時透無一郎
僕は11の時から、 …血の繋がっている兄が好きだった。
考えると胸が締め付けられて、苦しくなった。
それと同時に少し幸せな気分になった。
…ある時僕は考えた。
僕達は人間だ。
不老不死なんてものでもない。 ごく普通の、人。
人はいつか死ぬ。 片方が死んだらもう会えない。
…じゃあさ?
その前に、兄さんを殺して、 僕もそのあと死ねばさ。
僕達はずっと一緒にいられる。
…無理やりにでも、絶対。
…殺す。
時透無一郎
包丁はもう持ってる。 …後は、兄さんを刺すだけ。
…やっぱり痛いかな。 でも、仕方ないよね?
僕もちょっと心は痛いけど。 …でも、これで一緒にいられるなら、それでもいいや。
…早く行こう。 怖くなって、刺せなくなる前に。
有一郎の部屋前,
時透無一郎
時透有一郎
時透無一郎
時透有一郎
時透無一郎
時透有一郎
時透無一郎
ベッドに座った。
…もう、こんな元気な兄さんは見られない。
…いいや、 きっと"あっち"でも元気でいてくれるよね。兄さん。
時透無一郎
時透有一郎
隣に兄さんが座った。
…死ぬ前に、伝えないとね。
"好きだよ" って。
時透無一郎
時透有一郎
時透無一郎
時透無一郎
刺した。
漫画みたいな、ザクッとかじゃなくて。 音なんて、しない。
僕の手にある包丁を見たら、 その包丁は確かに兄さんの腹を貫いてた。
時透無一郎
兄さんはただびっくりしてる。 徐々に、痛みに苛まれているのが分かった。
時透有一郎
…嫌だ兄さん。
そんな泣きそうな顔しないで。 痛そうな顔しないで。
後悔しちゃうから。 死ぬの、怖くなっちゃうから
時透無一郎
体が勝手に震える。
兄さんはもう動かなくなってる。
時透無一郎
自分からしたことなのにね。
包丁を抜いた。
包丁にはたくさん血がついてた。
兄さんの腹を見た。
血が服越しに滲んでいた。
抱き締めた。 抱き締めて、落ち着こうとした。
肌越しに、体温が冷たくなっているのがわかった。
失って初めて気づくとか、バカみたい
こんなことするの間違ってるなんて。 やる前に気づけばよかった。
世界が灰色になってく気がした。 そうだ、死のう。
死ねば兄さんと一緒になれる。 死んだ後なら、やり直せる。 きっと兄さんもそれを望んでる。
時透無一郎
包丁を持って、自分の腹を刺す。
…痛いね。 痛い。
兄さんを、また抱きしめた。
…ね、兄さん。
なんでこんな風になっちゃったんだろうね。僕。
…これで、一緒だね。
来世は、しあわせにくらせるといいね。
…またね、にいさん。
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