ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
頭の痛みで目が覚めた
体を起こす気力もなくて洗濯物や参考書が散乱している床の上を、腹ばいでなんとか洗面所までたどり着く
洗面台の縁に体重をかけて体を起こすと、ギシッと鈍い音が鳴った
蛇口を捻って水を出す
体が熱いからか、水がすごく冷たく感じる
顔を洗ってタオルで拭くと、熱で朦朧とした視界が少しクリアになった
机の上には何種類もの錠剤とティッシュの箱、それに中途半端に中身が残ったビールの缶
いつもだったら片付けるところだが、今日はそんなことをする気力もない
棚から適当にコップを取り水を注いで、机の上の錠剤を2つ、水で流し込む
2杯目の水を飲んでいると、ふいにどこかでケータイが鳴った
スルーしようかとも思ったけれど、だいぶ気分もマシになったので、バイブ音だけを頼りにクッションの下からケータイを探し出し電話に出た
初兎
悠佑
初兎
悠佑
悠佑
電話越しでも、俺の事をちゃんと心配してくれている声だとわかる
彼は本当にいい人だ
俺なんかに電話してないでもっとほかのことに時間を使えばいいのに
俺なんて見捨てればいいのに
それをしない
生徒と対等に話して、決して教員であるというステータスを振りかざしたりしない
本当にすごい人だと思う
初兎
初兎
俺に出来ることは、彼の余計な心労を増やさないことくらいだ
少し息を吐くような間が空いてから、悠佑先生のはっきりとした声が受話器の向こう側から聞こえる
悠佑
初兎
頭に昨日のことがよぎる
暗い廊下、薄明るい電灯、半開きのカーテン、倒れた彼、あいつの声___…
ドクドクとうるさく鼓動する胸を押さえつけ、平然を装って息を吸う
悠佑
初兎
悠佑
悠佑
初兎
悠佑
悠佑
初兎
悠佑
初兎
悠佑
悠佑
悠佑
悠佑
力強い声が機械のくぐもりをまとって耳に届く
悠佑先生の言っていることはおかしいと思った
彼を傷つけたのは俺なのに、なぜ彼が自分を責めるのか
俺は加害者で彼は被害者なのに、なぜ彼は俺をそこまで気にするのか
全部全部、変だと思った
彼にはもう傷ついてほしくない
俺が学校を休むことで彼が傷つくなら、気は進まないが行かない理由はない
初兎
初兎
悠佑
悠佑
悠佑
初兎
初兎
初兎
悠佑
悠佑
悠佑
初兎
初兎
……カチャッ ツーッ、ツーッ、ツーッ…
カタカタと数秒物音が鳴ったあとに通話が切れたのを確認して、床に積まれた服の山に受話器を投げやる
カーテンから漏れ出る光は赤みを帯びており、もう夕方なんだとぼんやりながら理解した
ベットに体を擲ち、目を閉じると、今まで気にならなかった様々な五感が一気に襲ってきた
頭は割れそうなくらい痛み、心臓は胸から掴み出してやりたいくらいにうるさい
手が小刻みに震えて、吐き出される息の熱さとは対照的に足の先はひどく底冷えしている
暑い?いや、寒いのかもしれない
そんなことすらももうどうだっていい
熱で朦朧とする頭を抱えて寝返りを打つ頃には、もうまどろみへと落ちていた
りうら
りうら
ないこ
りうらを急にカフェに呼んだのは俺
そのくせずっと黙り込んでるのも俺
今の時刻は午後の9時ちょっと過ぎ
少なくとも健全な男子高校生がカフェにいる時間ではない
そうとは分かっているけれど
俺は心の準備、と称してさっきからカフェオレをストローでかき混ぜるばかりで
りうらも先程からそろそろどうしようもないといった様子でこちらをちらちらと見ている
そんなわけだからはななら飲むつもりもなかったカフェオレは氷が溶けて薄まり、色は最初の4分の3ほどの薄さに
コップからは薄まった液体がストローでかき混ぜる度に零れそうになっている
りうら
りうら
そう言って眉を下げてこちらを見るりうらと目が合ってしまい、色々な罪悪感が俺の胸を締め付けてくる
ぐぅと声にならない謝罪を漏らす俺を見て、りうらはますます困ったような顔でこちらを見た
そりゃそうだ
困るよな、ごめん
よし、と少し勢いをつけて顔を上げると、思ったより体が前のめりになってしまった
心なしかりうらがちょっと引いてるようにも見えたが、きっと気のせいであれ
ないこ
りうら
ないこ
ないこ
りうら
ないこ
ないこ
りうら
りうら
りうら
りうら
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
りうら
ないこ
ないこ
りうら
ないこ
りうら
ないこ
的を突かれて思わず息を飲んだ
ないこ
りうら
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
りうら
りうら
ないこ
りうら
りうら
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
りうら
りうら
ないこ
ないこ
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
りうら
ないこ
りうら
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
様々な声が飛び交ういつもの朝
教室の前で1人で立ち尽くす
中に入ろうと足を踏み出しては、勇気が出ずにドアを開けられなくてもう10数分はここでうろうろしている
みんながその横を通り過ぎていく中、一足の上履きが俺の前で立ち止まった
初兎
ないこ
どう声をかけたらよいものかというように眉尻を下げる彼は、じっと僕を見つめた
しばらくそうしていたものの、それ以上の会話が続かずどちらからともなく目を逸らした
それから逃げるように教室へ入ろうと踵を返したその時、彼が俺のシャツの裾を引いた
初兎
思わずそっけない声が出てしまい、しまったと思う
彼は俺のその眼差しに少しビクッとしてからそれでも俺を見て口を開く
ないこ
初兎
ないこ
ないこ
ないこ
そう言い残して彼は隣のクラスへ入っていってしまった
ようやく教室のドアを引き、席に着く
幸い噂は出回ってないらしく、俺の事を奇異な目で見るやつはいなかった
カバンから筆箱を出して、彼の言葉をもう一度心の中で咀嚼する
"俺、庇護系じゃないから"
…彼がどういう意図でその言葉を言ったのかはわからない
でも、俺は何かあの人に言わなくてはならないことがあるのではないか
そんな気がした
"そういうことなら、りうらに1人心当たりがあるんだけど"
"明日の放課後に数学準備室の前で待っててくれる?"
壁に背中をつけてそっともたれる
まだ明るく陽の差す窓の外を見やると、花壇に水をやる美化委員の姿が見えた
期待か緊張か、ドキドキと鼓動する心臓を落ち着かせるべく深く息を吸う
突き当たりになったところにある数学準備室では、人通りはほとんどない
この場所に繋がる廊下も1つしかない
俺が息をついてそっとそちらに耳をすませると、かすかに足音がこちらに向かっているのが分かった
その音はだんだん大きくなり、そうかもしれないという疑念が絶対にそうだという確信に変わる
預けていた背中を壁から離して待つと、足音はとうとう角を曲がり、俺の横で止まった
意を決して顔を上げる
その顔を見た時、くっと体が強ばって、息が止まった
どうして彼がここに?
なんで?
俺は今Playをしてくれる人を待っていたはずで…
If
ないこ
If
ないこ
ないこ
If
ないこ
その人を突き飛ばすようにして廊下を走り抜け、俺は走り続けた
心臓が痛くなっても、とにかくその場から離れたくて、走った
階段をかけ登ってその場にへたりこむ
胸が苦しくて、さっきのあの人の顔を思い出すとさらに苦しくて張り裂けそうだった
俺は声を殺して泣いた
りうら
りうら
ないこ
現れた赤髪の彼を、きっとにらみつける
ないこ
りうら
りうら
ないこ
ないこ
ないこ
ないこ
りうら
ないこ
りうら
りうら
ないこ
りうら
りうら
ないこ
りうら
"完全な嗜虐系だよ"
ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
ななみ
コメント
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あの、不快に感じたらごめんなさい。プロフィール欄に白水固定厨って書いてますが、ということは水白は地雷ですか?
性癖に刺さりまくりました…… 続き楽しみです!