惑な人だとでもいいたいのか？

ナナ

ここまでの流れを踏まえたら、どう考えてもその迷惑な人って、

ナナ

ダン先輩しかいないですよね！？

ダン

は？

ダン

じゃあ、なんでナナちゃんはずっと俺にほれてたの？

ダン

ここに入社してから、ずーっと俺にべったりだったじゃん！

ナナ

それはダン先輩が私のOJT期間中の教育係だったから

ナナ

一緒だっただけです！

ナナ

なので、ダン先輩の勘違いですよ

ダン

バレンタインの日に、俺にだけチョコくれたじゃん！

ダン

俺はてっきりあれがナナちゃんからのプロポーズかと思ったのに…

ナナ

会社の風習上仕方なかったんで、バレンタインのチョコは義理ですね

ダン

え？

ナナ

新入社員がお世話になっている教育係の先輩社員に

ナナ

ホワイトデーは逆で、教育係の先輩社員が教え子の後輩社員に

ナナ

それぞれ義理でもいいからチョコレートを渡す事で

ナナ

感謝の気持ちを伝え合うってなってるじゃないですか

ダン

風習ではそうなってるけど、本当に渡されるとは思ってなかったから

ダン

俺の事を懇意にしてくれてるのかな？

ダン

って思っちゃうよね

ナナ

やっぱりこの風習、変えた方がいいと思います

ナナ

ダン先輩みたいに勘違いしちゃう人を増やさないためにも

ダン

あれが義理チョコだったってことは

ダン

俺への気持ちはその程度だったってことか？

ナナ

感謝はしてますけど、男と女としての気持ちはゼロです

ナナ

というか、先輩相手に恋心を持てって言われても無理ですよ

ダン

俺はまだ納得してないぞ！

ダン

俺の親の誕生日が近いって事を話したら、プレゼントを

ダン

一緒に買いに行ってくれたじゃないか！？

ナナ

ダン先輩のご両親の誕生日プレゼント選びは、

ナナ

せっかくの休日にダン先輩が私を呼び出して無理やり連れ回したんじゃないですか！

ナナ

お陰でこっちはやりたいと思ってた家事ができなかったんですよ！

ダン

は？

ダン

意味がわからないな

ダン

なんでここまで徹底的に俺の考えや行動を否定するのかが

ナナ

はい？

ダン

俺、ナナちゃんの為に前の婚約者との婚約をわざわざ破棄したんだよ？

ダン

ただ、それは俺の我儘による物だからって

ナナ

確かにそれはダン先輩が悪いですね

ダン

結婚式場とかのキャンセル費は全額俺が負担することになったし

ダン

相手からは『単純な心変わりによるあんたからの婚約破棄は

ダン

不当な理由での婚約破棄になるから』って

ダン

精神的苦痛による慰謝料を請求されそうになってるんだ！

ナナ

ダン先輩のせいで婚約を破棄されてしまった方に完全同意ですね

ダン

将来ナナちゃんと同棲する為にってわざわざ買ったマンションだって

ダン

契約してからまだ数ヶ月しか経ってないから、

ダン

まだ35年以上もローンが残ってるんだぞ！

ナナ

私は知りませんよ、そんなことは

ナナ

それに、全部ダン先輩が自分で勝手にやった事なんですから

ナナ

自分の尻は自分で拭いてくださいね

ダン

謝れ！

ダン

今すぐ俺の家に来い！そして土下座して

ダン

『すみませんでした。今日言ったことは全部なかったことに

ダン

してください。ダンさんと結婚させてください。』って言えー！

ナナ

そんな権限は君には無いと思うがね、ダンくん

ダン

あ？

ダン

そんなの知るかよ！

ダン

それに！

ダン

急に個人チャットで口調変えて別人のフリしても、意味ないからな！

ナナ

ふむ

ナナ

どうしてそう思うのかね？

ダン

このチャットは俺とナナちゃんだけの空間で他に参加者はいない！

ダン

つまり、別人に成り済ます事なんてできない！

ダン

だから、わざと高圧的な口調に変えたとしても意味ねーんだから！

ダン

わざと演技されてるのは気持ち悪いからさっさと口調戻せ！

ナナ

なるほど

ナナ

ダンくんはそういう考え方をするのだね

ダン

そもそもだ！

ダン

前の女よりも好きになった女のために婚約破棄までしたのに

ダン

『ダンさんへの懇意はありませんでした』だぁ！？

ダン

ふざけるのも大概にしろよ！

ナナ

ふざけているのは、君の方なんじゃないかね？ダンくん

ダン

は？

ナナ

君はまだ気が付かないのかね？

ナナ

ちょっとLINEを変えようか

〜数分後〜

キリ

私は、君たちの会社の社長のキリだよ

ダン

へ？

ダン

しゃ、しゃちょう…？

ダン

どうして社長のような方が、社員同士のプライベートなチャットに？

ダン

それに、ナナさんのアカウントから入力されてますよね？

キリ

実は今日の始業直後に、上層部にナナくんから直談判があったそうでね

キリ

『自分の上司のダンさんの発言が常軌を逸している』と

ダン

は？

キリ

しかも状況が状況だったからね

キリ

直ぐに私のところにまで話が上がってきたよ

ダン

なんで？

キリ

私も詳しく聞いてみたいと思ったから、今日の勤務時間中に

キリ

別件と称してナナくんを呼んで、話を聞かせてもらったんだがね

ダン

え？

キリ

君と同じ男性としても、私は君の行動には危険性があると感じたよ

キリ

そして、先日までの流れを見せてもらった印象から

キリ

今夜も同じような事になるだろうと思った私が、

ダン

なんで…

キリ

彼女の同意の元、いつでもチャットを交代できるように待機していた

キリ

という訳だよ

キリ

さて、なにか言い訳はあるかな？

ダン

あの、今までの発言は部下の教育上必要な事でして…

キリ

なるほど

キリ

上司にプライベートの事を相談させるのが君のやり方なんだね

ダン

えっと、その…

キリ

君のとんだ勘違いのせいでナナくんは、

キリ

ずいぶんと精神的に参ってしまっているようだよ

ダン

俺のせい？

キリ

そうだ

キリ

それにね

ダン

まだ何か？

キリ

ナナくんが社外で現在付き合っている人は私の知人の息子さんでね

キリ

ナナくんがダンくんの彼氏でないことは、私が保証させてもらうよ

キリ

それに、ナナくんの彼氏さんからも裏は取れているよ

ダン

え？

キリ

最近は特にナナくんに元気がないように見えていたそうだ

キリ

それに、君の勤務態度の悪さで、ナナくんの他にも

キリ

迷惑をしている女性社員が実は他にも複数人いるらしくてね

ダン

は？

キリ

その辺の話も詳しく聞きたいから、そうだな

キリ

明日の朝礼後に社長室まで来なさい

キリ

君の上司には私から伝えておくよ

ダン

そんなバカな…

後日談

ナナ

調査の結果、ダンが私以外にもセクハラやモラハラ関連の発言を

ナナ

していて、実際に被害を受けている社員がいる事が発覚。

ナナ

退職処分になることが決まった。

ナナ

ダンさんが退職処分を受けたと聞いて、

ナナ

私はようやく彼から開放されたと感じられた。

ナナ

社外の彼氏との、結婚を視野に入れた付き合いも順調に進んでいる。

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結城真矢

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