怜央
月明かりが淡い時間帯である。
怜央
僕は1人、路地裏に歩いていた。
怜央
理由は無い。なんとなくだ。
怜央
なんとなく、人気のない場所を歩きたかった
怜央
日本は屈指に治安のいい国だが、それでも路地裏には言い知れぬ雰囲気があった。
怜央
そこの角から殺人鬼でも出てきてほしいくらいだ。
怜央
何なら飛び出して来て欲しいくらいだが。
怜央
「…ん?」
怜央
そんな馬鹿な事を考えている時だった
怜央
何だか微弱な音が聞こえたような気がした。
怜央
耳を澄まして聞いてみると、今度ははっきり聞こえた。
怜央
これは…呼吸音?
怜央
荒く、衰弱を感じさせるような息遣い。
怜央
怪我人か、病人か…とにかく行かなきゃならない
怜央
僕は息のする方へ進み…少ししてたどり着いた
夏帆
…
怜央
そこでは少女が壁際に座り、背を預け苦しそうにしていた。
怜央
少女はまるで、ボロ雑巾のようだった。
怜央
焦点が合わない瞳、ボサボサの髪、ボロボロの服。
怜央
まるで、集団リンチを受けたあとのようだった
怜央
…けれど僕が着眼したのはそこじゃなかった
怜央
「…羽?」
怜央
その少女には、暗闇の中でも際立つような妖しさを、不思議な雰囲気を放つ羽がついていたのだ。
夏帆
「…血を」
怜央
ボソリと何か呟いた
怜央
「…なんて?」
夏帆
「…お願い…血を…頂戴」